組織作りとは?組織作りの重要ポイントと手順を解説
組織作りとは、一般的には「組織やチームを効果的に設計し、運営するためのプロセス」のことを言います。では、効果的に設計するためのポイントは何か?どのようなプロセスで作っていくべきなのか?
今回の記事では、組織作りの定義から組織作りの流れ、ポイントを私の経験も踏まえて解説していきます。
1.組織作りとは
1.1 組織作りの定義と目的
組織作りは以下の通り定義できます。
広義:会社のミッションの達成に向けての組織全体の設計・構築、そして継続的な改善のプロセス
狭義:組織図をつくり、人員を配置、教育、評価すること
広義では会社の成果・発展のための会社全体の組織活動を指し、狭義では主に内部の構造や運営に焦点が当たります。
今回の記事では、両方の側面を含んだ形で解説していきます。
組織作りの究極の目的は「ミッション・ビジョン・バリュー(=MVV)」の達成です。
MVVに沿って戦略が決まり、その戦略を実行・達成するために組織がつくられます。
その意味で組織作りの目的はMVVの達成となります。
1.2 組織作りの要素
①組織の構造設計
役割分担、権限、責任の明確化を行い、組織が効率的に機能するように設計します。
これには、階層構造や職務分掌、チームの編成などを含みます。
②企業文化の形成
企業や組織の価値観、行動規範、コミュニケーションスタイルなどを確立し、それが組織全体に浸透するように努めます。
③リーダーシップの育成
組織の目標達成に向けてメンバーを導くリーダーシップを育成します。特に、日本の組織作りでは、メンバーシップ型のリーダーシップが重要視され、共感や協力を基盤としたリーダーシップスタイルが求められます。
④人材育成と能力開発
組織の成長に必要なスキルや知識を持つ人材を育成し、継続的な能力開発の機会を提供します。これには、研修プログラムやメンター制度などが含まれます。
⑤コミュニケーションの促進
組織内の情報共有を促進し、意見交換を活発にするための仕組みを整えることです。日本の企業では、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の文化が重視され、上司や同僚との連携が強調されます。
⑥組織の柔軟性と適応力
環境の変化に対できるよう、組織の構造やプロセスを柔軟にし、改善していくことも重要です。これは、日本の市場が変化し続ける中で競争力を維持するために必要です。
1.3 組織作りの原則
組織作りにおいては5つの原則があります。
これらを意識して組織を作り、運営していくことも大切ですが、ケースバイケースでもありますので
原則論として考え、組織運営におけるチェックリストのような形で捉えてみるとよいです。
①統制範囲の原則(Span of Control)
組織の管理者が直接管理できる部下の数には限界がある、という考え方です。あまりに多くの部下を管理しようとすると、指示が行き渡らず、組織の効率が低下する可能性があります。一方、管理する人数が少なすぎると、管理コストが増加します。適切な統制範囲を設定することで、効率的な管理が可能となります。
②指揮命令統一の原則
部下は一人の上司からのみ指示を受けるべき、という原則です。これにより、矛盾した指示を受けるリスクを避け、組織の中で混乱を防ぎます。この原則が守られていないと、複数の上司から異なる指示が出され、業務の優先順位が不明確になり、非効率的な結果を招きます。
③専門化の原則
組織の業務を専門分化し、各メンバーが特定の役割や職務に集中することで、生産性と効率を高める原則です。特定の分野に特化することで、専門性が向上し、ミスが減り、全体的な効率が高まります。
④権限・責任一致の原則
組織において、個々のメンバーが責任を負う際には、それに応じた権限が与えられるべき、という原則です。責任に対して十分な権限が与えられないと、効果的に業務を遂行できません。また、逆に権限がありすぎる場合も、誤った意思決定や責任逃れが発生する可能性があります。
⑤ 権限移譲の原則
上位の管理者が自分の権限の一部を下位の管理者やスタッフに委任することで、組織の効率を高め、上位層がより重要な戦略的業務に集中できるようにするためのものです。
1.4 組織開発との共通点と違い
組織開発は組織の中で既に存在する人間関係やプロセスの改善、長期的な変革を目指すのに対し、
組織作りは新しい組織の構造を作り上げる、または既存の組織の構造を再設計することを指します。
組織開発は、組織内のダイナミクスや文化に焦点を当てた継続的な改善プロセス(例えば、診断、計画、介入、評価のサイクルを経て進行し、外部の専門家やコンサルタントが参加することも多く、組織内のメンバーの意見を取り入れ、変革を進めることです。)であり、組織作りは具体的な役割や部門の設定など、より構造的・物理的な側面に焦点を当てます。
その意味では、1.1における広義の「組織作り」=「組織開発」というとらえ方もできるかもしれませんが、理念、使命感、ミッション、パーパス等と同様に類義語に囚われすぎないことが肝心です。
2.組織作りで一番大切なこと
組織作りにおいて一番大切なことは、その組織が「MVVの達成に近づくかどうか」です。
逆に、今の(これからの)組織においてMVVに近づくイメージを持つことができなければその組織は変える必要があります。
MVVが長期的すぎるということであれば、「この組織で今期の目標を達成できるか?」と考えてみてもよいかもしれません。
何事も目的が大切、と言いますが、組織作りにおいても同様です。
特に、社員数が増えてくると、役職をどうするか?部門を増やすか?教育をどうするか?評価をどうするか?等の目先にとらわれがちになりますが、この点を忘れにように強く意識してください。
3.組織作りの手順(短期)
3.1 MVVの明確化と企業文化の醸成
まずは、MVVを明確にすることからです。
それぞれの詳細はこちらを参考にしてみてください。
企業文化の醸成についてもMVVの浸透と重なる部分が多いので合わせて参考にしてみてください。
参考
ミッション(使命感)とは? あなたのミッションを発見する33の質問
https://blog.kodato.com/mission-33-question
ビジョンとは? ビジョンを導き出すための質問30
https://blog.kodato.com/how-to-vision
バリューとは? バリューを導き出すための質問24
https://blog.kodato.com/value
3.2 組織課題の明確化と中期計画・戦略の作成
続いて、ビジョンを具体化するために中期計画(5か年)計画に落とし込みます。
そして、現状とのGAP(課題)を明確にし、それを埋めるための戦略・戦術を検討します。
この中に組織戦略も含まれます。
3.3 組織形態の明確化と組織図の作成
課題・それを克服するための道筋(戦略・戦術)が明確になったら、それを実行するための組織を検討します。
組織形態には、機能別組織、事業部制組織、マトリックス組織等いくつかの種類がありますので、自社に適した組織形態を選んでください。
=経営者がどのような組織をつくりたいか?という問いに対する答えでもあります。
簡単に可視化すると以下のようになります。
機能別組織
事業部制組織
チーム型
マトリックス型
そして、組織図を作成する際のチェックポイントです。
組織図を作成する際の留意点
部署の最適化
□充足度 MVV実現のために必要な機能(部署)が揃っているか?
□統廃合 部署のムダ・ムラ・ムリはないか?
□新機能 部署の新設は必要ないか?
役職の最適化
□充足度 MVV実現のために必要な機能(役職)が敷かれているか
□統廃合 役職のムダ・ムラ・ムリはないか?
□新機能 役職の新設は必要ないか?
3.4 人材配置
組織図ができたら人員を配置していきます。人材を配置するにあたっては、組織の今後、社員のキャリア、各人の適正等を加味して配置していくとよいです。
また、会社によってはエニアグラムや適性検査等を利用して上司・部下・同僚の相性等を考慮して配置している例もあります。
古田土会計も一部エニアグラムを利用して配置を決めているケースもあります。
3.5 コミュニケーション
毎月の会議や面談等を通じてコミュニケーションを図り、組織が適正に機能しているかを確認します。
会議体でも例えば役員会等上位の会議体ほど組織全体に対するチェック機能が重要になってきます。
また、面談では部下のキャリアプランや得意なこと等を把握するようにすると組織作り、特に人員配置や異動に役に立ちます。
3.6 パフォーマンスの評価と改善
その後、当初の目的・目標、計画とおりに進んでいるかを評価(チェック)し、必要に応じて改善策を講じます。
社員個人の評価は評価制度を整えることによってチェック機能を果たすことができます。
参考 人事評価制度の策定に関わっている私が大切にしていること
https://blog.kodato.com/rating-system
会社全体の組織がうまく機能しているか否かは、業績や予実も一つの指標ですが、顧客満足度調査(エンゲージメント)、社員満足度調査等で定点観測することもおすすめです。
4.古田土会計で実践している組織作り
4.1 広義の組織作り(組織文化)
広義の意味(組織開発)で言うと以下の図(良樹細根)に凝縮されます。
売上1年、利益3年、人10年と創業者の古田土がよく言いますが、組織文化・社風を作るのは人です。その人を育てるのには10年かかると思った方がよいです。
(売上は頑張れば1年、安定して利益を出せる体質にするには3年かかるという意味です。)
そのために、日々コツコツと当たり前のことを当たり前に積み重ねていくことが大切です。
こちらの土壌の部分をもう少し細かく、具体的にすると次の「社風を良くしている環境・仕組み・姿勢」となります。
このほか、PDCAを回す仕組みとして社員満足度調査も実施しています。
4.2 狭義の組織作り(組織図)
古田土会計における組織も時代と共に変化を続けています。
組織図を創るときの流れは3章で解説した通りですが、毎年MVVから戦略・課題を確認し、必要な部署・人数を明確にして組織図を作成しています。
その中で、新しくできる部署もあれば統廃合する部署もあります。
ご参考までに、第10期と42期の組織図のイメージです。
組織形態としては機能別組織となりますが、必要に応じてプロジェクトも作っています。
もちろん、社員数に応じて組織も変わってくる=新しい機能が必要になる、という面もあります。
例えば、総務・経理・人事系等の管理部門は社員数が増えると自然と「作らなければ」となります。
一方で、3章で解説した通り、将来(=MVV)を見据えた時に現状の課題は何か?それを解決して行くためにはどのような組織・部門・部署が必要なのか?と考えることも必要です。
そのようにして作ってきた組織が現在です。
製造業のように製造と販売を分ける(製販分離)というイメージで、お客様と直接打ち合わせを行う部門、社内で会計チェックや決算書の作成を担う部門を明確に分けることで生産性の向上と顧客満足度向上の両立を図りました。
これにより課題であった時短と質両方を担保することに成功しています。
また、ブランディングの強化を図り集客~契約までの仕組みを確立する、という趣旨でのマーケティング課、未経験者でも一人前に育成する仕組みを確立するための教育部門等も作っています。
5.まとめ
以上、今回は組織作りについて解説してきました。
繰り返しになりますが、「目的(=MVV)」に沿っているかどうか、向かっているかが大切です。
近視眼的にならないように注意してください。