あなたの会社に元気と未来を届けます!

BLOG ブログ

自利利他がビジネスの成功につながる理由

自利利他がビジネスの成功につながる理由

おすすめの経営理念30選 無料ダウンロード

ビジネスをしていると、「自利利他」という言葉に触れることがあるのではないでしょうか。
「自利利他」とは仏教や倫理学から来ている言葉です。「自利利他」は「自利」と「利他」2つの意味が合わさった言葉であり、「自利」とは自分の利益を追求すること、「利他」とは他者に利益をもたらすことを指しています。

この2つは一見相反するようにも思えますが、実際には深く結びついています。むしろ、自分の利益を高めるためには他者を豊かにすることが必要不可欠であることを教えてくれる言葉になっています。
この考え方は、ビジネスにおいても重要であると考える人が多くおり、ビジネスにおいてもこの言葉を聞くことがあるのだと思います。

本記事では、ビジネスにおける「自利利他」とは何なのか、またビジネスにおいて「自利利他」は重要なのか、実際どのように取り入れていけばいいのかについて解説していきます。

1.ビジネスにおける自利利他とは何か?

1.1  一般論における自利利他とは?

自利利他とは、端的に表現しますと、「自分の利益で、相手を喜ばせる」のではなく、「相手の喜んでいる姿を見て、自分も喜ぶことができる状態になる」ということです。
自利利他は「自利」と「利他」の二つの言葉から構成されています。

「自利」とは、自己の努力で自分だけが得すること。「利他」とは、自己の利益のためでなく、他の人の利益のために尽くすことをいいます。自利利他は、この2つを両立させた状態のことを指しています。
これは、この言葉ができた大乗仏教において、理想の形であると言われているそうです。それだけ自利利他は崇高なものであり、実現するのは簡単ではないということがうかがえるのではないかと思います。

1.2 ビジネスにおける自利利他

ビジネスにおける「自利利他」は、主にお客様や世の中に対して尽くすことで、自らの喜び(利益)になり、そのような精神で尽くすことが、結果としてお客様も長く商品やサービスを利用したいと思うようになる。
結果、商売も繁盛することにつながりますよ。ということです。
儲けるために商品・サービスを提供するのではなく、まずは相手のお困りごとを解決することが先ということです。

1.3 著名な経営者も自利利他を大事にしていた

なお、ビジネスの世界では、自利利他について触れている著名な方が多くおります。その中でも代表的な2名の経営者を紹介いたします。

1.3.1  飯塚 毅氏(TKCグループ創業者)

会計ソフトメーカーのTKCを創業された飯塚毅(いいづか たけし)氏は、自利利他を基本理念として掲げていることで有名です。飯塚氏の理念に共感し、今も多くの税理士・会計士が師として仰いでいます。
TKC全国会の基本理念である「自利利他」について、飯塚毅初代会長は次のように述べています。

===
大乗仏教の経論には「自利利他」の語が実に頻繁に登場する。解釈にも諸説がある。その中で私は、「自利とは利他をいう」(最澄伝教大師伝)と解するのが最も正しいと信ずる。
仏教哲学の精髄は「相即の論理」である。般若心経は「色即是空」と説くが、それは「色」を滅して「空」に至るのではなく、「色そのままに空」であるという真理を表現している。
同様に「自利とは利他をいう」とは、「利他」のまっただ中で「自利」を覚知すること、すなわち「自利即利他」の意味である。他の説のごとく「自利と、利他と」といった並列の関係ではない。
そう解すれば自利の「自」は、単に想念としての自己を指すものではないことが分かるだろう。それは己の主体、すなわち主人公である。
また、利他の「他」もただ他者の意ではない。己の五体はもちろん、眼耳鼻舌身意の「意」さえ含む一切の客体をいう。
世のため人のため、つまり会計人なら、職員や関与先、社会のために精進努力の生活に徹すること、それがそのまま自利すなわち本当の自分の喜びであり幸福なのだ。

そのような心境に立ち至り、かかる本物の人物となって社会と大衆に奉仕することができれば、人は心からの生き甲斐を感じるはずである。
(『TKC会報』2003年新年号)
===

自利利他の精神を会社という枠だけに納めず、人の幸せにまで考えられていることを感じますね。

1.3.2  稲盛 和夫氏(京セラ創業者)

次に紹介するのは、経営の神様とも称される京セラ創業者である故稲盛和夫氏です。稲盛氏は、利他の実践を掲げています。

===
常に相手にも利益が得られるように考えること、利他の心、思いやりの心を持って事業を行うことが必要です。
それは、「自利・利他」という関係でなければなりません。「自利・利他」とは仏教用語で、自分が利益を得ることと、他人が利益を得ることとは、相矛盾するものではない、ということを表しています。
この教えは、江戸時代に京都で商人道を説いた石田梅岩(ばいがん)の「まことの商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」、つまり、相手も喜び、自分も喜ぶというのが商いである、という言葉にも通じるものです。
また滋賀県の近江商人の間では、昔から商人道として「三方よし」ということが言われてきました。三方とは、「買い手よし」「売り手よし」「世間よし」、そうでなければ、真の商売はできないということです。
私は「稲盛経営十二ヶ条」の第十一条に「思いやりの心で誠実に」という言葉を掲げています。商いには相手があり、相手を含めてハッピーでなければならない、つまり、商売の極意は、相手も喜び、自分も喜ぶということにあると思っています。
経営者は、従業員を守っていくため、また株主に対する責任を果たすために利益を上げていかなければなりませんが、何も競合相手をつぶそうなどという意図を持って競争しているわけではありません。
経営者というのは、みな利己の塊みたいな人たちではないかと思われている方もあるかもしれません。しかし、そうした利己、エゴだけでの経営では、その思いが強ければ強いだけ成功もしますが、その成功は決して長続きせず、やがては失敗して没落していくことになるでしょう。
一方、相手によかれかしと願う利他の心に基づく経営をしていると、周囲の協力も得られて、その企業は長く繁栄を続けていくことができるのです。
『京セラフィロソフィを語るⅡ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編)より
===

自利だけでの経営では短期的な成果は出ても、長期的な繁栄は難しく、自利利他の必要性を説いていますね。

1.4 ビジネスにおける自利利他の対象はお客様だけではない

ビジネスにおける「自利利他」の対象は、多くの会社では「お客様」のみに終始しているケースが多いですが、「お客様」以外にも会社には登場人物が多く存在します。
お客様以外に関係してくる人物についても利他を実践することで、ビジネスとしてさらにメリットを増やすことにつながります。

まずは、「社員」です。社員への利他を追求することで、社員満足につながることはもちろんのこと、そのことが巡り巡ってお客様満足にもつながるという好循環を生み出します。
次にあげられるのが、「社会」です。例えば、障がい者雇用やNPO法人など団体への寄付が該当します。
お客様、社員にとどまらず、社会貢献という枠で「利他」を実践することが結果として会社の社会性を高め、地域・社会からも必要とされる会社になることができます。

会社とは儲けるための仕組みではなく公器の器であると考えれば、お客様に喜んでいただくことだけにとどめる必要はありません。
社会の役に立つことを実践することが、ビジネスにおける「自利利他」の実践でもあると考えることができます。このような行動の積み重ねが、結果として社会から必要とされるための信頼を生み、周りが会社の価値を高めてくれるようになるのです。

2. なぜビジネスにおいて自利利他が重要なのか

2.1  そもそもビジネスは自利利他で成り立っているから

ビジネスの基本は、悩みがある方に対して、その悩みを解決することで対価をいただき成立します。金銭の流れが逆になることはあっても、この原理原則は変わることはありません。

たとえば、商品やサービスを購入するお客様を想定してみたとします。お客様は、何らかの悩みやニーズを持っています。その悩みを解決したり、ニーズを満たすために対価としてお金を支払います。このとき、お客様は提供される商品やサービスに対して「価値を感じる」からこそ、その対価を喜んで支払うわけです。このように、相手にとっての利益、つまり「悩みが解消される」や「生活がより豊かになる」といった価値が存在しなければ、ビジネスは成立しないということになります。

また、逆の視点で考えると、自分の利益だけを優先し、相手に何の価値も提供しない場合、それは一時的な取引に終わり、信頼や継続的な関係を築くことはできなくなってしまいます。相手に対して利他を実践しなくなると、自然とビジネスも関係が終了してしまうということです。

以上のことから、自利利他を実践することで自利利他が成立していることが理解できるのではないでしょうか。

2.2 自利利他で成功しているビジネスの例

・住友商事グループ
住友商事グルーブには、住友400年の歴史に培われた「住友の事業精神」というものがあります。この中で一番初めにでてくるのが、「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」です。これは、「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、社会を利するほどの事業でなければならない」というもので、住友商事グループの目指すべき企業像に通じるものです。
この精神を創業から根幹において経営しているからこそ、国内にとどまることなく海外でも強固なネットワークを構築。金属・輸送機・建機・インフラ系からメディア・デジタル事業までと幅広く事業を展開。創業400年を超えた今も会社が存在し、グループ全体で6兆もの売上高を誇る会社として繁栄をつづけられているのではないでしょうか。

・京セラ
京セラは、稲盛和夫氏が創業した会社です。自利利他の精神など、会社における考え方をまとめた「京セラフィロソフィー」と、部門採算を徹底的に追求した「アメーバー経営」を中心に、情報通信・自動車・環境、エネルギー・医療、ヘルスケアと幅広く事業を展開。2024年3月期の業績は約800億の売上を誇る世界を代表する企業となっています。

また、稲盛和夫氏が立ち上げた盛和塾(2019年閉塾)では、「心をベースとして経営する」という自利利他の精神による考え方で経営することの大切さを稲盛和夫氏自ら指導。閉塾時の2019年には会員数15,000名となっており、多くの方が自利利他による経営を学び実践したことでも有名です。
なお、稲盛和夫氏の考え方に共感した会社は、京セラの経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という言葉を、自社の理念に添えて経営理念としています。

このように、利他の精神がビジネスにおいても成果をあげることを証明していると感じます。

3. 3ステップで考える自利利他をビジネスで実践する方法

3.1  お客様に喜ばれる

ビジネスは、お客様がいなくては成立しません。そこで、まずはお客様に対する自利利他の実践を一番最初に取り組みます。
ビジネスにおける自利利他の実践でもっとも大事なことは、「お客様を定義すること」です。どんな会社であっても、会社の資源は無限にあるわけではありません。有限である資源を最大限活用するには、喜ばれるべきお客様を絞り、絞ったお客様像を徹底的に明確にすることが最も重要です。
お客様像を明確にする際に考えるべき項目は下記の通りです。

〇 個人の特徴・志向
・ 名前(仮で作成)
・ 住所
・ 家族構成
・ 役職
・ 年収
・ 年齢
・ 性別
・ 最終学歴
・ 仕事内容
・ 使える金額
・ 外見的特徴
・ 話し方の特性
・ 好きなもの/こと
・ 苦手なこと、弱点
・ スキル、得意なこと

〇 会社の特徴(BtoBの場合)
・ 会社名(仮で作成)
・ 業界
・ 売上
・ 製品
・ 社員数
・ 製品価格、営業スパン
・ 業界のトレンド
・ 主な業務内容

〇 購入におけるよくある障害
・ 今の利用している商品・サービスの不満
・ 悩み

お客様像を明確にすることができたら、そのお客様の悩みを解決するように自社のサービスを深堀していきます。ただし、社内で考えても答えはでませんので、お客様の声を徹底して聞くことが重要です。その中ででてきた、サービスに対する不満や要望をお聞きして一つずつ形にしていき、お客様に喜んでいただけることを増やしていくことで、お客様に対する自利利他を実行していきます。
お客様に対する自利利他実践の評価は一般的には、喜ばれるお客様の数が増えるか、お客様の課題解決の量が増えるか、で可視化されますので、その様な数字を一つの評価項目として用意されるのがよろしいかと思います。

3.2  社員に喜ばれる

お客様に対する自利利他の実践が進み、会社の財務基盤の安定が見えてきたら、次に取り組むべきことは社員への利他です。社員に対する自利利他の実践は、社員が「この会社で働くことができて幸せ」と実感してもらうことにあります。
社員がこの会社で働くことができて幸せと実感してもらうためには、「安心」と「ワクワク」を提供することです。

〇 安心
社員に安心してもらうためには、福利厚生を充実させることです。
とはいっても、手当や休みを増やすことだけではありません。例えば、下記のような内容が該当します。

・ 高給与の実現(同業者よりも10%高い水準)
・ 時短
・ 終身雇用制
・ 給与は安定した生活を送るため、年功・家族重視、賞与は実力主義。
・ 定年後も勤務可能とする
・ 第2の人生(最大80才まで働けるようにする)
・ 資格取得の奨励
・ レクリエーションの実施(社員旅行・BBQなど。ただし、参加は強制しない)
・ 健康管理(健康診断・人間ドック)
・ 手当(家族手当は家族が多い人ほど手当を増やす。永年勤続など)
・ 休暇(夏季休暇・年末年始・ほか記念日など)
・ 教育や子育て支援(入学金・奨学金支援・大学院補助)
・ 遺族支援・障害支援(会社から毎月生活費を支給する)
・ 将来支援(介護や年金に対するリテラシー教育・投資支援)
・ 他(社員持ち株制度、社食支援、など)

〇 ワクワク
どんなに安心できる環境があったとしても、仕事を通じたやりがいがなくては、社員は会社に対して未来を描け
なくなってしまいます。
働くことによる成長を実感できるようにするためにも、社員が未来に希望を持てるような仕組みを作っていきま
す。例えば、下記のような内容が該当します。

・ 長期でのキャリアプラン提示
◎◎(誰でも社長になれる・グループ会社の経営者になれる・スペシャリストとしての道の提示)
・ 中期でのキャリアプラン提示(外勤・内勤・マネジメント・専門職それぞれ)
・ 組織の未来像の提示(社員が目指したいポジションを見つけることでワクワクを提示)
・ 事業の未来像の提示(社員のキャリアビジョンの選択肢を広げる)
・ 正社員転換制度

3.2  社会に喜ばれる

最後は社会に対する利他の実践です。ここまで一貫して、自利利他を実践することができると、会社としての品格を高めることができ、社会から必要とされる会社として認識してもらえるようになります。例えば、下記のような内容が該当します。

・ 寄付
・ 障碍者雇用の実施
・ 仕入先・外注先の幸せまで考える経営
・ SDGsなど環境活動への取り組み
・ 業界の発展支援
・ 地域への貢献
・ 社会貢献活動(ボランティアなど)

地域社会の利他の実践より、会社だけでなく会社を取り巻く全ての方に喜んでいただけるような会社となることで、高いレベルでビジネスにおける自利利他の実践につなげることができます。

4. まとめ

以上が、ビジネスにおける自利利他となります。自利利他の実践は周りを幸せにするだけでなく、会社自体も幸せを実感することができるようになり、誰もが幸せな社会を実現することができます。今回の内容を参考に、一社でも多くの会社が、相手のことを考えることで、社会における幸せの和が広がり、ひいては世界平和につながれたら素敵ですね。

おすすめの経営理念30選 無料ダウンロード