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「家賃を払い続けるより自社で不動産を購入した方が良いという勘違い」

「家賃を払い続けるより自社で不動産を購入した方が良いという勘違い」

家賃を払い続けるのと自社で不動産を購入するのとどっちがいいの?」
「家賃分を削減できるし、不動産を買ってしまったほうがお得でしょ?」
などとお考えの方はぜひこのコラムをお読みください。

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、ポイントをかいつまんで解説していきます。

今回のテーマは、「家賃を払い続けるより自社で不動産を購入した方が良いという勘違い」です。
このように考える会社が世の中には非常に多く、その結果失敗して倒産してしまうというケースを私はたくさん見てきました。

以下では、むしろ家賃を払い続けることを選択したほうが会社の経営にとっては良いことを、事例を交えながら説明しますのでぜひ参考にしてください。

▽動画でも解説しています

【事例】家賃を払い続けて成功した会社・不動産を買って失敗した会社

それではさっそく事例をご紹介します。
今回は家賃を払い続ける決断をして成功した会社の事例と、代わりに不動産を購入して失敗した会社の事例をひとつずつ取り上げます。

①:財務状況から購入を思いとどまり利益1億→10億へ

最初の事例は、業績を伸ばしたタイミングで銀行から不動産の購入を勧められたものの、財務状況から購入を思いとどまり、結果大成功した会社の話です。

その会社はうちのお客さまで、「経常利益1億円を出したらみんなでビールかけをやろう」と言っていて、見事に1億円を達成、翌年には1億2千万円くらいの利益を出しました。

その1億2千万円の利益を出したタイミングで、銀行から「十分な利益が出ているのだから、倉庫などを借りているのはもったいない。
私どもの紹介で倉庫兼自社ビルを建てませんか」という打診があったのです。
私はお客さまからその相談を受けた際、「社長、まだ早いですよ」とお伝えしました。

私が自社ビルの建設に反対したのは、その会社が以下のような特徴を持っていたからです。

・自己資本比率がまだ30%に満たない
・借金も多い
・中国で物を作って日本へ輸入、国内で販売している

3つ目の項目について補足説明をすると、中国で物を作ってそれを輸入するため、買掛金が少なく、代わりに前払い金が多いわけです。
また国内販売のために在庫を持たなければならないので、売掛金や受取手形も結構あります。

つまり先にお金を支払わなければならないことに加えて未回収のお金も相当ある、自社にお金がとどまらない。
このような事業構造の中で自社ビルを作って借金を重ねたらお金が回らなくなると私は話をしました。

その話があった直後、リーマンショックがあってその会社の売上はガクッと落ちました。
そのため、あの時買わない決断をしたのは正解でした。

そしてその会社はリーマンショックから数年後に業績がものすごく良くなり、実は今季の経常利益は10億円に到達しました。
今ではあの倉庫兼ビルを買えるだけの力を十分につけています。

◯【ポイント】なぜ銀行は不動産購入の話を持ってくるのか?

これは当時、その会社の社長に話したことですが、銀行が「不動産を購入したほうがいい」という話を持ってくるのは、単純に銀行が不良債権を抱えているからです。
社長のためを思ってではありません。

銀行は会社に不動産を売って不良債権を回収すれば評価が上がる、そして不動産の購入代金を融資すれば「優良な取引先を有した」ということでさらに評価が上がる、このような思惑から銀行は不動産の購入を勧めているのです。

すべては銀行の不良債権回収と銀行員の成績のためであって、社長のために良い話を持ってきているのではありません。
こうした銀行の事情もあるので、不動産の購入は、その時の会社の財務状況を見て慎重に判断する必要があります。

②:土地建物を買いまくって借金過多になった年商30億の会社

次の事例は、年商30億の会社が不動産の購入によって借金過多になり、最終的に廃業に至ったという話です。

これは15年くらい前の話、東京都の八王子や立川あたりにある家電の小売店の顧問になったのですが、最初バランスシートを見てびっくりしました。土地建物がものすごく多かったのです。

その会社は、自社ビルを所有し、さらにビルの周りの駐車場もどんどん買っていました。
そのため、地代家賃はそれほど多くない一方で、土地購入のための借金がものすごく多かったのです。

それでも、当時は経営が順調だったので、借金過多でも家賃を払わない代わりに借金を返していれば問題はなかったわけですが、やがて売上が下がってくるとそうはいかなくなります。
ライバルが増えるなど、いろいろな要因で経営がうまくいかなくなると、借金がだんだん返せなくなりました。
そして「リスケ」などもやらざるを得ない状況になってしまったのです。

◯【ポイント】土地は経費で落とせない→借金がかさむ

自社の物件を購入する場合、借金をたくさんしなければなりません。
たくさんお金を使う分、経費に計上して節税できればまだ良いですが、不動産の場合は難しいです。

・土地→減価償却がなく経費で落とせない、固定資産税も大した金額でない
・建物→中古だと減価償却が少なくそれほど経費にならない
・駐車場→土地に準ずる形でほとんど経費にならない

このように購入した不動産を経費計上するのは難しく、借金だけが増えていくという事態になりかねません。

特に注意すべきなのは駐車場です。
駐車場を購入する場合、固定資産税の3倍から4倍ほどの地代を支払わなければなりません。

例えば、5億円の駐車場を買った場合、10年で年間5千万円ずつ返す必要があります。
一方でその駐車場を借りた場合は、年間1千万円程度の支払いで済むでしょう。

また駐車場を買う場合は経費で落とせず、それに対する税金もかかる一方で、駐車場を借りた場合は駐車料を経費で落とすことができ、節税になります。

以上より、駐車場を借りることは非常に経済効率が良いわけです。
会社のコスト削減につながります。
結局、自社ビル周りの駐車場を買いまくっていたその会社は、お金が払えなくなって銀行の管理になりました。

不動産を購入して廃業した会社の大きな失敗2つ

さて、ここからは2番目の事例、自社ビルやその周りの駐車場を買いまくって借金過多になった会社の事例を、さらに深掘りしていきます。
その会社は、2つの大きな失敗をしていました。

①:買わなくてもいい土地建物をどんどん買ってしまった

まずひとつは、買わなくてもいい土地建物をどんどん買ってしまったことです。
そして借金過多になり、返せないから借りながら返すという悪いサイクルに入ってしまった。

自社ビルはまだしも、その周りの駐車場まで次々と購入したのは良い選択ではありませんでした。
上述の通り、駐車場はほとんど経費で落とせず、税金もかかるからです。
自社で不動産を買うよりも、賃料を払って借りていたほうが、経済効率がずっと良い場面はたくさんあります。

②:銀行1行で全体の8割から9割を借りていた

もうひとつの失敗は、その会社が銀行1行から全体の8割から9割の借り入れをしていたことです。
話を聞くと「その銀行さんが肩代わりをしてくれた」ということでしたが、1行で8割も占めてしまうと、ほかの銀行で肩代わりをする銀行なんてもう出てきません。

そして他行の介入する余地がなくなってしまうことで、どんどん金利が上がっていきます。
事実、その会社は普通なら1〜1.5%くらいで借りられるところを、3.8%の金利で借りていました。

つまり借金が20億円だったとすると、3.8%の金利だと支払うのは7,600万円。
仮に1.8%の金利で試算をすると、2.0ポイントの差があるわけなので、返済額は4,000万円も減ります。

普通の金利は1.8%よりも低いので、その会社は通常より4,000〜5,000万円程度余分に払っていたことになります。
それはその会社が借金を1行に集中させてしまったからです。

◯【ポイント】銀行は分散して競争させないといけない

年商30億円ほどの会社であれば、銀行は4つも5つも分散して活用し、競争させなければどんどん金利が上がってしまいます。
事実、競争させなかったから、2%が3%になり、3.5%になって3.8%になるという事態を招いてしまったのです。

当時もそういう話をさせていただきましたが、結局は借金が返済できず、やがては銀行の指示したコンサルタントが入ってくることになりました。
そして「銀行の指定した税理士さんに変えなさい」という話になり、我々とその会社の顧問契約は無くなりました。

その後、その会社がどうなったかというと、本体はもう無くなり、「廃業」というような形になってしまいました。
そして不動産管理会社として残り、家賃収入で借金を返済するという形になってしまったのです。

経営不振から借金過多・倒産に至るリスクを理解すべき

廃業したその会社の場合は、社長が財務や銀行対応の仕方などを知らなかったために、「借りているより買ったほうが家賃を削減できて利益が出る、だから買ったほうが得だ」と考えてしまったのです。
多くの中小企業の経営者は同様の勘違いをしています。

自社で不動産を購入した場合、やがて借金の返済が完了すれば自分のものになるといいますが、それは十分に売上と利益が出た場合のシナリオです。
売上と利益が減った場合、借金の返済ができなくなってしまうというリスクも、きちんと頭に入れておかなければなりません。

こうしたことを考えない経営者が世の中には多いため、たくさんの会社がその勘違いから倒産していきます。

まとめ:家賃を払い続けるのは経済効率の良い賢明な選択

改めて結論を述べると、一般的に自社で不動産を購入するよりも、そのまま家賃を払い続けるほうがおすすめです。
自社で土地建物を購入する場合、経費で落とすことができず、今後売上や利益が落ちれば借金過多になって倒産というリスクも想定されます。

一方で家賃を払う場合は、大きな借金をする必要はなく、賃料を経費で落とすこともできるので経済効率が良いです。
そのため、基本的には自社で土地建物を買うよりも、家賃を払い続けることを推奨します。

以上を参考に、現在「家賃を払い続けるより自社で不動産を購入したほうがいい」と考え、実際に土地建物を買おうとされている方は、今一度十分な検討をなさってください。

何より、自社の正確な財務状況の把握が欠かせませんので、まずは基本を押さえることが重要です。
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