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家賃を払い続けるより自社で不動産を購入した方が良いという勘違い②

家賃を払い続けるより自社で不動産を購入した方が良いという勘違い②

「銀行から家賃を払い続けるより買ったほうがいいって言われたけど本当?」
「不動産を購入するべきでないのはどんな会社?」

などとお悩みの方はぜひこのコラムをお読みください。

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、ポイントをかいつまんで解説していきます。

今回のテーマは、前回に引き続き「家賃を払い続けるより自社で不動産を購入した方が良いという勘違い」です。
私は「家賃を払い続けるのはもったいない」と考えたり、銀行員や販売会社に騙されたりして不動産を購入し、失敗してきた会社をたくさん見てきました。

とくに中小企業の場合は、お金が回らなくなって失敗する可能性が高いので、不動産の購入を検討中の方は、以下を参考にどうぞ慎重な判断をなさってください。

▽動画でも解説しています

▽前回の記事はこちら
https://www.kodato.com/blog/p7687/

【事例】家賃と返済額が同じになる返済期間を設定して失敗

これは1年くらい前にあった例です。
ある会社の社長さんが私のところへ相談に来られました。
その方の会社は4つあるのですが、本体の会社だけはほかの税理士さんではなく、古田圡さんのほうで面倒見てほしいと言われたので、現在お手伝いをしています。

さて、その社長さんから最初に受けた相談は、「今まで家賃を月330万円、つまり年間4,000万円の家賃を払っていた。
その家賃を払うのがもったいないのもあったが、実はその物件が競売に出されたのでそれを買った」というものでした。

いくらで買ったのかというと「6億円」でした。
私は買わないほうが良いと思いましたが、買ってしまったものはどうしようもありません。
話を聞いたところ、その社長は大きな失敗をしていました。

社長は6億円の借金を15年の返済期間で借りたというのです。
銀行さんがいうには、「6億円の15年だから年間4,000万円。
つまり今まで払っていた家賃と同じだから、同じだけ支出をして物件が残るのだから良いだろう」とのことでした。
社長はこれに納得し、15年で借りようとしたのです。

私はこれを聞いて、「それは大間違いですよ」と諭しました。
私は「借入金の返済期限を15年にしてはダメです。
最低でも20年にしてください」とアドバイスをしました。
それについては間に合ったため、社長は20年で借りることができました。

20年だと年間3,000万円なので、計算上は1,000万円余ることになります。
しかしながら、この場合の1,000万円はあっという間に消えてしまう金額なのです。
それについてこれから詳しく解説します。

◯【ポイント】家賃と同じ返済額だと追加の税金でお金が回らなくなる

家賃を支払う場合、年間4,000万円を経費にすることができます。
一方で購入した場合、今まで4,000万円の経費になったものが、建物の減価償却と固定資産税、金利を入れても経費は2,000万円にも満たなくなります。
つまり2,000万円以上分の税金の支払いが増えるということです。

2,000万円に対する約35%だと、700万円くらい余分に税金が出てくることになります。
さらにはそれに加えて固定資産税も支払わなければなりません。
そのため、借入金の返済のほかに、間違いなく1,400万円〜1,500万円は余計にかかってきます。

その分の資金を賄わなくてはならないので、私は借入金の返済期限は15年でなく、20年にしてくださいと話をしたわけです。
そういう税金や固定資産税の話を、ほとんどの銀行さんは貸す時にしてくれません。
多くの中小企業の経営者もそうしたことを知らないため、銀行さんの口車に乗せられてしまうのです。

「家賃と同じ返済で借金を組みますか」というような言葉に惑わされてはいけません。
税金を含めた計算をきちんとしたうえで適切な返済期間を決める必要があります。
私はそのようなアドバイスを社長にさせていただきました。

できるだけ借金を減らし返済額を少なくすることが重要

もう一つ、財務に関してその社長に話したのは、「6億円の借金を5億円に減らしたらもっと借金の返済が減る」ということです。
社長は「預金はそれほど多くないが、実は保険の積立金を満期にしたのが1億円くらいある」と言ったので、私は「それを返済に充てましょう」とアドバイスしました。

6億円の借金が5億円になれば、資金の運転はかなり楽になります。
借金の額をできるだけ少なくすれば、その分返済額も少なくなるからです。

6億円の借金が5億円になれば、20年間だと年間2,500万円。
4,000万円払っていたのが2,500万円になるため、1,500万円の余裕ができます。
満期の保険をそのまま置いていても仕方がないので、借金の原資に充てて返済額を少なくするのが最良です。

◯【ポイント】キャッシュフローを回すことが一番重要

6億円の借金を5億円に減らして1,500万円のゆとりを作ったように、経営においてはキャッシュフローを回すことが最も重要です。

中小企業を見ていると、失敗しているケースとして、「家賃を払うのはもったいない、買えばやがて自分のものになる」といって、キャッシュフローのことを考えずに買ってしまい、その結果かえって損をしてしまうという例が多々あります。

皆さんの中にも、マンションを買ったり、アパートを買ったりといったことを銀行さんから勧められることがあるかもしれません。
しかし、銀行や不動産会社が出してくる返済のシミュレーションには注意が必要です。

私はそうしたシミュレーションをできる限り見せてもらうようにしています。
私どものお客さまにそれを正しく見る力がないからです。
するとたいていの場合、個人ではそのシミュレーションに所得税が含まれていません。

「この物件を買うと家賃収入がいくらですよ、それに対して借入金の返済がいくらですよ、固定資産税や管理費はいくらですよ、その結果収支としてはこれほど余ります、借金はこのように減っていきます」といったものが多いです。
そのなかには税金のシミュレーションがありません。

一般的にアパートやマンションを買う人は、所得が1,000万円を超えている方が多いため、所得税率は30%を超えているわけです。
そのため、相当の税金が余分にかかってくることになります。

不動産のうち、土地は経費にならず、固定資産税も全体からすれば微々たるものです。
建物の減価償却費についても、長いと50年、短くても24年や30年はかかります。
長年かけて定額法で償却していくため、償却費もほとんどありません。

よって、不動産を購入すると所得が出ます。
収支がトントンでも、お金が回らなくても所得が出るのです。
上述の通り、不動産を買う人の所得税率は30%以上なので、不動産から出たその所得の30%に相当する分だけ所得税や住民税が上がります。
その結果、不動産を持つことによって、お金がどんどん目減りしていくという事態が起こり得ます。

加えて、購入借金返済が終わるのは30年先です。
個人の場合は、30年ほどのローンを組みます。
不動産会社は返済期間を15年〜20年でローンを組む計画を持ってきません。
少しでも資金が回るように見せるために、少なくとも30年、長い場合は35年で持ってくるのです。

マンションは良いとしても、アパートや木造モルタルは35年も持ちません。
経済的耐用年数はせいぜい15年〜20年で、そこから先は借金だけを払い続けることになります。
だんだん空き家も増えてきて、返済はどんどん苦しくなります。
このように多くの方が販売会社に騙されて借金漬けになるのです。

投資は自己資金でやる【全額借金はNG】

あくまでも投資は自己資金でやるものです。
失敗しても借金が残らないようにやることが何よりも重要だといえます。個人でも法人でもこの原則は変わりません。

個人で不動産を買うのなら、まず手元資金をしっかり貯めましょう。
例えば、借金が1億円必要な場合、2,000万円〜3,000万円は親から借りてでもお金を用意すれば、借金は7,000万円ほどになります。
そうすれば、返済額が少なくなるのでお金が回るようになります。

もしお金が回らなくなったら売れば良いのです。
最初に借金の額を少なくしておけば、売るときに価格が落ちていたとしても借金は完済できます。

多くの人が失敗している例は、1億円の物件を1億円借金して買うことです。
その物件を売ると7,000〜8,000万円にしかならず、2,000〜3,000万円の借金だけが手元に残る。
そういうケースが非常に多くみられます。
十分にお金がないのに欲を出していると、そのような結果を招くので注意しましょう。

◯【ポイント】法人の場合は自己資本比率が重要

法人の場合は、自己資本比率が高くないといけません。
十分に預金のある会社でないと、せっかくビルを買ってもだんだんテナント料が下がってきたり、空き家が多くなってきたりしてお金が回らなくなるケースが多いので注意しましょう。

会社にとって、大きな不動産を買うことは非常にリスクのある行為です。
そのため、十分な自己資金がないのなら買ってはいけません。
例えば6億円の物件だったら、最低でも1億円〜2億円は自己資金を持ってから買いましょう。
全額借金して不動産を買うと、現実にはやがてお金が回らなくなります。

そのような財務をしっかり理解して投資をするとリスクは少ないです。
一方で財務がわからないまま不動産投資をすると、いずれは資金が回らなくなって失敗します。
最初は利益が出ているように見えていてもそれは仮の姿で、最終的には借金だけがたくさん残ります。

そのため、土地・建物の購入や設備投資の際には、財務に詳しい人間にアドバイスを受けながら検討を進めてください。
個人の場合も、「このマンションやアパートは本当に買ってもいいのか」「建てても大丈夫だろうか」などとよく考える慎重さは必要です。

まとめ:自己資本比率が低い、お金がない会社は買わないのが正解

私は「家賃を払い続けるのはもったいない」と考え、自社で購入したために失敗した会社を数多く見てきました。
不動産の購入が原因で倒産してしまった会社もありました。

絶対に買うなというわけではありません。
ある程度自己資金もあり、安定的に収益が出ている会社であれば、買っても問題ないでしょう。

ところが中小企業は自己資本比率が低すぎて、お金を持っていないところが多いので、失敗する可能性が高いのです。
十分なお金がない会社は「家賃を払うより買ったほうがいいですよ」という銀行さんの甘い言葉に惑わされないようにしてください。

決して銀行員はあなたの会社を信用して勧めているのではありません。
自分の利益のために勧めてくると理解しておいたほうが間違いは少ないです。
くれぐれも気をつけましょう。

なお、今回のような財務的な判断をくだすうえでは、自社のBSを理解していることが必要不可欠です。
BSの基本が学べる、『BS(貸借対照表)とは』という資料をご用意しましたので、ぜひご活用ください。

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