あなたの会社に元気と未来を届けます!

CLOSE

BLOG ブログ

売上や利益が増えると会社にお金が残るという勘違い

売上や利益が増えると会社にお金が残るという勘違い

「売上や利益が増えると会社にも残るお金も増えるのでは?」
「儲かったお金がどのくらい残っているかを知るツールが欲しい!」

などとお考えの方はぜひこのコラムをお読みください。

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、ポイントをかいつまんで解説していきます。

今回のテーマは、「売上や利益が増えると会社にお金が残るという勘違い」です。
多くの中小企業の経営者の方を見ると、会社がどんどん拡大して売上が増えて利益が出ると、税金を払いたくないものですから節税と称していろいろなことをやり始めます。
高額な保険に入ったり、レバレッジドリースをやったり、高級車を買う人もいます。

問題はそのようにお金を使う経営者が、儲かったお金がどのくらい会社に残っているかを把握しているかということです。
多くの経営者はそのようなことは知りません。
「売上や利益が増えると会社にお金が残る」と勘違いしているからです。

今回は実は売上や利益が増えれば増えるほどお金は足りなくなること、儲かったお金がどこに消えたのかを判断するのに資金別貸借対照表が有効なことを解説します。
正しいお金の使い方について知りたい経営者の方はぜひ参考にしてください。

▽動画でも解説しています

儲かれば儲かるほどお金は足りなくなるのが現実

実際には売上が増えて儲かれば儲かるほど、お金は足りなくなっていきます。
そのため、たくさんお金を使って節税対策をする余裕など、本当はないかもしれません。

単純に考えて、売上が増えれば当然受取手形や売掛金が増えます。
その前に売上の増加を見越すので、棚卸資産も増加します。

またここでは便宜上、物を仕入れて売る業者を想定しますが、まずは仕入れが最初です。
仕入れたものを在庫に置いて、そこから売ります。
売れると売掛金が発生して会社に入り、次に受取手形がきます。

一方で出ていくお金を考えると、仕入れから1ヶ月くらいは買掛金です。
その後2〜3ヶ月支払手形を振り出すことがあります。

◯流動資産 ◯流動負債
受取手形 支払手形
売掛金 買掛金
棚卸資産

資金の流れをバランスシートで見ると、上記のように左側には受取手形と売掛金があって、その下に棚卸資産がきます。
そして右側が支払手形と買掛金です。
このような「流動資産」と「流動負荷」で分類することを「営業循環基準」と言いますが、これに基づいてお金は動いています。

粗利があるとして、700円で仕入れたものを1,000円で売ることにしましょう。
この場合、粗利益率は3割なので、売掛金が100,000円だったら買掛金は70,000円というように売上と仕入れは10:7の割合になります。
売上に対応するのが売掛金で、仕入れに対応するのが買掛金です。

これがバランスシート上ではどうなるかというと、売掛金と買掛金に棚卸資産が入ってきます。
例えば、10万円の売上分の在庫を常に持っておくとすると、粗利3割で棚卸資産は7万円です。

この設定のもと、10万円の売上があったとすると、売掛金は10万円、棚卸資産は7万円、買掛金は7万円となります。

◯流動資産 計17万円 ◯流動負債 計7万円
売掛金 10万円 買掛金 7万円
棚卸資産 7万円

この場合、上記のようにバランスシート上では左側と右側で10万円の差が生まれます。
売掛金というのはまだ手元に入ってきていないお金なので、要するに10万円が不足するわけです。
売上が増えれば増えるほど、売掛金の金額は大きくなっていくので、どんどんお金が不足しています。

これが、売上が増えて儲かれば儲かるほどお金が足りなくなっていく理由です。
売上は増えて利益は出るかもしれませんが、その分だけ資金は間違いなく足りなくなります。

そのため、お金を使う前に、儲かったお金がどのくらい残っているのか、儲かったお金がどのように消えているのかなどを正確に把握する必要があるのです。
ここからはそうしたことを把握するためのツールについて解説します。

◯【ポイント】キャッシュフロー計算書やB/Sでは不十分

売上と利益の関係を示すツールに「キャッシュフロー計算書」があります。
以前「儲けた利益はどこに消えた」というタイトルで、『稲盛和夫の実学』という著作を参考に解説したことがありました。
その本には「会社でいくら儲けたと思っても、売上が棚卸資産に消えてしまったらお金は残りませんよ」ということが書いています。

棚卸資産以外では、その他の資産や減価償却費など、いろいろな科目があって、それらが理由で利益が消えてしまう場合もあります。
そうしたことを把握するのにキャッシュフロー計算書は便利です。

営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合わせたフリーキャッシュフロー、そして財務キャッシュフローでお金の増減を計算できます。
しかしながら、キャッシュフロー計算書では、一期間内に儲けたお金がどこに消えたのかということしかわかりません。

一期間のみの判定しかできないため、キャッシュフロー計算書では経営の根本的な解決は難しいわけです。
これまでの経営全体において一体どのくらい儲かったのか、その儲かった利益がどのように消えたのかを把握することはできません。
そうしたことが把握できないと、経営者はお金の使い方を誤るわけです。

ちなみに月次決算書の賃借対照表(B/S)では、今までに儲けた利益が「純資産の部」で確認できます。
「純資産の部」は「自己資本の部」と言われることも多いです。

純資産の部には、「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」の3つがあり、純資産の合計から資本金と資本剰余金を引いたものが儲けた利益になります。
言い換えると、利益剰余金こそが今現在残っている儲けた利益です。

例えば、P/Lの損益がいくらあっても、配当や役員賞与で消えてしまうと、利益は残りません。
つまり残っている利益がどのくらいかを判断するのに、P/Lでは役に立たないということです。

それではB/S、バランスシートならどうかというと、残念ながらバランスシートでも不十分です。
バランスシートなら利益剰余金で残っている利益の金額は確認できますが、儲けた利益がどこに消えてしまったのかという点は判断できません。
利益がどこかに消えている場合、バランスシートを見てもその原因はわからず、対策の打ちようもないということです。

消えてしまった儲けた利益について知るには、「資金別貸借対照表」が必要になります。

お金がない原因は「資金別貸借対照表」でわかる!

経営者が資金別貸借対照表をわかるようになると、バランスシート上では見えないお金がない原因を説明できるようになります。
熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』のp.120、p.121に現物を載せているので、お持ちの方はぜひご確認ください。

さて、資金別資金別貸借表はP/LとB/Sから作りますが、それを「損益資金の部」「固定資金の部」「売上資金の部」「流動資金の部」の4つに分類します。

◯「損益資金の部」:設立から今までいくら儲けたかを表現

損益資金の部は、会社を設立してからこれまでにいくら儲けたかということを表す部分です。
バランスシートの利益剰余金を基本としますが、そこに当期の損益や引当金など、勘定科目にあるいろいろなものを当てはめます。
そのため、税金や配当を払うなどすると、損益資金の部からはその分だけお金が無くなります。

熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』で示した事例では、第21期で損益資金が8億5,800万円と記載されています。
これが資金会計上の儲けた利益になるわけです。

◯「固定資金の部」:棚卸資産は必ず長期で調達すべき

次に固定資金の部では、長期的な資金の調達と運用のバランスを表します。
棚卸資産もここに含まれます。

なぜ棚卸資産が固定資金に入るかというと、棚卸資産は長期的な資金だからです。
棚卸資産は一度投資されると、それが売れるとまた補充されるので、実質的に棚卸資産は減りません。

そのため、新たな店を作るのでその分の在庫が必要な場合など、棚卸資産を増やすときには、長期的に資金を調達する必要があります。
短期的に調達すると3ヶ月や4ヶ月で返さなくてはならないため、短期借入金ではいけません。

売れたらまた補充する、実質的に減らない棚卸資産は、資金的に見ると固定資金です。
長期的に投入した資金であって、短期的な資金ではありません。

ところが銀行の事情は違います。
銀行は運転資金を短期で貸そうとしてきます。
運転資金とは、「売上債権(受取手形・売掛金+棚卸資産)−支払手形−買掛金」で表される金額です。
銀行の短期借入金の枠は、この運転資金を基本にします。

しかしながら、経営者の立場からすると、運転資金を短期の資金で調達すると短期で返さなくてはならないので、資金的にかなり危ういのです。
短期借入金の場合、銀行は期日を決めていくらでも「返せ」ということができます。
貸す方はそれで良いですが、返す方は短期で返すとなると会社の資金が破綻してしまいます。

以上より、棚卸資産は長期の資金で調達しなければなりません。

固定資金の部に話を戻すと、棚卸資産のほか、建物・構築物や土地、投資等、繰延資産など、バランスシートの固定資産の部にあるものは、左側の「長期的な資金の運用」に含まれます。
右側には、長期借入金や役員借入金や長期未払金などの「長期的な資金の調達」があります。
そしてその下が資本金や資本準備金です。

今回はここまでとします。
今後、資金別貸借対照表の概要や使い方、「売上や利益が増えると会社にお金が残るという勘違い」について、あと3回にわたって解説する予定です。

まとめ:売上が増えるとお金が足りなくなることに注意

売上や利益が増えると会社のお金も増えると思いがちですが、実際には棚卸資産などの分だけお金は足りなくなります。
そのため、儲かったときこそお金の使い方を誤らないように注意しなければなりません。

儲かったお金がどのくらい会社に残っているのか、利益がどのように消えてしまったのかなどを判断するには、資金別貸借対照表が有効です。
資金別貸借対照表の概要や使い方などについては、次回以降の記事でも詳しく紹介するので、ぜひそちらも参考にしてください。

なお、今回ご紹介した資金別貸借対照表をはじめ、会社経営に欠かせない16の帳票をまとめた「経営レポート」を無料でプレゼントしております。

ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

まずはお試しで経営レポートを手に入れる

古田土会計グループでは、経営者のお悩み別に無料セミナーを行っています。