商売は負けてはいけない
「値下げ」は悪か?
世の中は大不況といわれ、値下げ競争が行われています。
世のコンサルタントと呼ばれる人達は、「値下げは消耗戦になり、企業の体力を弱めるからよくない。競争相手にない独自の商品・サービスを開発すべきである」と言っています。
そしてこのような経営をしている会社の事例をいくつもあげて値下げが悪であることのように言っています。
また経営者に経営能力・経営努力が足りないのかのようにも聞こえます。
はたしてそうでしょうか?
ライバルが値下げして自社の得意先に営業をかけてきた。
数字のことがよくわからない経営者は「そんな価格ではできない。赤字受注はすべきではない」と断ったらどうなるでしょうか。
結論としてはもっと赤字になります。
その理由は、うちの社員に聞いていただければよくわかります。
競争相手にお客様を取られたらまた取り返すのに多くの労力を必要とします。
たとえ一時的に利益が減ったり、赤字が増えてもお客様がいれば、仕入コストや経費の削減、新規の営業活動をする時間が与えられます。
値下げ要求の厳しい取引先には、よい取引先がみつかったらその時点で断わればよいわけです。
それまでは固定費を賄ってくれる大事なお客様です。
競争時に目をつけるべきポイント
一般の中小企業経営者の方々が勘違いしているのは、価格を決める場合のコストと競争になった場合のコストの違いです。
競争になった場合のコストは、粗利益(売上高-変動費)が稼げるかどうかが目安です。
どこの利益で経営をみるかがポイントです。
競争のときでも経常利益で数字を見ていると経営判断を誤ります。
商売は負けてはいけない。
ライバルよりお客様を守り、ライバルよりお客様を奪うしかありません。
そのために利益のしくみを経営者がしっかりと勉強しておかないと会社はつぶれます。
また財務体質の差も競争には大きく影響します。
支払手形なし、借入金なしで多くのお金を持っている会社と借金体質の会社では価格戦略も違ってきます。
借入金は利益の前倒しですから、借入金を返済するために利益をださなければならないわけです。
借入金の返済は税引後ですから、税金を含んだ利益を出さなければなりません。
当然販売価格を高めに設定しないと多くの利益を出すことはできません。
それでもお金は残りません。
ところが借金がないと利益ゼロでも減価償却分お金が残りますから、価格を安くしてもよいわけです。
競争に負けません。
そして、借金がなくてお金を十分に持っていれば、3~5年みんなが赤字でつぶれていっても自分だけは生き残れます。
中小企業はつぶれないことが大事
中小企業は、自己資本比率50%を目標にしましょう。
支払手形なしで借入金を少なくするために貸借対照表の左側のお金の運用に注目し、税金を払わない方法で、財務体質を改善すべきです。
P/L中心の計画は財務のムダ。ムリを生じさせます。
B/S中心の改善を長期的に行ないながら、利益計画を立てるべきです。
最後に商売に負けないコツは、労働時間です。
経営者の労働時間が長い会社は競争に勝ちます。
ある若手の経営者は月曜日~金曜日までは社長業をやって、土、日は店舗に立っているそうです。
経営者の熱意のバロメーターが労働時間だと思っています。
労働時間のランチェスター法則があります。
中小企業はつぶれないことが大事です。
そのために利益の出し方、財務体質、経営者の姿勢、この3つがよくないと会社はつぶれます。
古田圡 満