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中小企業経営者がやるべき12の仕事

中小企業経営者がやるべき12の仕事

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会社の経営者となったらまず何からやるべきなのか。 ほとんどの経営者が教わることなく社長としての仕事をスタートさせます。そして、ほとんどの新米経営者がなかなか成果を出せず、「経営者が本来やるべき仕事とは一体何なのか」という悩みにぶつかります。

そして、我々はその悩みの本質が何なのかがわかりました。

それは多くの場合、「何をすれば良いのかわからない」のではなく、
成果を出すために「何から手をつけるのが正解なのかわからない」ということです。
例えば、新米経営者が就任して真っ先に、下記のような仕事に取り組むのは間違っています。

一見するとどれも大企業を作り上げた創業者が推奨するような、正しい考え方のように見えます。これらはすべて大事です。しかし、これは中小企業経営者が最初に取り組むべきことではありません。優先順位が違うということです。

新米経営者は成功者の本を読み、経営者向けセミナーに一生懸命通ってこれらを真似しようとしますが、すぐに挫折し、一人悩む姿を私たちは多く見てきました。
大企業のように出来上がった組織で、かつ、最初から優秀な人材が揃った会社のやり方を真似しても中小企業ではうまくいきません。また、創業者であれば自ら悪戦苦闘しながら1つずつクリアしていき、時間をかけて会社を成長させ実力をつけていきますが、最初から社員や顧客を引き継ぐ後継者にはそんな猶予はありません。引き継いだ今日、この日から間違いのない順番での舵取りが求められます。

我々、古田土会計グループは現在3,700社以上の顧問先を持ち、創業者の古田土満は、40年間、3,000社以上の中小企業経営者から相談を受けてきました。そして、のべ6,000人以上の同業経営者にも経営者としてあるべき姿を指導し、「いつかはこんな会社を作りたい」と尊敬を集めています。

我々はその経験と、悩み苦しむ後継経営者からのヒアリングを元に、「中小企業経営者がやるべき仕事」を分解し、優先順位を体系化しました。

中小企業経営者になったその日から、具体的に何から手を付ければよいのかを次の3つのフェーズに分けて説明します。

1.    社員を安心させる段階
2.    具体的に落とし込み実践する段階
3.    組織の環境を整える段階

大企業と中小企業では優先順位が違います。各フェーズの順番は、あなたがこれから経営者として実行すべき仕事の優先順位になります。

1.経営者としての仕事に取り組むその前に

具体的な経営者の仕事に入る前に、新米経営者であるあなたは、下準備として以下の2つから実践しましょう。この2つが後継経営者になって最も優先すべき項目です。

1.1    先代への敬意を表明せよ

社長になって社員に最初に伝えるべきは、あなたの意気込みや未来の展望ではなく、「先代への敬意」です。社員は不安です。新社長になった途端、先代とは違うやり方で会社を大きく変えてしまうのではないかと不安に思っています。いきなり新しい方針や戦略を打ち出さないでください。あなた自身が、自分を新社長に選んでくれた先代社長にまずは敬意を示すことによって、全社員が「会社は無事に引き継がれる」ということを実感でき、そして安心できるのです。多くの社員は就任早々、劇的な方向転換を望んでいません。
社員に伝えるべき言葉は、

まずは社員を安心させること。新社長として自分の色を出していくのはその後です。

1.2    尊敬される社長を演じよ

経営者が社員から尊敬されていなければ、短期的にはうまくいっても、長期的には会社運営につまずきます。これからは演技でも良いので尊敬される社長を演じてください。あなたは全社員投票により満場一致で社長に選ばれたわけではありません。当然、心情的にあなたが社長になったことを受け入れていない社員もいるでしょう。
演じるといっても最初から聖人君子のような振る舞いは必要ありません。まずは毎日継続できる身近な取り組みの中から行動していきましょう。
具体的には次のようなことをおすすめします。

①    朝一番に出社し、出社してくる社員を笑顔で迎える
②    全社員に対して、自分から名前を呼び、一言添えて毎日挨拶をする
③    全員参加の朝礼を行い、毎日全社員と顔を合わせる時間を作る
④    社内清掃、社外清掃を率先して実践する後ろ姿を見せる

これは、古田土会計グループの創業者である古田土満が、40年間実践してきた項目です。
古田土会計グループは360人以上の社員がいますが、古田土満のことを尊敬していない社員はただの1人もいないでしょう。これは間違いない事実です。いろいろな理由でやむなく辞めていく社員でさえも「古田土所長のことはこれからも尊敬し続ける」と皆が口をそろえます。
それは、これらの行動を愚直に、そして誰よりも継続して実践しているからにほかなりません。この積み重ねで全社員から信頼され、尊敬されているのです。

尊敬は一朝一夕に築かれるものではありません。時間がかかります。ですから、誰の目から見てもわかりやすくできることから地道に、そして早くスタートすることが大切です。ぜひ今日から始めましょう。

2.経営者になったらまずやるべき4つの仕事(社員を安心させよ)

あなたは長期的には尊敬される経営者を目指していく必要がありますが、尊敬される以前にあなたはまだ社員から信頼もされていないと考えましょう。社員からの信頼を勝ち取るためには、社員とのコミュニケーションを深めるだけでは不十分です。次の4つを実行してください。

2.1 トップセールスで実績を示せ

社長として認められるにはやはり「実績」がなければ人はついてきません。誰の目から見てもわかりやすい「実績」とは、売上を取ってくることです。どんなに理想的な使命感を掲げても、商品・サービスが売れなければ会社に未来はないのです。売上を作れる人が会社の未来を創っているのです。「販売なくして事業なし」です。
社長自らが人任せにせず、自ら営業をする必要性は他にもあります。

①    大企業など「社格」が上であれば、少なくとも「役職の格」が高いトップ営業が効果的である。
②    価格決定権があり、商品熟知度が高いトップが売ることで得意先の信頼度が上がる。
③    中小企業は商品・サービスに知名度がない。「社長の評判」を自ら上げることが会社のブランディングになる。

トップ営業は社長だけができる特権です。社長が前面に立って営業をする説得力は一般社員では到底及びません。古田土会計グループの創業者である古田土満は70歳を過ぎても誰よりも多くお客様を担当し、土日もお客様対応をして、売上を作り続けています。
もちろん、会社を成長させる段階では、「社長に依存しない仕組みづくり」は必要です。しかし、社長になったばかりのあなたは、自らわかりやすい結果を出し、社員に行動する後ろ姿を見せることで会社をまとめ、引っ張る必要があるのです。中小企業経営者は社長室に閉じこもって指示をするだけの「穴熊社長」には絶対なってはいけないのです。

2.2 資金繰りを把握せよ

資金繰りが危うく、それも経営者がその実態を把握していないような会社では、当然、社員は安心して働けません。社員と経営者の大きな違いの1つに、資金に対する責任があります。あなたは資金豊富な大企業の経営者ではありません。会社はお金が無くなれば倒産です。会社の預金が今いくらあって、そしていつまで持つのか、最初から経理担当者任せにせず、自らその現状を知ってください。中小企業では資金調達をするにも多くの場合、社長の個人保証が必要です。今日から金融機関の借入を行う際にはあなたが個人保証のハンコをつくのです。ですからこの最も大事な「資金繰り」を理解しないまま経理担当者に丸投げするほど危険なことはありません。経理担当者に任せるのはあくまで作業であり、資金の調達や使い方を決定するのはあなたです。
資金繰りにおいて最初に押さえるべき気ポイントは5つです。

①    会社のお金は月内でいつ一番お金が減るのか
②    売上の入金はいつ、どこから、いくら入るサイクルなのか
③    仕入先・外注先への支払いサイクル、支払額はいくらなのか
④    固定的に支出する経費はいくらあるのか
⑤    借入の返済額は毎月いくらあるのか

上記の内容を反映した「資金繰り表」を経理担当者に作成させ、それをチェックすることから始めてください。
半年後の預金残高がいくらになるのか
今期はどのタイミングで資金調達が必要になるのか、自分が理解し適切に指示ができるようになるまで、経理担当者や顧問税理士に相談しましょう。

2.3 会社の使命・ミッションを示せ

次に会社の根本的な考え方を社員に示してください。会社の使命、ミッションと呼ばれるものです。
社長交代直後は、「会社は急転換しないんだ」という安心感を社員に与えることは大事ですが、社員の次の興味は、「今後会社をどうしていくつもりなのか、その結果、自分の未来はどうなるか」です。社員はあなたが提示する会社の方向性により、今後ついていくのにふさわしい存在なのかの品定めをしています。

すでに会社にはしっかりとした使命感やミッションが定まっており、全社員に浸透している会社であれば、目新しいものを打ち出す必要はありません。「先代を踏襲する」と強く打ち出すことも社員を安心させるためには大事でしょう。しかし、社長室の壁に貼ってあるお題目だけになっていたり、意味もわからず社員に唱和させているだけという中小企業も多くあります。

「マネジメントの父」と呼ばれたピーター F. ドラッカーは著書「ドラッカー5つの質問」の中で経営者は何を考えればいいのか、何を行なえば良いのかの指針として次の5つの問いかけをしています。

第1の質問  われわれの使命は何か
第2の質問  われわれの顧客は誰か
第3の質問  顧客にとっての価値は何か
第4の質問  われわれの成果は何か
第5の質問  われわれの計画は何か

会社は近い価値観の人間が集まり、その力を合わせることで成果を発揮する場です。ですから、ドラッカーが1つ目の問いとして挙げている通り、何のために事業をするのかという「使命」を社員に明示する必要があります。使命とは、言い換えれば「わが社が社会で実現したいこと」を言い表すことです。
古田土会計グループの使命感は、「日本中の中小企業を元気にし、その社員と家族を幸せにする」です。短い文章でわかりやすく伝えることが大切です。

■有名企業の使命・ミッションの例

以下は間違った使命・ミッションの例です。
・売上高100億円を目指す
・世界シェアNO.1になる
・過去最高益を出し続ける

示すべきは、わが社は「何をもって社会に役に立つのか」、「社会は自社に何を求めているか」です。使命・ミッションが定まり会社の存在意義を社員に示せれば、経営者は判断の指針ができ、次にやるべきことが見えてきます。

2.4 戦略を決定せよ(適切な資源配分・やらないことを決める)

会社を持続的に成長させるためには、社員が進むべきベクトルをそろえ、正しい資源配分により成果を出す必要があります。会社の長期的な大きな方向性や優先順位が「戦略」です。経営者は「戦略」を決定してください。

「戦略の間違いは戦術ではカバーできない」と言われます。経営者が「戦略」と「戦術」を混同し、戦術ばかりに集中していると、いくら社員が現場でがんばっても成果は出ません。経営者は「戦略」と「戦術」の違いを理解してください。

「戦術」は「戦略」の下位概念です。例えば、「商品を売る」ことを考える場合、戦略・戦術で分けると以下のような違いになります。

どの地域で、どの顧客層をターゲットに、どれだけ資金を使って、どの商品を投入するのか

 

    1. ■戦略の範囲

どの地域で、どの顧客層をターゲットに、どれだけ資金を使って、どの商品を投入するのか

  1. ■戦術の範囲

現場ではどのような営業手法で、どのようなホームページを作って、どのような販促物で、どのようなキャンペーンをするのか

戦略は「何をやるか」を決めることだけではなく、「何をやらないのか」、「何を捨てるか」を決定することも大事な考え方になります。「在庫を持つビジネスはやらない」「医療業界は狙わない」「製品寿命が短い製品は扱わない」「ファミリー層はターゲットにしない」など、やらないこと決めることで方向性が明確になります。戦略は経営者しか決定できません。社員が迷走しないように、今期わが社はどのような戦略で市場に打って出るのか、どうライバルと戦うのか、大きな方向性を示す「戦略」を経営者として決定してください。

3.経営営者が次にやるべき4つの仕事(具体的に落とし込み実行せよ)

社員を安心させ、信頼を得る努力を続けながら次のフェーズに進みます。
次の段階では全社の力を合わせるために具体的な落とし込み方を解説していきます。

3.1 中期5か年計画を作成せよ

使命、戦略で方向性を示したら、次に具体的にどの事業をいつまでにどのくらい売上を上げるか、利益を出すのかを、5か年の中期計画を作ってください。戦略を掲げるだけではまだ絵に描いた餅です。しっかりと数字に落とし込む必要があります。
社員は目の前の仕事を見ていますが、経営者は将来を見て物事を決定します。つまり年単位で判断するのが経営者の視点です。うちの業種は先が見通せないから計画を作っても意味がないなどといっている経営者は、経営者失格です。それは「計画」を「予想」だと考えている大きな勘違いです。計画は経営者の意思です。
この中期5か年計画ではただ売上目標を決める作業ではありません。少なくとも次の7つの構成を計画の項目として取り入れてください。

古田土会計グループでは30年以上、下記のような中期事業計画を作成し、実践してきました。

社員の賃金を上げながら利益を確保し、さらにキャッシュを増やそうと計画すると、多くの会社で既存事業の強化だけでは厳しいことに気づきます。
今の延長線上に未来がないことが理解できると、経営者の行動が変わります。新事業や新商品の開発の必要性や、そのための研究開発や採用の重要性も見えてきます。5年単位で計画するからこそ未来に向けての手が打てるようになるのです。

3.2 短期利益計画を作成せよ

中期5か年計画を作成したら、1年単位の「短期利益計画」に落とし込みます。
全社員に対しては1年単位でしっかりと予実管理をすることで、会社全体で成果が出せるようになります。
ここでいう短期利益計画は①利益計画と②販売計画の2つあります。
順番としては利益計画を作って、そこで計画した売上高をさらにどの商品で稼ぐのか、どの得意先で稼ぐのかという販売計画を作成します。

キャッシュを起点にし、そのキャッシュを維持するために、または増やすためにはいくらの利益が必要か、その利益を確保するためにはいくらの売上高が必要かという逆算の計画が、原則の利益計画の立て方になります。
利益は社員とその家族を守るためのコストであり、事業存続費です。稼げそうな売上見通しから計画を作るのではなく、会社を守るために稼がなければいけない利益から計画を積み上げるのです。

3.3 マーケティング戦略を策定し新商品・新サービスに取り組め

商品に大きな差別化がされていない中小企業では、営業活動をいくら強化してもいずれライバルが現れ、価格競争に巻き込まれ、やがて利益が出なくなっていきます。そこであなたは「マーケティング」と「新商品・新サービス」の開発を考えなければいけません。

マーケティングの概念は広いですが、簡単に言うと「売れる仕組みを構築すること」です。
一般的に以下のような活動のことを指します。

・顧客のニーズの調査・分析
・ターゲットの明確化
・ブランディング
・価格設計
・プロモーション
・顧客とのコミュニケーション(メルマガ・SNS)

マーケティングとは顧客に対し「いかに売り込むか」を考えることではありません。顧客のニーズを十分に理解することにより、そのニーズを満たすことができる価値を創造し、「売り込みをしなくても自然に売れてしまう状態を作ること」こそ、マーケティングの理想です。
ドラッカーはマーケティングについて、下記のように言っています。

中小企業では、とにかく作った商品を頑張って売ることだけしか考えていない会社が少なくありません。しかし、営業マンさえ十分に確保できていない中小企業が、マーケティングの専門部署を作って活動をすることは難しいでしょう。だからこそ、現場に出て、顧客の声を誰よりも聞いている経営者自らがマーケティングの業務を担う必要があるのです。

そして、既存商品が売れる仕組みができたとしても、時代の変化にあわせて商品・サービスを変えていかなければ、いずれ陳腐化し顧客から選ばれなくなります。そのため、次の「新商品・新サービス」を常に経営者が考え続けることが大切です。多額の研究開発費をかけられない中小企業は、経営者が現場に出て、顧客が望む声を商品・サービスに反映させ続けることこそが最強のマーケティングであり、商品開発です。答えは社内ではなく常にお客様のところにあるのです。

3.4 財務体質を改善せよ

商品が売れ、利益が出ても、財務体質が良くなければ会社のお金は増えません。売上や利益は「損益計算書(P/L)」の話であり、資金、キャッシュ、財務とは「貸借対照表(B/S)」の話です。この違いを理解してください。経営者は会社を倒産させないためにキャッシュを維持し、増やしていく責任があります。「利益」よりも「キャッシュ」の方が大事です。
具体的に財務体質を良くするとは、お金や借入の状況を示す「貸借対照表(B/S)」を良くすることです。そして、目指すべき「良い貸借対照表」のゴールは、借入金残高よりも現預金残高が多くなった状態を作ることです。

財務体質が悪い会社では以下のような理由から売上が増えてもキャッシュが増えません。
一例を挙げてみます。

①    得意先からの入金条件が長く、売上が増えてもなかなかお金が入らない
②    仕入先への支払条件が短く、仕入の支払いが先行してお金が出ていく
③    売上が増えているので確保すべき在庫が増える
④    売上が増えるため設備投資も必要になる
⑤    在庫や設備を賄うためにさらに借入金が増える
⑥    借入返済額も増えるため、月々の支出が増える

このようなサイクルの会社は利益が出ていてもお金が増えません。稼いだ利益は貸借対照表(B/S)の売掛金や棚卸資産、設備に寝てしまっているのです。利益が出てもお金はいつも苦しい「黒字倒産」という状態に近づいているということです。
その他にも、利益が出てもお金が寝てしまう要因には以下があります。

・金融機関から頼まれるまま定期預金にお金を積んでいる
・貸付金があり回収できていない
・立替金・仮払金が頻繁に発生し解消されていない
・仕入のための前払金で先にお金が出ている
・本業とは関係ない不動産を所有している
・敷金・保証金でお金が長く固定化されている
・無駄な保険積立金があり見直しがされていない

これらの状態はすべて貸借対照表(B/S)に表示されている内容です。
売上が増えたらそのままお金が増えるのが理想です。そのためには、経営者が貸借対照表(B/S)の科目を毎月常にチェックして、お金が寝ていないか、改善できる余地はないかを考えるようにしてください。

4.経営者が次の次にやるべき4つの仕事(組織を整えよ)

経営者が自ら動くことは大切ですが、孤軍奮闘するだけでは安定的に事業を成長させることはできません。次の段階では経営者に頼らなくても会社が回るように組織化・仕組化を考えていきます。

 

4.1 事業をパッケージ化せよ

会社を大きく成長させるためには、すべてを経営者がこなすのではなく、事業を分解し、事業をパッケージ化していく必要があります。
スモールビジネス向け経営コンサルタントの権威である有名なマイケルE.ガーバーは、その著書の中で、経営者が持つ人格を3つに分類しています。

1)職人・・・目の前の作業だけに没頭する人
2)マネジャー・・・管理が得意な現実主義者
3)起業家・・・将来を見据えたビジョンを描く人

ガーバーによると、多くの成長できない経営者は「起業家」の人格を持っておらず、「職人」にとどまっていると指摘しています。経営者が朝から晩まで職人としての仕事だけをやっていては、自分でできる範囲以上にはビジネスを拡大できません。
自社の事業を分解し、各工程をシステム化し、事業自体を売却できるようなパッケージにしていくこと、これらの仕組みを考えるのが「起業家」の視点です。

事業のパッケージ化は、経営者がやっている作業を「フランチャイズビジネスにする」と想定すると切り出していく要素がイメージしやすくなります。
フランチャイズビジネスには以下の要素が含まれています。

社長不在でも会社が回るビジネスの仕組みをつくり、自分と同じクオリティでお客様を喜ばせることができる教育やツール、システムをつくることに取り組んでください。

4.2 社員教育を徹底せよ

事業をパッケージ化しても、同時に実行する社員を育てなければ機能しません。
社員教育には大きく分けて、「技術教育」と「人間性教育」があります。

・「技術教育」:商品知識・製造方法・販売方法等を学ぶ教育
・「人間性教育」:自社の使命感、経営理念を浸透させ、何のために働くのか、社会に役立つ人材にする教育

技術教育は外部から積極的に取り入れて真似をする必要がありますが、人間性教育は中小企業では経営者自らが行ってください。人での差別化は長期的な視点では戦略と言えます。

人間性教育は座学で説明をするだけではありません。皆で同じ時間を共有し、同じ作業を繰り返すことで良い習慣形成を促すことも教育です。良い習慣が人間性を高め、会社全体としての社格を高めることができるのです。
例えば、古田土会計グループで実践してきた人間性教育には下記があります。

①    毎日全社員が1人ずつ、握手をして名前を呼んで挨拶をする
②    社内だけではなく、会社の周りを全社員で掃除する
③    全社員による朝礼を行い、話す訓練や聞く訓練を行う

これらの作業はただ強制するのではなく、それぞれにやる目的、意味を定義し共有することも大切です。

やる目的と意味を知り、毎日実践することで人間的な成長につながり、お客様に喜ばれたり、感謝されることにつながります。売上をあげるのに1年、利益を出すのに3年、人を育てるのに10年と言われます。教育により社員力の差別化ができれば、同業者は5年~10年は追いつけません。

4.3 評価制度・賃金規定を検討せよ

小規模企業では、経営者1人が「感覚的に」社員を評価するケースが多いですが、評価制度の形を整えることは、次のようなメリットが上げられます。

・社員の目標意識が高まる
・社員の技術・知識レベルが可視化される
・社員のモチベーションが上がり離職率の低下につながる
・人事評価にかかる時間を短縮できる

評価制度や賃金規定は様々な方法があり、どの手法が正解なのかは誰にもわかりません。これらは毎年見直し続けるという気持ちで取り組むことが必要です。社員を公平に評価するとはそれほど難しいものなのです。ここで大事なのは評価の手法ではありません。評価を通じてその社員に何が足りなかったのか、どうすれば次は評価が上がるのか、それをしっかりと本人にフィードバックをすることの方が大切です。

また、評価制度を整えるだけではなく、経営者が直接声をかけてあげることも社員にとっては立派な評価です。売上には貢献していないけど、見えないところでひそかにバックアップしてくれていたような社員にも、ぜひ経営者からねぎらいの声をかけ、時には表彰をするなども社員にとってはうれしい評価です。経営者の言葉にはそれだけの重みがあります。
制度を作ることが目的にならないように心がけてください。

4.4  後継者候補を育てよ

最後にあなたは、次の後継者にいかにバトンタッチをするかも考えていく必要があります。後継者として本当に大切なことは、あなたが経営者としてどんな業績を上げるかではなく、いかに会社を継続させるかです。
突然の事業承継にならないように、できれば経験を積んだあなたが並走しながら引き継げるように計画しましょう。並走期間は少なくとも3~5年間はとることをおすすめします。
そのためにまず、いつまでに事業承継をするかを決定してください。そして、次の後継者には何が必須条件なのか書き出してみてください。

・会社の理念を実践できるか
・事業の実務経験
・リーダーシップ
・営業スキル
・商品開発能力
・コミュニケーション能力

何を重視するかを定め、そして、不足すると思えばそこを重点的に教育していきます。
後継者候補が見つかれば、自分の年齢と後継者候補の年齢を記載した事業承継計画を作成します。自分が60歳の時に後継者が35歳、そこから5年間かけて様々な経験を積ませ、自分が65歳、後継者が40歳になった時に完全に代表権を譲る、その時の自社株の割合はこのような構成にするといったような計画です。

古田土会計グループは以下のスケジュールで事業承継をしてきました。

後継者教育とは、これまで説明してきた経営者の仕事、3つのフェーズ12項目を実行できる人材に育てていくということです。まずは自分がこの12項目を実践し、それを少しずつ後継者候補にも教え、中小企業経営者の仕事、優先順位を伝えていってください。

5.まとめ

中小企業経営者がやるべき仕事を、順番をつけて説明してきました。多岐に渡りますのでぜひこの順番を意識して取り組んでください。
中小企業はすべて経営者で決まります。そして、どんな仕事をするかよりも、もっと大事なのは、「経営者の姿勢」です。書籍に取り上げられるような優良な大企業のように、指示するだけで社員が一斉に動いてくれるということは中小企業ではありません。経営者自身がドロ臭く、だれよりも先頭に立って動き続けること、「進め」ではなく「続け」と先頭に立って行動することこそが、社員からもお客様からも信頼を得られる、経営者として一番大事な心構えなのです。

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