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心理的安全性とは?罠に陥らずに心理的安全性を高めるポイントを解説

心理的安全性とは?罠に陥らずに心理的安全性を高めるポイントを解説

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心理的安全性(Psychological Safety)とは、「自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態」のことを指します。特に、職場やチームの中で「失敗をしても責められない」「率直に意見を言っても否定されない」と感じられる環境のことを指します。

心理的安全性という言葉を耳にするようになって久しいですが、会社・上司の中にはこちらを意識しすぎてしまった結果、言いたい放題になり逆にチームがまとまらず混乱してしまうというケースもあります。=心理的安全性の罠

では上手くまとまり、成果が出ているチーム、組織とそうではないチーム・組織とでは何が違うのでしょうか。

今回は、心理的安全性について改めて整理するとともに、心理的安全性を高めるためのポイントや注意点について、成功循環モデルや自己進化型組織といった組織論も交えながら解説していきます。

.心理的安全性とは

心理的安全性とは、

「自分の考えや意見などを組織のメンバーの誰とでも率直に言い合える状態」

であり、この概念は、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって提唱されました。

同時に、心理的安全性が高いチームほどパフォーマンスが向上することが示されています。

特に、Googleが2015年に行った「プロジェクト・アリストテレス」という研究では、成功するチームの共通点は「心理的安全性の高さ」であることが明らかになり、大きな注目を集めました。

更に言うと、エドモンドソン教授は

「対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境であること。それが心理的安全性」

とも述べており、「仲良しチーム」「ぬるいチーム」とは違うというところに注意してください。

率直に意見を言い合える場を作ることに焦点を当てることがポイントです。

更に、「心理的安全性」は単にお互いに言いたいことを言うという個人のレベルの話ではなく、ミッション・ビジョン・バリューに則った会社・組織をつくるため、また持続的な成長を実現するための組織作りの過程で必要な要素であるという認識をもつことも重要な視点となります。

詳しくは6章で解説しますが、例えば、横浜DeNAベイスターズが組織文化の変革を通じてチームを強化し、2024年に26年ぶりの日本シリーズ優勝を達成しましたが、組織としては短期的な戦力強化ではなく、長期的な組織進化を目指し、「多様性」「心理的安全性」といったビジネスの概念をプロ野球の世界に導入しました。

勝利にこだわるプロ野球でも心理的安全性?ベイスターズの進化を生み出した、自己変革型の組織開発とは
https://fullswing.dena.com/archives/100152/

2.心理的安全性の特徴

心理的安全性が高い組織・チームの特徴は主に4点です。

冒頭に記載した「自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態」の具体的なイメージを持っていただくと分かりやすいと思います。

①発言しやすい
→ 間違いや疑問があっても自由に発言できる状態・雰囲気です。
「ここで発言したら場違いかな、、、」「こういうことを言ったら怒られるのでは、、、」といった状態が極力ない状態です。
一旦発言されたことに対してはまずそれを受け入れる、ということが大切になってきます。

②否定されない
→ 批判や攻撃を受ける心配がないという状態です。
ただし、「否定」と「間違いを指摘される」、「注意・指導を受ける」ことは異なりますので注意してください。
また、その際にも①で記載した通り、一旦受け入れる、という姿勢が大切です。

③失敗が許容される
→ 失敗を学びの機会として受け入れられる状態です。
「1回失敗したら終わり、、、」という雰囲気があると、隠し事や他人を蹴落としてでも、という思考に陥ってしまいやすくなります。

④対人関係の不安が少ない
→ 上司や同僚との関係に過度な緊張がない状態です。
指揮命令系統を考えると上司との適度な緊張感は必要ですが、過度になると③のように隠し事や本音を話してもらえなくなります。

3.心理的安全性の効果と成功循環モデル

心理的安全性が確保されていると、以下のような良い影響がありますが、ここでのポイントです。

「トップダウン」の場合は、その経営者や上司の器以上に成長することは難しくなり、万一の際には成長が鈍化することや最悪の場合倒産ということもあり得ます。
企業が永続的に成長していくためには「トップダウン」から脱却するステージも必要になってきます。

その際に心理的安全性が確保されていた方が、様々なアイデアが生まれ、イノベーションが起こりやすくなるということです。
※創業時などトップダウンでうまく回っているうちはむしろ心理的安全性を意識しすぎずトップダウンを貫いた方がよいケースもあります。

✅ チームの生産性向上
→メンバーから積極的にアイデアが出る可能性が高まり、結果的に生産性の向上に寄与する確率が高くなります。

✅ 創造性・イノベーションの促進
→新しい挑戦がしやすい雰囲気・環境になることで自由闊達で様々な角度からの意見が出やすくなりイノベーションにつながりやすくなります。

✅ 離職率の低下
→働きやすい環境が整うことで離職率の低下が期待できます。

✅ メンタルヘルスの向上
→ストレスが少なくなることで、メンタルヘルスの向上が期待できます。

また、古田土会計の経営計画書にも以下のようなページがあります。

こちらはダニエル・キム氏によって提唱された「成功循環モデル」というものになりますが、
心理的安全性はこの中で「関係の質」、すなわち組織が良い方向に向かっていくために一番初めに高める必要がある質の重要な要素を担っています。

心理的安全性が確保され、「関係の質」が高まると「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」、という順番に変化していくという意味で、1章で述べたように「持続的な成長を実現するための組織作りの過程で必要な要素」ということがここでも理解できるのではないかと思います。

4.心理的安全性が低いとどうなる?

それでは逆に、心理的安全性が低いとどのような影響があるでしょうか?
2章で触れた部分や3章の逆をイメージしていただくと分かりやすいと思いますが、主に3点です。
総じて、企業の成長にマイナスになる可能性が高まるということは想像に難しくないと思います。

発言をためらう
→ アイデアや問題点が共有されず、問題がさらに大きくなってしまうことや事なかれ主義になる、企業の成長が鈍化する要因となります。

ミスを隠す
→ 失敗から学ぶ機会を失い、成長の機会が限られてしまいます。そして、最悪の場合はコンプライアンス違反で世間から追放される危険性もあります。

職場のストレスが増加
→ 人間関係が悪化し、離職につながる可能性が高まります。

5.心理的安全性を高める方法

5.1.一般的な高め方

では、心理的安全性はどのようにしたら高まるのでしょうか。

「自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態」を作り出すために1つ注目されているスキルに「傾聴」があります。

簡単に言うと、好意を示し、共感・承認しながら話を聞くということになります。

こちらも含め、主に4点の方法を紹介します。

🔹 相手の意見を否定せず、受け止める
→ 「それも一つの考え方だね」と共感することです。

🔹 リーダーが率先して失敗を認める
→ 「自分も間違える」と伝える。部下からすると「上司も間違えることもあるんだな」と理解することはとても安心します。
逆に、居酒屋等で武勇伝ばかり語ると逆効果になる可能性もあるので注意しましょう。

🔹 フィードバックを建設的に行う
→ 攻撃的ではなく、改善の視点で話す

🔹 小さな成功体験を積み重ねる
→ 安心して発言できる雰囲気をつくる

5.2.古田土会計の事例

5.1をより具体的にイメージしていただくために古田土会計グループで実施していること(仕組)を参考までに2つほどご紹介します。

🔹 面談(1on1)
誰のため・何のための面談か等目的を明確化するとともに、上司は面談の方法の研修(質問型コミュニケーション)を受講して聴く・質問する・伝える等面談のスキルアップを図っています。
ただ単に「聞く」、「聴く」だけではなく「伝えるべきことは伝える」ということも大切です。

🔹 福利厚生の一環でのレクリエーションでコミュニケーションの促進を図ります。

     縦のつながりだけではなく横のつながりも構築することによってコミュニケーションがとりやす

い社風を醸成しています。

6.心理的安全性を高めるために必要なこと

会社や組織において心理的安全性を高めるための前提として、「ミッション・ビジョン」「経営理念」といった目的やゴールが必要となります。

その目的・ゴールに向かう過程において様々なものの見方があり、意見があると思います。
それらを引き出す、受容するために心理的安全性が必要になるということです。

例えば、山登りをイメージしてみてください。

「頂上」という、という目的・ゴールに向かうためのルートやスケジュールは1つではありません。
天候や登山者のレベル、人数などによって様々な選択肢があると思います。

天候が同じであったとしても複数人のパーティーで上る場合には、

Aさんはaというルートで1日で登れると思うから早く登ろう!
Bさんはbというルートで2日かけて登る方がよいのでは?
Cさんはcというルートで様子を見ながら登ろう

という三者三様の意見がでることもありえます。そしてこの意見の中からベストな選択をリーダーが中心となって決める、多数決で決めるということになります。

もちろんリーダーの独断で決めることもありですし、そうしなければならない状況もあります。
一方で、リーダーであってももしかしたら見落としていることもある、間違っている場合もある、という前提で考えてみると、仲間から意見をもらうということも大切になってきます。

その際に、意見が言えるような場にするために心理的安全性が必要ということです。

繰り返しになりますが、ミッションや目標に則った上で色々な価値観を受容するために心理的安全性が大切になってくるということになります。この順番を間違えないようにすることが重要です。

逆にミッション・ビジョンや目標がない状態で心理的安全性ばかり高めて多様性を受容してしまうと企業はあらぬ方向へ行ってしまう可能性もあります。
そうならないために一定の基準やモノサシ(ミッションや目標)が必要となります。

そのための必要な道具が「経営計画書」でもありますのでこちらの記事も是非参考にしてみてください。

・毎年1,000社超の企業に指導してきた経営計画書の書き方
https://www.kodato.com/blog/p11894/

・中小企業が経営計画書を作成する20のメリット
https://blog.kodato.com/management-plan/merit

・ミッション(使命感)とは? あなたのミッションを発見する33の質問
https://blog.kodato.com/mission-33-question

・ビジョンとは? ビジョンを導き出すための質問30
https://blog.kodato.com/how-to-vision

・バリューとは? バリューを導き出すための質問24
https://blog.kodato.com/value

・経営理念とは?MVV・クレドなどの関連用語との違いを事例を交えて解説
https://blog.kodato.com/management-philosophy

7.まとめ

以上、今回は心理的安全性について解説してきました。
心理的安全性は、職場やチームでのコミュニケーションを円滑にし、生産性や創造性を向上させる重要な要素であることは間違いありませんが、捉え方や順番を間違えると思わぬ方向へ向かってしまうというリスクがあることもお分かりいただけたかと思います。
組織と個人が成長するためのキードライバーとなりますので是非うまく取り入れてください。

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