マーケティング戦略とは?中小企業のためのはじめてはじめるマーケティング戦略入門!立案方法や成功事例・使いやすいフレームワークをやさしく解説!

経営資源の少ない中小企業にとって、マーケティング戦略を立てることはとても重要です。マーケティング戦略を立てて実行することで、社長だけが忙しい状況から解放され、普通の営業マンでも成約できる仕組みをつくることができるようになります。
ただ、世の中にあるものは専門的な言葉が多く、結局何をしていいのかがわからないケースが多いと思います。
このブログでは、読んだ瞬間から始められる、実践的なマーケティング戦略の立て方について解説します。
1. マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略とは、会社の業績を左右するとても重要な活動の一つです。マーケティング戦略を正しく立案し実行することで、会社は効率的に売上利益を生み出せるようになります。
この章では大前提となる「マーケティング戦略」について解説いたします。
1.1 マーケティング戦略の定義とは?他の戦略との違いについて
マーケティング戦略を効果的なものにするためにはマーケティング戦略の位置づけを理解していただくことが必要になります。マーケティング戦略の位置づけは下記図を見ていただくのがわかりやすいかと思います。
マーケティング戦略は、使命感・理念を実現するための事業戦略を支える一つの機能としての戦略という位置づけになります。そして、マーケティング戦略を実現するために、youtube戦略やSNSマーケティング戦略などの個別の戦略を策定します。マーケティング戦略と聞くと、SNSマーケティング戦略やYoutubeマーケティング戦略・SEOマーケティング戦略など、個別の手法をイメージする方もいるかと思いますが、これらはあくまでマーケティング戦略の一機能でしかないということは誤解されないでいただけたらと思います。
1.2 マーケティング戦略とはシナリオを作ること
マーケティング戦略を構築するとは、一言でいうとマーケティングを実行するとためのシナリオを設計することです。戦略(シナリオ)があることによって、マーケティング施策同士が線となり、有機的につながり、施策同士がシナジーを生み出し、マーケティングの成果を最大化することができるようになります。
1.3 マーケティング戦略を立てるべき理由
マーケティング戦略が必要な理由は、失敗確率をさげるためです。中小企業では、大成功を納めることよりも大失敗をさけることが重要だからです。中小企業は経営資源に限りがあります。一回の大失敗が会社存続の危機につながってしまうことも少なくありません。
世の中にはマーケティング戦略を立てていなくとも、YoutubeやSEOなど施策が当たって売上が伸びるケースはあります。しかし、そこに絶対は存在しません。現にYoutubeをやっても伸びている人とそうでない人がしているのがその証拠です。絶対が存在しない以上、マーケティング戦略を構築し失敗確率をさげることは、安定した経営を実現する上で必要不可欠と言えるでしょう。
1.4 マーケティング戦略は誰が立てるのか
中小企業において、マーケティング戦略を立てるのは社長です。会社の規模が100人を超えてきたら、その構築をCMO(最高マーケティング責任者)を任命し、構築をお願いすることもできますが、ある程度の規模になるまでは社長が立てるほうが、効果的な戦略を構築することができます。
1.5 マーケティング戦略を立てる時期
マーケティング戦略は原則、全体戦略を立てるタイミングで一緒に立てるのが効果的です。中小企業において、経営の全体戦略は、決算月を迎える前に立てることが多いと思いますので、決算月を迎える2~3か月前くらいから全体戦略とともに構築するのが望ましいでしょう。
2. マーケティング戦略の構築は、利他がベースになる
2.1 マーケティング戦略は利他の精神が欠かせない
マーケティングとは、本質的には必要な人に必要な商品を届けるための活動です。つまりは、「相手によくなっていただきたい」という利他の精神が重要となります。
相手によくなってもらうためには、まずは相手のことを知る必要があります。ですから、マーケティング戦略は、まずは徹底して、お客様のことを把握することから始めます。
そして、お客様が具体的になったら、その方に手を差し伸べて寄り添う仕組みを作ることで必要なものとの出会いを紡ぎます。
この「寄り添う」活動を整理し、必要な人に必要な商品・サービスが届くように、利他をベースとして戦略を立てて構築する。これが本来あるべきマーケティング戦略の構築です。
2.2 売上至上主義マーケティングで戦略を構築するリスク
売上至上主義でマーケティング戦略を構築すると、心理学や行動経済学などの技術が中心となり、必要でない人に「必要だと勘違い」させ、商品を買わせるようなことが起こります。
それがSNSで「必要でもないのに買わされた」と広まってしまったら、一瞬にして会社やサービスの信用は失墜し、最悪サービス停止になることも起こります。
今の時代は、SNSで簡単に情報が拡散される時代です。また世の中の風潮として、「悪は罰する」というきれいごとがベースになってきています。売上至上主義は批判の的になりやすいため、売上が上がればいいという、自社都合でマーケティング戦略を構築することのないように気をつけていただければと思います。
3. 中小企業ならでは!マーケティング戦略の成功事例
マーケティングはお金と時間がかかるイメージが強く、中小企業では取り組めないと考える経営者も多いかと思いますが、実際そんなことはありません。
ここではマーケティング戦略を構築し、成功した事例について紹介します。
3.1 成功事例
3.1.1 アックスヤマザキ様
大阪府大阪市にある株式会社アックスヤマザキ様は、創業74年を迎えるミシンのメーカーです。ミシンメーカー市場は年々縮小している中、構築したマーケティング戦略があたり、成長著しい会社です。
アックスヤマザキ様は、マーケティング戦略において、ターゲットを「子育て中でミシン初心者のお母さん」に絞ることを選択されました。そして、70年以上ある歴史を強みに、初心者が使いやすくなるよう、無駄な機能を徹底して省いてシンプルにし、ママさんウケするようなおしゃれなデザインを取り入れ、ライバルと差別化を図ることを決定。名前も『子育てにちょうどいいミシン』として、見ただけでわかるようなネーミングを付け、ターゲットの子育て中のお母さんがよくみているインスタグラムを中心に打ち出しするというシナリオを作成されました。
その結果、楽天市場2億点以上ある中で総合ランキングのデイリー1位を獲得。完売を繰り返して、現在は注文後3ヶ月待ちの状態が続くようなヒットを生み出すことに成功されました。
▼HP:https://www.axeyamazaki.co.jp/
3.1.2 小池勝次郎商店様
埼玉県深谷市にて農業機材の卸売を行っている小池勝次郎商店様は、創業まもなく70年を迎える会社です。
農業資材の卸という一見差別化しづらい商品を扱っている中で、商品という「モノ」ではなく、価値という「コト」で差別化を図るマーケティング戦略を構築しました。その結果生まれたのが「ネギ参謀」です。農業資材を買いにお客様の中から、ネギ栽培に課題を持っている農家をターゲットにし、ネギの栽培を成功に導く「コト」をサービスにし、そのことが伝わりやすいよう「ネギ参謀」というネーミングを付けました。そして、そのことをお店でコーナーを作り認知してもらうことを中心にするというマーケティング戦略を構築しました。
ネギ栽培に特化して、サービスとしたことで全国から問い合わせがくるようになり、結果売上も過去最高を記録されているそうです。
▼HP:https://k-koikeya.co.jp/
3.1.3 ミズタニバルブ工業様
ミズタニバルブ工業様は岐阜県山県市にある、蛇口を製造する会社です。岐阜駅から車で1時間かかるところに本社がある中小企業です。
ミズタニバルブ工業様は、下請け体質の状況を脱するために、自社オリジナル商品を開発します。それが自動水栓手洗器「AWAMIST」です。
ミズタニバルブ工業様のマーケティング戦略は、ターゲットを30代でホテルライクにあこがれる女性に絞り、創業70年の強みを生かして自動水栓手洗器を制作。ホテルライクな女性が好みそうなシンプルなデザインを取り入れ、機能面とデザイン面から差別化を図り、ネーミングもターゲットに受け入れられやすいようアルファベットを用いた「AWAMIST」と命名。工務店さんが提案商品として他店と差別化できるように展示会をベースとしたマーケティング戦略を構築しました。
結果、展示会にでても名刺交換をポツポツとしかしていなった状況が、わずか1年で100社超の新規開拓を実現することに成功しています。
▼HP:https://www.mizutani-v.co.jp/
これらの事例は、当社の顧問先であり業務提携をしている株式会社ミスターマーケティング様が支援されています。
▼HP:https://www.mr-m.co.jp/
3.2 成功要因と学べるポイント
3つのマーケティング戦略を見るといくつかの共通点があることがわかります。
① お客様を絞っている
事例を見てもわかるように、3社とも「お客様が誰か」を具体的にかつ明確にしています。
一見、市場を狭めているようにも感じますが、中小企業はもともと大きな市場を相手にできるほど経営資源は潤沢にあるわけではありません。
そのため、明確に絞った方が、経営資源を効率良く活用することにつながり、結果も出やすくなるということがわかりますね。
② 他社にはない差別化ポイントを明確にしている
例えばアックスヤマザキ様であれば「簡単・シンプル」など、お客様を絞ったうえで、他社との違いを明確にしています。
差別化ポイントを明確にすることで、他社ではなく自社商品を選びやすい状況を意図的に生み出すことが出来ているように感じます。
③ 伝わりやすいよう表現が統一されている
例えば、小池勝次郎商店様であれば、「ネギ参謀」など、名前を聞いただけで何をしてくれるのかが一瞬でわかるようになっています。
このように必要としているお客様が一発で商品・サービスを認知できるように、伝わりやすい表現になっていることもマーケティング戦略構築の一つのポイントと言えそうです。
4. マーケティング戦略を構築する4つのステップ
具体的な成功事例を見てきたうえで、具体的にどうすればマーケティング戦略を構築することができるのかについて解説していきます。マーケティング戦略構築を構築するには、大きく4つのステップで構築していきます。
ステップ1 自社を整理する
ステップ2 「誰に」を明確にする
ステップ3 他社との差別化ポイントを明確にする
ステップ4 「届け方」設計する
それぞれを詳しく説明していきます。
4.1 自社を整理する
マーケティング戦略を構築する前にまずは自社の状況を整理します。自社を整理して正確な状況を把握することで、必要な人に必要なものを届けるという本質を抑えた、マーケティング戦略を構築することが可能となります。
自社を整理する観点は次の点があげられます。
① MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の確認
マーケティング戦略がMVVとずれたものになっていないかを確認するために改めて確認します。
② 強みの整理
自社の強みを整理します。強みの整理は、下記の3つの観点で整理するのがおすすめです。
・社内で感じる強み(社長の立場から、幹部の立場から、社員の立場から)
・データから示せる強み(取り扱い件数・製品の種類数・シェアなど)
・お客様が感じる強み(実際にヒアリングしてみる)
なお、上記を整理する際に「弱み」も合わせて整理するのがおすすめです。そして、弱みを強みにできるものはないかという視点で整理してみると、今まで気づかなかった強みを発見できることにつながるかもしれません。
③ 市場状況
マーケットサイズは、収益を生めるだけ十分にあるか、また、市場が成長傾向か、縮小傾向かを把握しておきます。
④ ライバルの整理
ライバルは、直接的なライバルと間接的なライバル2つの視点で整理します。
・直接的なライバル:同じようなサービスを提供している会社を指します。
・間接的なライバル:売っているものは違うが、そのサービスにより満たされる便益でライバルとなるもの。(例:ファミレスにおける、コンビニ弁当や宅配ピザなど。業態は違えど、お腹を満たすという点においては一緒)
比較する内容としては、サービス内容、金額、提供エリア、プロモーション方法の4つの視点で比較すると整理がしやすいです。
⑤ 組織体制、財務の把握、などリソースの把握
マーケティング戦略を実行するにあたっての制約条件を把握しておきます。経営資源における、人・モノ・カネ・3つの視点で考えて把握するのがおすすめです。
4.2 「誰に」を明確にする
必要なものを必要な人に届けるには、その人が誰なのかが明確でないと届けることができません。そこで、まずは必要な人は誰かを明確にしていきます。
「誰に」は次の3つの視点で明確にします。
① ターゲットは誰にするのか
ターゲットは、年齢や住所などでくくりますが、ポイントはターゲットとそうでない人が明確になっているかが重要です。例えば、美容業であればさいたま市に住む40代の女性と定義しているとすると、東京都に住む30代の女性はターゲットでないということがわかるようにするということです。
② ニーズは何か
ターゲットを絞り込んだら次はニーズの把握です。ターゲットの悩みや求めているものを把握します。また、その際に、特に把握しておきたいのが「インサイト」です。インサイトとは、隠された深層心理のことを指します。インサイトは、ターゲットが気づいてないか、考えないようにしており、インサイトを突かれると、感情や意識が大きく動き、それが商品・サービスとつながっていることで、大きな成果につなげることができるようになります。
③ 購買決定要因は何か?
購買決定要因とは、商品・サービスを購入する際の要素を指します。数多くの要因が考えられますが、ここでは金額以外で考え、優先順位をつけて整理します。
4.3 他社との差別化ポイントを明確にする
「誰に」が明確になったら、次はライバルとの差別化ポイントを明確にします。差別化ポイントを明確にしておかないと必要な人に「必要なもの」を届けることができず、他社のサービスが届いてしまうことになってしまうからです。
自社の整理にてライバルの情報は整理していると思いますので、その情報を元に他社との違いを明確にしていきます。
ライバルとの違いを整理する際に有効なのが、ポジショニングマップです。縦、横の2軸、もしくは、縦・横・奥行の3軸でライバルとの差別化ポイントを可視化します。
その際、軸を何にするのかが、差別化を明確にするためにとても重要になります。この時の軸は「誰に」を整理した際に活用した「購買決定要因」を使って軸を作ります。そのようにすることで、お客様が選ぶ優先順位において差別化されていることが明確になり、強固な地位を築くことが可能となります。
4.4 「届け方」を設計する
最後は、届け方の設計です。届ける方法は大きく2つの視点で考えます。一つ目は、表現方法の設計。別名ブランド作りです。〇〇なら××と認知されれば、ライバル不在の状況を作り出すことができます。二つ目は、届け方の設計です。商品を知り購入するまでの流れを設計することです。マーケティングフローなどと呼ばれることもあります。
4.4.1 表現方法を設計する
必要な人に必要ものを届けるには、必要なものがあると認識していただくことから始まります。差別化ポイントが明確になったら、そのポイントが伝わるように表現方法を設計します。表現方法における構成要素は、言葉とビジュアルに分かれます。設計の流れは以下の通りです。なお、こちらの設計についてはそれぞれにプロが存在するほど、専門的な要素が強いため、表現コンセプトまでを自社で作成しておきながら、言葉やビジュアルは外部に委託するのがおすすめです。
① 表現コンセプトを設計する
表現コンセプトは、MVVと強みをベースに作成します。次の要素を踏まえて一つの文章として作成します。
・誰に(ターゲットから)
・何を(差別化ポイントを意識したサービス内容)
・どう思われたいか(形容詞:優しい・元気ななど/例えるもの:ベンツのような・都会のような)
例えば、アップルコンピュータの初期imacはPCでありながらベンツのような高級感あるデザインを元に作成されたといわれています。
② 言葉を設計する
作成した表現コンセプトを元に、言葉とビジュアルを設計します。言葉は大きく3つを設計します。
・ネーミング(商品の名前)
・タグライン(ネーミングを補完するもの。例えばサントリーの「水と生きる」など)
・キャッチコピー(ターゲットに見てもらうために使うもの)
③ ビジュアルを設計する
ビジュアルも3つで設計します。
・ロゴ(サービスの顔となるもの)
・キーカラー(表現コンセプトをベースに設定する)
・キービジュアル(サービスの顔となるような写真やイラスト)
4.4.2 届ける流れを設計する
表現方法を整えたら、最後に届ける流れを設計します。届ける流れは大きく7つのフェーズで作成します。
① 認知/理解
② リスト化
③ フォロー
④ 成約
⑤ フォロー
⑥ リピート促進
⑦ ファン化
施策は、ぶつ切りで設計するのではなく、それぞれの要素をつなぎ合わせるように設計することがポイントです。必要な人に必要なものを届けるために、施策も相手に寄り添うつもりで、各施策の前後におけるターゲットの感情を考えてから設計することが重要です。
5. 小さく始めて素早く修正し育てる感覚で構築する
中小企業においてマーケティング戦略を構築することは、時間もかかり大がかりな作業になりますので、最初から完璧を求めないことが重要です。小さく始めて、小さくテストを細かく繰り返し、育てていくような感覚で取り組んで行くことで大きな費用のロスがなく、効率よく構築することが可能となります。決して全部をつくってから一気に進めて、だいしっぱいするような進め方だけは避けていただけたらと思います。
6. まとめ
以上、マーケティング戦略について解説をしてきました。マーケティングの本質である、必要なものを必要な人に届けることによって、結果として売上利益がついてくるようになります。構築は大変ですが形になることで、属人化が排除され、社長の時間が生まれ、社長がやるべき仕事に時感を割くことができるようになります。あなたの会社のサービスを必要としている人により多く届くようになるために、少しずつでかまいませんので取り組んでみていただくことをおすすめいたします。