【第43期】経営計画発表会の開催と2025年のスタート

2025年1月14日(火)に【第43期】「経営計画発表会」を開催いたしました。
有楽町朝日ホールおよびWEB配信を通じて、1000名以上の方々にご来場・ご視聴いただき、好評を博しました。
ご視聴いただいた皆様へのお礼も込めて、発表会を振り返ります。
事例共有 水谷真也様「人を大切にする経営の実践と成果」
第1部は、ミズタニバルブ工業株式会社代表取締役社長の水谷真也氏に基調講演を行っていただきました。
テーマは「人を大切にする経営の実践と成果」。
講演では、ミズタニバルブ工業の歴史や経営計画書の変遷、人を大切にする経営の具体的な取り組みについて語られました。
さらに、社会貢献や環境への配慮、若手の積極的な新商品開発への関与など、企業の成長を支えるさまざまな施策が紹介されました。
中小企業ならではの差別化戦略として「物心両面の幸せ」を目指す姿勢にも触れられました。
以下、講演内容を抜粋してお伝えします。
1. ミズタニバルブ工業の歴史と現状
1951年創業のミズタニバルブ工業は、岐阜県山県市に拠点を置く製造業で、主に水栓金具の企画・設計・製造・販売を手掛けています。
創業当初は部品加工業としてスタートし、その後、事業を拡大しながらメーカーとしての地位を確立しました。
現在では国内6社しか存在しないブランドメーカーの一つとして業界第6位に位置していますが、
業界第5位との売上差は20倍にも及び、規模の差がある中で独自の価値を模索しています。
社員は61名で、そのうち約半数が10~20代という若い組織構成が特徴です。
山間部の小さな集落に立地しながらも、地域密着型の企業として、地元社会とのつながりを大切にしています。
特に「若さ」と「柔軟性」を強みとし、新しい技術や市場に挑戦し続ける姿勢を持っています。
2. 「経営計画書」の変遷
経営計画書を初めて作成したのは2015年。
当初は部門別目標を記載した簡易的な内容で、計画というよりも気合や根性に頼るものでした。
しかし、銀行から「これは経営計画書とは言えない」と指摘を受け、本格的な改善に乗り出しました。
2018年以降、弊社古田土会計もサポートさせて頂き、「経営理念」と「戦略」を明確化した計画書へと進化。
現在では社員全員が参加する形で、具体的な未来像を共有し、計画書を「メンバーと会社の羅針盤」として活用しています。
特に「できることだけを記載し、実現可能性を重視する」点にこだわり、計画を形骸化させない取り組みを徹底しています。
3. 人を大切にする経営の具体的な取り組み
ミズタニバルブ工業では「人を大切にする経営」を実現するため、以下の取り組みを行っています。
7つの心得:社員全員で理想の人物像を共有し、「一生懸命」「素直」「チームワーク」など、7つの大項目と28の小項目を設定しています。これを基に、お互いを評価し合う360度フィードバックを導入し、自己改善を促進。
自我自賛日記:社員が自身の行動を振り返り、感謝や反省点を共有する活動を毎週実施。部署や年次を超えたコミュニケーションの場として機能しています。
勉強会と読書活動:経営計画書や松下幸之助氏の著書を全社員が読み、感想を共有。日々の行動を改善するための学びを深めています。
改善活動:全員参加型の小規模改善を継続的に行い、積み重ねることで業務効率やチームの連携を向上させています。
また、経験不足を補う手段として、生成AIを活用した技能伝承システムを開発中です。
昨年12月には試作版が完成し、今後は全社的な運用を目指しています。
また、RPA(ロボットによる業務自動化)を導入し、一部業務で作業時間を99.4%削減する成果を達成。
DX推進室を設置し、デジタル技術を駆使して業務効率化と付加価値の向上を進めています。
4.人が押し寄せる会社を作るために
人を大切にするということは、優しさや甘やかしだけではなく、将来を見据えて厳しく指導することも含まれるのではないか。
そう考えたとき、「人を大切にする経営」とは何かという指標が必要だと感じたそうです。
その指針として坂本光司先生の「人の欲求・幸せ」という考え方が重要であることを、弊社古田土会計の指導のもと理解。
この理念を基に、「人の欲求や幸せを満たすことが、人を大切にする経営につながる」とわかり、実践に移すことにしたそうです。
たとえば、「人は皆いつも成長したいと思っている」という点について。
社員が会社の数字に関心を持てるように、月次の決算内容、つまりPL(損益計算書)を全社員で共有。
しかし、PLの数字だけでは意味が十分に伝わりにくいと感じた時期があり、弊社古田土会計による指導のもと「未来会計図」を活用する取り組みを始めました。
現在では、全社員に向けた数字の勉強会を行っています。
こうした取り組みを通じて、経費と価値の関係についての理解が深まったということです。
「経費を下げることが全てではなく、どうやって価値を上げるかが重要である」「経費が上がる場合でも、それ以上に価値を高める必要がある」など、経費と価値、経費と経常利益の関係性を社員が順次理解し、取り組みを進めているそうです。
5. 地域社会への貢献にも余念なし
地域社会や環境への配慮を重視し、以下のような活動も行っています。
炭素排出量削減:3年間で約48%の削減を実現。脱炭素経営を積極的に推進しています。
地域連携:地元の小学生の社会見学受け入れや、プログラミング教育の提供など、若い世代の育成に力を入れています。
植林活動:社員がどんぐりを2年間育て、それを地元の山に植林する取り組みを行い、地域の自然環境の保全に寄与しています。
ロボットコンテストの協賛:地元で開催されるイベントへの参加を通じ、若い世代との交流を図っています。
これらの活動を通じて、地域から信頼される企業としての立場を確立しています。
6.新商品開発に若手が次々手を挙げる
若い世代の採用力を強化するため、次のような施策を実施しています。
地域イベントへの参加:地元の高校生や大学生との交流イベントを定期開催し、会社の魅力を発信。
インターンシップ:イベントをきっかけに長期インターンに応募する学生が増え、地域内外から求職者が集まるようになりました。
全員採用体制:社員全員が採用活動に関与し、「自社に適した人材」を見つける取り組みを強化しています。
これらの施策により、採用の質と量の両面で成果を上げています。
7. 物心両面の幸せを目指して ~中小企業の差別化戦略~
ミズタニバルブ工業が目指すのは、社員が豊かで安定した生活を送れるようにすること。
豊かさとは物心両面の幸福を指し、物質的な豊かさとは、具体的には給料のことであり、人件費を継続的に上げる取り組みを進めています。
また、安定とは時代の変化が激しい現代において「動かないこと」ではなく、「行動・変化し続けること」だと捉えています。
安定を実現するために、行動と変化を重視し、当社では中小企業の差別化戦略に基づき新しい取り組みを続けています。
将来の取り組みとして、私たちは「選ばれる会社」を目指しています。
その基盤として「人を大切にする経営」を据え、活動の一環であるMPS活動や、伝える力(マーケティング力)の強化を進めています。
これを支える柱として、「商品・サービスの差別化」と「組織の差別化」の2つを掲げています。
商品・サービスの差別化は、独自性のある商品・サービスの開発であり、組織の差別化は、主にデジタル技術を活用することで実現していきたいと考えています。
また、採用力やGX(脱炭素経営)の向上も必要であり、これらを組み込んだ「選ばれ続ける会社」という枠組みを構築しています。
この枠組みを基に、新規事業の開発を進めており、ビジネスモデルの構築やDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した取り組みを強化しています。
具体的な例として、生成AIを活用した技術の伝承システムを開発しています。
会社は若いメンバーが多く、活気がある反面、経験値が不足しているという課題があります。
この課題を補うために生成AIを活用し、技術伝承を支援するシステムを昨年12月に試作し、現在は運用試験を行っています。
成功すれば全社展開し、さらに製造業全体の技能伝承や人手不足の解消に貢献することを目指しています。
このような取り組みを通じて、従来の水栓金具事業にとどまらず、ブランド戦略やデジタルDX戦略、マーケティング戦略などを通じ、新たなビジネスを「点」ではなく「面」で創出し、未来へ向かって進んでいきます。
8.最後に
最後に、今後の会社の未来について、その中心となるのは経営計画書であり、特に未来像と中期事業計画が重要だと考えていらっしゃるとのことでした。
会社が目指す未来、そしてその未来の先にいるメンバーの姿を明確に描きながら、これまで以上にお客様に喜んでいただき、価値を提供し続ける会社でありたい、
それが、私たちが目指す姿である、とおっしゃっておられました。
古田土会計グループ 第43期経営計画発表会
第2部は、株式会社古田土経営 代表取締役社長・鈴木知郎による第43期(2025年)経営計画発表会を行いました。
今年のテーマは「成長と未来をつなぐ経営」。
鈴木代表からは、前期の実績を振り返るとともに、日本の労働生産性や組織が抱える課題についての考察が示されました。
さらに、組織の未来像や社員の成長戦略、新規事業やサービス展開の方向性について語られ、経営計画書が果たす役割と使命にも触れられました。
前期の実績の振り返り
第42期の売上高および経常利益は、いずれも目標を上回る結果となりました。
特に売上目標を超える成果は、社員一人ひとりの積み上げた努力の結晶です。
また、過去の業績を振り返ると、目標を継続的に達成していることが大きな強みとされ、これは日々の地道な取り組みがもたらした結果であると認識しています。
一方で、さらなる目標達成には「持続的な生産性向上」と「顧客に対する価値提供の質の向上」が重要です。
経営計画発表にあたって~日本の労働生産性と組織が抱える課題~
日本の労働生産性は、OECD加盟国38か国中、30位と低迷しており、一人当たりの生産性もアメリカの半分以下です。製造業でも18位とかつての強みを失いつつあります。
全体の70%を占める中小企業の改善が生産性向上の鍵となっています。
最近では生成AIを活用して効率化や付加価値の高い仕事を目指す動きが見られ、特に若い世代が前向きに技術を取り入れています。
古田土会計グループでは、教育やAIツールを活用し、価値ある提供を通じて100年続く企業を目指します。
環境の変化に対応し組織全体の成長を推進するための取り組みを進めていきます。
長期事業構想と2025年度の利益計画について
今後の長期事業構想(2030年まで)として以下について主に説明がありました。
・中小企業向け総合コンサルティング会社として、新商品・サービスを開発。
・経営計画合宿拠点を日本全国に拡大。
・月次決算書と「人を大切にする経営計画書」を普及し、業種別や同業者向けコンサルサービスを展開。
・若手社員の柔軟な発想を活かした新規事業、ベテラン社員による関連事業の開発を促進。
・売上高40億円、顧客数5000件、社員数500人を目指す。
2025年度の利益計画は以下のとおりです。
<売上・利益目標>
・売上目標: 28億8000万円(前年比約1億8000万円増加)
・経常利益: 3億8000万円(昨年度実績4億円)
<利益構造と背景>
・昨年度は特需的な要因で利益が高かったが、今期は堅実な成長を見込む。
・売上を10%以上増加させる中で、人件費も引き上げる方針。
・経費削減に加え、効率的な経営を目指し、DXの活用や業務効率化を推進。
<数字と意識の調整>
・売上高の内訳を再確認し、将来的なリスクへの対応策を検討。
・年末調整や確定申告業務など一部の収益源が減少する可能性を考慮し、新たな収益モデルを模索。
・経営計画の中で人件費増加を戦略的投資と位置づけ、未来への布石を打つ。
社員の行動指針・心得
行動指針の中核として掲げているのが「利他の心で行動する」という考え方です。
利他の心とは、相手だけのために良くなるのではなく、自分と相手が共に良くなることを目指す姿勢を指します。
これは決して自己犠牲ではなく、双方の成長と利益を追求するものです。
お客様の成長に貢献することで、自社も成長し、共に発展する関係を築くことが重要です。
この考え方は、組織全体だけでなく個人間の関係にも適用されます。自分だけが成果を上げるのではなく、その成果を他者と共有し、全体の成長を促すことが求められます。
次に「プロフェッショナルであること」が挙げられます。
プロフェッショナルとは、技術力を高めるだけでなく、常に前向きな思考を持ち、学び続ける姿勢を大切にすることを意味します。
学びの重要性は、「インプットなくしてアウトプットはできない」という言葉にも表れています。
知識を積み重ね、成長し続けることがプロフェッショナルとしての資質を磨く鍵です。
また、「礼儀を大切にする」ことも行動指針の一つです。
以前は「物を大切にする」と記載していましたが、礼儀の中に「物を大切にする」という考え方も含まれるため、「礼儀を大切にする」という表現に変更しました。
礼儀を重んじることで、行動や振る舞いに対する意識を高め、組織全体の成熟を促進します。
さらに、「常に学び続ける」という姿勢も指針に掲げられています。
AIが進化する時代においても、人間のインプットがなければ成果は得られません。
学び続けることは、時代の変化に適応し、成長を続けるために欠かせないものです。
最後に、「謙虚で素直な姿勢を持つ」ことが挙げられます。
この項目は以前「社員は公平で平等である」という表現でしたが、社員間での相互の行動を考慮し、「謙虚で素直な姿勢を持つ」という内容に変更しました。
この変更により、社員同士がお互いを尊重し、前向きな姿勢で行動できる環境を目指しています。
これらの行動指針は、自分と相手、組織とお客様が共に成長し、発展するための基盤となるものです。
日々の業務の中でこれらを体現し、より良い組織づくりを目指していきます。
未来像経営のための組織
従来取り組んできた「日本の未来像」に代わり、新たに「成功の循環モデル」に基づいた組織運営を提案します。
このモデルは、成果を上げるための組織の在り方を示しており、変化が常に求められる現代の働き方に適応するものです。
<組織の成長と内発的動機>
組織運営において重要なのは、「やらされる」ではなく、自ら「やりたい」と思える環境を整えることです。
この「内発的動機」を引き出すためには、直属の上司が大きな役割を果たします。
特に、リーダーシップには自己認識力が求められます。
これは、自分の価値観や感情、他者への影響を理解するとともに、他者からどう見られているかを認識する能力です。
<心理的安全性と関係性の構築>
成果を上げる組織づくりには、「心理的安全性」が欠かせません。
これは、自由に意見を述べられる環境を指します。
また、相手の心理や意図を察する「社会的感受性」の高さも重要です。
このような環境を構築することで、チーム内で意見が活発に交換され、より良い成果につながります。
ただし、単に関係性を深めるだけでは閉鎖的な空間になりかねません。
目的や価値観を共有しながら、建設的な議論を通じて意見をまとめることが大切です。
<行動の質と組織の成果>
行動の質を高めるためには、仕事の意味や価値を社員一人ひとりが理解することが重要です。
自分が取り組む業務がどのように貢献しているかを実感することで、内発的動機が高まり、より良い成果を生み出すことができます。
また、分業が進む中でも全体を見渡し、自ら考えて行動する意識が求められます。他人任せにせず、責任を持って業務に取り組むことで、個人と組織の成長が両立します。
「成功の循環モデル」は、関係性、思考、行動の質を向上させることによって成果を生む仕組みです。
このモデルを活用し、社員がやりがいを持ちながら働ける環境を作ることで、組織全体が成長し続けることを目指します。
引き続き、社員一人ひとりが自己の価値を発揮できる組織運営を推進していきます。
社員の未来像
社員一人ひとりのキャリアアップと働きがいを支える環境づくりが、当社の大きな柱です。
社員の給与は「年齢の20倍」を目標にしており、基準として新卒社員は30歳で年収600万円、中途入社の社員は3年経過時点でこの水準を目指しています。
資格取得支援にも力を入れており、集中して勉強できる環境を提供するための「集中3日制」や特別休暇、21時まで利用可能な勉強専用スペースを設けています。
これらの取り組みは、社員が専門知識を深め、成長し続けるための土台となっています。
また、キャリアプランの選択肢も多岐にわたり、役員・幹部を目指すコースや、支店長を目指すコース、などを用意。
社員がそれぞれの目標に合わせたキャリアを描けるようサポートを続けています。
未来の会計事務所・社労士事務所
当社は、未来の会計事務所・社労士事務所として進化し続けるための取り組みを進めています。
現在、代行業務の自動化やAI技術の導入が進む中、会計・労務業界では「考える仕事」や「提案する仕事」への転換が求められています。
2023年の帝国データバンクの調査では、廃業増加率の第一位が税理士事務所でした。廃業やM&Aが進む背景には時代の変化に対応できない現状も影響しています。
そのため、私達自身の成長だけでなく、同業他社とも協力しながら中小企業を支援していくことが需要です。
また、「社会保険労務士法人古田土人事労務」に社名変更となります。グループとしての益々の発展に努めます。
事業の未来像
当社は、「顧問料を経費ではなく未来費用として捉えてもらう」ことを目指しています。
そのため、顧客に「支払いたい」と思ってもらえる高品質なサービスの提供に努めています。
また、パートナー企業との連携を深め、より広範なサービスを提供する体制を構築しています。
これらは、単なる業務代行ではなく、顧客企業の成長を支えるための重要な活動として位置づけています。
よりお客様に喜ばれる会計事務所を目指して
経営計画書には、社員とその家族が未来に希望を持ち、感謝と感動の人生を送れるようにという思いが込められています。
同時に、会社が中小企業のモデルとなり、地域社会に貢献するための明確な目標や行動指針を示しています。
この計画を実行し成果を上げるのは、社員一人ひとりの役割であり、努力の成果は全員で分かち合うべきものです。
また、同じ場で働けることに感謝し、社員が互いに輝きながら成長できる会社づくりが大切です。
社長が先頭に立って変革を進め、社員とともに夢の実現に向かう姿勢が求められます。
これらの取り組みは、「顧客にとっての価値を最優先に考える」という理念に基づいており、全社員が自らの役割を果たし、日々努力しています。
このような姿勢を保ちながら、今後もさらなる革新を続けてまいります。