バリュープロポジションとは何か、事例と作り方を交えて解説!

バリュープロポジションとは、企業や製品・サービスが顧客に提供する独自の価値を示すものです。
しかしこれだけを聞いても実際にどのように作成、活用したらよいのかもイメージしづらいと思います。
そして、同じような言葉でUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)がありますが、違いは何でしょうか?
そこで今回はバリュープロポジションとは何かを整理し、USP(ユニーク・セリング・プロポジション)との違いや事例を交えながら解説していきます。
1.バリュープロポジションとは
1.1 バリュープロポジションとは
バリュープロポジションとは、「自社にしか提供できない価値」のことです。
企業が市場で成功するためには、自社が提供できる価値を明確にし、顧客に伝えることが重要であることに異論はないと思いますが、この考え方を「バリュープロポジション(Value Proposition)」と呼びます。
バリュープロポジションは、単に製品やサービスの特徴を述べるのではなく、顧客の課題を解決し、競争優位性を確立するためのものです。
例えば、家電製品をイメージすると、何でもかんでも機能を付加すればよいというわけではなく、初心者や高齢者にとっては逆に余計な機能が無い方が価値を感じるということもあります。
これが顧客の課題を解決するということです。
ポイント☝
1.2 バリュープロポジションの構成要素
バリュープロポジションの構成要素は3つです。
① 顧客セグメント
どのような顧客に向けた価値提供なのかを明確にすることです。
ここが不明確だと「顧客が望んでいる価値」が提供できなくなります。
例: 企業向けか、個人消費者向けか、特定の業界や市場かなど。
②提供価値
「自社が提供できる価値」を明確化するために、その商品・サービスがどのような課題を解決し、顧客にどんな利益をもたらすかを明確にすること。
例: コスト削減、利便性向上、新しい体験の提供など。
③差別化要因
競合と比較して、自社の提供価値がどのようにユニークであるか。
例: 価格、品質、ブランド、テクノロジー、サービスレベルなど。
1.3 USP(ユニーク・セリング・プロポジション)との違い
USPは「Unique Selling Proposition(Point)」の略で、独自性や自社にしか提供できない売りのことであり、バリュープロポジションとほぼ同じ意味です。
バリュープロポジションとUSPを同義とするケースも多いのであまり細かいことは気にしなくても問題はありません。
図で表してもほぼ同じ形となります。
強いて言えば、「価値」が「強み」に変わるということですが、このように厳密には少し意味が違いますので解説します。
USPは「Selling Proposition」なので販売を目的としたフレームワークです。
簡単に言うと、「この製品を使うとこんな良いことがありますよ」と直接的にメリットを顧客に伝えるのがUSPです。
対してバリュープロポジションは「バリュー」すなわち「価値」の提供を目的としたフレームワークとなります。
また、USPが短期視点であるのに対して、バリュープロポジションは長期視点という違いもあります。
USPは販売を目的としたフレームワーク、すなわち「宣伝効果のアップ」や「売上アップ」に繋がるものです。
バリュープロポジションは価値の提供であり、その究極的な目的は「企業のブランディング」にあります。
2.バリュープロポジションのメリット
バリュープロポジションを明確にすることで、企業にとってさまざまなメリットがありますが、以下の図の通り業績にも好影響をあたえていることが分かります。
独立行政法人国際協力機構 HPより
https://www.jica.go.jp/activities/schemes/priv_partner/platform/column04_20240109.html
その他のメリットとしては6つあります。
① 競争力の向上:顧客が求める価値を的確に提供することで、競争優位性を確立できる。
② マーケティングの効果向上:魅力的なメッセージを発信することで、ターゲット顧客に対する訴求力が高まる。
③ 顧客ロイヤルティの強化:価値を適切に提供し続けることで、顧客の信頼と満足度が向上する。
④ 事業の成長加速:明確な価値提案により、顧客獲得と売上増加につながる。
⑤ ブランドイメージの強化:一貫した価値提供がブランドの信頼性を高める。
⑥ 意思決定の迅速化:バリュープロポジションが明確であれば、企業戦略や商品開発の方向性が定まりやすい。
3.バリュープロポジションの作り方
効果的なバリュープロポジションを作成するためには、以下のステップを踏むことが重要です。
まとめると3C分析の流れに沿うようなイメージとなります。
① 顧客を理解する
バリュープロポジションを作るうえで一番重要な部分です。
1.1の例のように顧客は自社が想定している価値とは別の価値を求めていたり見出している可能性もありますので、顧客の立場に立って自らの製品・サービスを見つめることが必要不可欠です。
例えばこのような施策があります。
– 市場調査やアンケートを活用し、ターゲット顧客のニーズを分析する。
– 顧客のライフスタイルや購買行動を把握する。
さらに、顧客が望んでいる価値が業務を進めるうえで“Must have(なくてはならないもの)”なのか、“Nice to have(あるとうれしいもの)”なのかを見極め、“Must have”な価値を中心にバリュープロポジションを組み立てるとより付加価値が高まります。
② 競合分析を行う
続いて競合の分析です。ポジショニングマップの作成やファイブフォース分析も有効です。
– 競合他社の強みと弱みを調査し、自社が提供できる独自の価値を特定する。
– ポジショニングマップを作成し、市場における自社の立ち位置を確認する。
③ 自社の価値を明確にする
①と②を前提としつつ、SWOT分析やVRIO分析なども活用して顧客への提供価値を明確にします。
– 自社の製品やサービスが顧客にどのようなメリットをもたらすのかを具体化する。
– 価値を定量的(コスト削減、時間短縮など)または定性的(ブランドイメージ、使いやすさなど)に表現する。
※参考 コア・コンピタンスとは?企業の中核を担う強みの見つけ方
https://www.kodato.com/blog/p13089/
④メッセージを作成する
– 短く、わかりやすい言葉でバリュープロポジションを伝える。
– タグラインやキャッチフレーズを活用し、印象に残るメッセージを作る。
⑤テストと改善を繰り返す
– 実際の市場でテストを行い、フィードバックを得てブラッシュアップする。
– 顧客の反応を見ながら調整し、最適なバリュープロポジションを構築する。
4.バリュープロポジションの事例
1.2の構成要素を基にバリュープロポジションの事例を6つご紹介します。
事例1:Apple
顧客セグメント: テクノロジーに敏感な消費者、クリエイター、ビジネスパーソン
提供価値: 直感的な操作性、高品質なカメラ、エコシステムのシームレスな連携
差別化要因: デザイン性の高さ、ブランド力、独自のiOSプラットフォーム
事例2:Netflix
顧客セグメント: 映画・ドラマ好きの個人ユーザー、ファミリー層
提供価値: 定額制で豊富なコンテンツが見放題、レコメンド機能による最適な作品提案
差別化要因: オリジナルコンテンツの充実、広告なし、マルチデバイス対応
事例3:Slack
顧客セグメント: IT企業、リモートワークを活用する企業、チームで働くビジネスパーソン
提供価値: チームの円滑なコミュニケーション、業務効率の向上
差別化要因: 使いやすいUI、他の業務ツールとの連携、リアルタイムチャット機能
事例4:ユニクロ
顧客セグメント: 幅広い年齢層の一般消費者、機能性を求めるビジネスパーソン
提供価値: 高品質・低価格でシンプルなデザインの服、機能性(ヒートテック・エアリズム)
差別化要因: 独自のサプライチェーン管理、グローバル展開、高機能素材の開発
→ ユニクロは「シンプルで高品質、機能性の高い服をリーズナブルな価格で提供する」ことをバリュープロポジションとし、他のファッションブランドと差別化を図っています。
事例5:スタディサプリ(リクルート)
顧客セグメント: 受験生、小中高生、社会人学習者
提供価値: 低価格で質の高いオンライン授業を提供、時間・場所を選ばず学習可能
差別化要因: 一流講師の授業を安価で受講できる、スマホ・PCで手軽に学習できる、学習データの活用
→従来の予備校に比べ、圧倒的なコストパフォーマンスと利便性を提供し、教育業界に新たな価値をもたらしました。
事例6:メルカリ
顧客セグメント: 不用品を売りたい個人ユーザー、安く商品を購入したい消費者
提供価値: 簡単に出品・購入できるフリマアプリ、キャッシュレス決済と連携した便利な取引
差別化要因: スマホで簡単に取引が完結、匿名配送システム、AIを活用した価格設定アドバイス
→ 「誰でも簡単に売れる・買える」という使いやすさを強みに、日本国内だけでなく海外展開も進めています。
5.古田土会計の事例
古田土会計は、「未来像経営で日本中の中小企業を元気にする」ことをバリュープロポジションとしています。
顧客セグメント:売上高5,000万円~50億円の社員を大切にしようとする中小企業
提供価値:明るい未来の見える化
差別化要因:古田土式月次決算書によりお金の儲け方とお金の残し方を指導できるとともに、
経営計画書の作成指導数では日本一の会計事務所。
社員力 など
以下、古田土会計の経営計画書から該当箇所を抜粋していますので参考にしてください。
6.まとめ
今回はバリュープロポジションについて解説をしてきました。
これを設定しただけで持続的に成長するということではありませんが、有効な考え方・手法の1つではあります。
既存事業だけでなく、新規事業を進めるうえでも有効な手段となりますので、改めて1.1の図をイメージして是非自社のバリュープロポジションを整理してみてください。