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ビジョンとは? ビジョンを導き出すための質問30

ビジョンとは? ビジョンを導き出すための質問30

中期事業計画
ビジョンとは、「未来の理想的な状態の具体的・明確なイメージ」であり、個人、組織、プロジェクト等において何を達成し、どのようにすべきかを具体的な言葉で表現することです。

ところで、ビジョンはどのように作るのでしょうか?
そもそも、「ミッション・ビジョン・バリュー」と言いますが、それぞれとの違い(位置関係)は何でしょうか?

今回は、この辺りの違いを明確にするとともに、ビジョンを作成するためのポイントや作成するために有効な質問を40個挙げています。
この記事を通して、自社のビジョンがある方はそのチェックに、これから作成される方は読み進めながら作成してみてください。

1 ビジョンとは

1.1 ビジョンの定義

ビジョンの定義にはいくつかありますが、

の2つが最もイメージしやすい定義です。

大きなポイントは、「未来」のことで「具体的」なものです。



ダイヤモンド社 コンセプトの教科書 細田高広 著より


また、ミッション・ビジョン・バリューの中での位置づけは下記の図の通りとなります。
整理すると、ミッションが「目的」、ビジョンが「目標」、バリューが「ミッション・ビジョンを達成するために必要な方針・指針」となります。


おなじみの桃太郎に例えると、ビジョンは「半年後に鬼退治をする」ということ(目標)になります。 
また、違う形で図示すると以下のようになります。

1.2 ビジョンの重要性

ビジョンの重要性については、「ビジョナリー・カンパニー」という名著の中でも触れられています。
ビジョナリー・カンパニーとは「ビジョン」を持つ企業、「未来志向(ビジョナリー)の企業」、「先見的(ビジョナリー)な企業」であり、同業他社から広く尊敬を集める企業である。そのほとんどが業界の超一流企業であり、何十年もの間、その地位を保っている企業です。

この中でも、「未来」という言葉が出てきます。

こちらは、「ミッション」に関する記述です。

そして、この中の①がまさに「ビジョン」です。

1.3 ビジョンを作ることのメリット

ビジョンを作ることによるメリットは3つです。

①会社の方向性が明確になる
会社がどのような世界観(方向)を目指しているのかが明確になり、判断に迷った場合など、ビジョンに基づいて意思決定できるようになります。

②社員のモチベーションの向上に寄与する
目指すべき世界観が明確になることによって、社員によって取り組む業務や部署が違っても、共通のビジョンがあれば同じ目標に向かっているという自覚をもって働けるため、モチベーションの維持や組織の結束力の強化にもつながります。

③お客様や利害関係者に応援してもらいやすくなる
会社や社会に対してどのような未来をもたらすかを具体的に示すことができるため、共感を得やすく信頼感も向上します。

1.4 ビジョンの事例

【日産自動車】
「Nissan Ambition 2030」を2021年に公表しました。

https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/211129-00-j

【KDDI株式会社】

https://brand.kddi.com/managementplan/kddivision2030/

【株式会社ローソン】

https://www.lawson.co.jp/company/corporate/data/idea/

【LINE株式会社】
https://linecorp.com/ja/company/mission

【株式会社リクルートホールディングス】


いかがでしょうか。

日産自動車は少々長いかもしれませんが具体的に、他の企業は端的に表されていると思います。
1.1で見た切り口(フレーズの具体性・抽象度)はそれぞれであり、一見ポエムに見えるものもあるかもしれませんが、社員や関係者がよく理解することが重要なのでこの部分にこだわりすぎる必要はないです。
ビジョン作成のポイントは2章で解説しますが、そのポイントが盛り込まれているかも後程振返ってみて頂いても面白いと思います。

1.5 古田土会計のビジョン

古田土会計のビジョンは、1.4の事例のように端的な表現とはなっていませんが、「未来像」として、経営計画書に記載しています。
経営計画書を作成する場合は「未来像」は必須の項目となりますが、
・社員の未来像
・組織の未来像
・事業の未来像
の3つに分かれます。
これらは、使命感や経営理念から落とし込まれています。
そして、それを数値に表したものが「中期事業計画」となります。
このような方法もありますので参考にしてください。
大事なことは、社員とお客様にしっかりと「伝わる」ことです。1.4の事例同様、この後の2章で解説するポイントが満たされているかを確認してみてください。

社員の未来像

組織の未来像



事業の未来像

中期事業計画

2 ビジョンの作成のポイント

1章でポイントとなる点がいくつかでてきましたが、ポイントは4つです。
但し、前提として、ミッション・バリューとの整合性・関係性が保たれているということは忘れないようにしましょう。

①「未来」かつ「具体的」
1章の定義で触れた部分です。例えば、「革新的な製品をつくろう」は抽象的ですが「ポケットに入るラジオをつくろう」は具体的です。この言葉はソニーの井深大氏がトランジスタという新しい技術を手にした時の言葉ですが、新しい生活シーンをイメージさせ、技術者を奮い立たせました。
具体的な方がより社員やお客様・消費者がイメージしやすく共感を得やすくなります。

②頑張れば達成できる目標・夢
現在から適当な距離のある未来についてのビジョンを書くことです。

ある高校の部活動では、「全国優勝」を目標に掲げていましたがいつも関東大会止まりでした。
ある時、それを「連覇」とスローガンに掲げたことにより、毎年全国優勝をするといった変貌をとげたのです。
ここのポイントは、「連覇」は優しくはないが、非現実的な目標でもない、ということです。これにより部員の意識や行動が一つ上の段階に移行し、何連覇も成し遂げていくことになりました。
※佼成学園高等学校 ロータス
2022年まで7年連続で、高校日本一を決するクリスマスボウルに出場を果たし、2022年の優勝は2年ぶり5回目です。
7年前に初出場・初優勝、その後3年連続「連覇」を成し遂げて、関東では一度も公式戦に負けたことがないという驚異的なチームです。

③ワクワクする内容であること

①と②にも関係しますが、社員や消費者が夢を感じ、ワクワクする内容であることが大切です。
例えば、単に数値で「2030年の目標はシェアNO.1を実現すること」、「売上1兆円を達成すること」といっても(特にZ世代は)ワクワクしません。
それによって人々の生活や社員はどのようになるのか?その先に広がる世界がどのようなものか?といったことが含まれてはじめてビジョンとなります。

④短いフレーズで表現すること

1章(1.4)の事例で見た通り、端的なフレーズ(一言)で表現することです。
その方が分かりやすく、伝わりやすいからです。
短いといっても捉え方は様々ですが、2~3行以内を目安に考えてみてください。

但し、一言でまとめることはそう簡単ではありません。その場合は、古田土会計の事例の通り「未来像」という形で表現することでも問題ありません。

3 ビジョンを導き出す質問40

実際にビジョンを作成する際に役立つ30の質問を用意しました。
大きく3つのパートに分かれていますが、全ての質問に答えて頂いてもよいですし、答えやすいものから答えて頂いても問題ありません。
これらの質問に答えることで、ビジョンが具体的で実現可能なものとなり、組織やプロジェクトの成功に向けた方向性を確立するのに役立ちます。ビジョンは明確で共有可能であるほど、チーム全体が共感し、協力して実現することが容易になります。

パート1:現在から未来を考える

①    私たちは将来、どんな景色を見ていたいか?
②    その未来像は十分に具体的か?
③    その未来像は自分中心ではないか?
④    ビジョンが実現した時、あなたの会社は社会からどんな言葉で感謝されているか?
⑤    ビジョンが実現した時、あなたの事業は地球環境にどのような影響を与えているだろうか?
その結果、自然環境にどのような影響があるだろうか?
⑥    あなたが、あなたの子供世代に残したいものは何か?
⑦    2200年を生きる未来の人のために何を残したいですか?
⑧    未来の人たちからあなたはどんな存在として思い出されたいですか?

パート2:物語思考で未来から考える

時間軸を定めすに、自社の理想の未来を描き、自分の中で理想的な未来の出来事がメディアに取材され、記事として掲載されているところを想像します。
①    その記事はどんなメディアだろうか?
②    ヘッドラインはどのようなもの(見出し)だろうか?
③    いつ、どのような出来事が起こったか?
④    その出来事が実現した結果、自分の周りの人の生活にどんな変化が起こったか?
(今と何が違いますか?
⑤    その時、誰がどのように喜んでくれているでしょうか?
⑥    その出来事を実現するうえで、自分たちのどのような能力が使われただろうか?
そのために自分たちはどのように協働したのだろうか?
⑦    その出来事が実現するうえで、大きな壁は何だったか?
それはそのようにして乗り越えられたのだろうか?

パート3:ヒーローインタビュー形式で考える

物語思考からさらに具体的にイメージする際に有効です。自社・自分自身がテレビや新聞等のインタビューを受けているような感覚で取り組んでみてください。
①    ビジョンが実現した(夢が叶った)ということですが、どのようなビジョンが達成されて(夢が叶った)のですか?
②    その時の状況を是非詳しく教えてください。
③    ビジョン(夢)が達成できて、今どのような気持ちですか?
④    なぜそのビジョン(夢)を持ったのか、そもそもの動機や原点となる体験を教えてください。
⑤    ビジョン(夢)を実現したことで、周りからはどんな風に言われていますか?
⑥    特に印象に残っているシーンはありますか?
⑦    そのビジョン(夢)が叶うことで周りの人に、また社会に、どんな影響を与えましたか?
⑧    ビジョン(夢)を叶えるために具体的にどんなことをしてきたのですか?
⑨    ビジョン(夢)を叶えるためのキーパーソンは誰でしたか?
⑩    何が成功の要因でしたか?
⑪    多くの人は諦めてしまうのに、なぜあなた(会社)は諦めなかったのですか?
⑫    ビジョン達成(夢を叶える途中)にどんな困難がありましたか?それをどのように乗り越えたのですか?
⑬    ビジョンを達成した(夢を叶えた)時、誰が一番喜んでくれましたか?どのように喜んでくれましたか?
⑭    ビジョンを達成した(夢を叶えた)今、誰に、どんな言葉で感謝したいですか?
⑮    ビジョンを達成する(夢を叶える)ために踏み出した、最初の一歩は何ですか?

※これらの質問はこちらの文献から引用、参照しています。
フォレスト出版 予祝ドリームノート ひすいこたろう/大嶋啓介 著
ダイヤモンド社 経営理念2.0 佐宗邦威 著

4 ビジョンに関するQ&A

4.1 ビジョンは状況に応じて変えてよい?

ビジョンは外部環境の変化など状況に応じて変えてもよいですが、毎年など頻繁に変更することは避けた方がよいです。毎年変わると「会社は結局どこに向かっているの?」となるためです。

4.2 ビジョンはいくつあってもよい?

ビジョンお客様、社員とも共有するため、できれば1つまたは1つにまとめて表現することがbetterです。しかし、古田土会計のように「未来像」のような形で作成する場合は社員の未来像・組織の未来像・事業の未来像の3つになり、端的にまとめるものとは異なるためカテゴリーごとに作成してもよいです。もちろん、両者の併用も可です。

4.3 ビジョンは社長1人で考えなくてもよい?

中小企業の場合は原則は社長が考えた方がよいです。なぜなら、社長の仕事は「決定すること」だからです。方向性や戦略を決定することが社長の仕事なので、ビジョンも社長が考えることが自然です。
一方で、組織が成熟化してきたり幹部が育ってきた場合には周囲の意見も取り入れてより良いビジョンを作成することもありです。これはこれで作成に携わった社員に当事者意識が芽生えるといったメリットもあります。

5 まとめ

以上、今回は「ビジョン」についてまとめました。
ミッション・バリューと合わせて3つで1つという部分もありますが、ビジョンの定義・目的をはじめ、具体的な作成方法(質問)を解説させて頂きましたので、是非作成の役にたててください。
繰り返しになりますが、大切なことは「社員や関係者にしっかりと伝わること」です。少々うまく作成できなくても経営計画発表会、勉強会、朝礼等で補足説明を行うことでカバーすることができます。
一番もったいないのは、考えすぎて「作成できない」ことなので注意してください。


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