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経営理念とは?MVV・クレドなどの関連用語との違いを事例を交えて解説

経営理念とは?MVV・クレドなどの関連用語との違いを事例を交えて解説


おすすめの経営理念

経営理念は、企業・経営者の価値観を表すものであり経営の羅針盤でもあります。
経営理念がないということは、航海で言えば目的地もなく、方位磁針や海図がない状態で航海をするようなものであり、ただ流れに身を任せているだけの経営です。
経営において「時代の変化に適応する」ことは大切ですが、そこに1本の筋が通っていないと言っていることとやっていることが不一致になり消費者・取引先の信頼を得ることは難しくなります。

つまり、経営理念無しに企業が永続的・持続的に発展することは難しくなります。
ミッション・ビジョン・バリューの記事でも触れましたが、ビジョナリーカンパニーでは以下のように述べられています。

そこで、今回は「経営理念」に焦点を当てて解説していきます。

1.経営理念とは

1.1経営理念の定義

経営理念とは、わが社の社会に対する根本的な考えであり、「誰のため」、「何のため」という「目的」を表すものです。
また「志」とも言え、全社員で共有するものであり、経営を行う上での判断基準となります。

具体的には、組織や企業が事業活動を行う上での基本的な価値観や信念のことを指し、組織の目的や目標、ビジョンと密接に関連して、組織のアイデンティティや方向性を示すものと言えます。

また、人を大切にする経営学会会長の坂本光司先生の定義も分かりやすいので記載します。


______PHP研究所 人を大切にする経営学講義 坂本光司著

1.2同義・類義語との違い

まず、経営理念やミッション・ビジョン・バリュー等同じような意味を示す言葉が多く存在しますが、主要な語句についての相関関係を図示すると以下の通りとなります。
但し、これが絶対ではありません。会社ごとにそれぞれの言葉の意味や位置づけがしっかりと定義づけがされていれば大きな問題はないです。

1.2.1 フィロソフィー

フィロソフィーは1.2.1の図の通り、経営理念とクレドの間に位置します。
経営理念は企業の目的を示し、フィロソフィーは全社員にその理念を浸透させるために作った指針となります。
フィロソフィーは企業の行動原則や価値観を表し、具体的には、企業の経営やビジネスにおける価値観や信念、原則を表すもので、組織の文化や行動指針、意思決定の基盤となる考え方を指します。例えば、顧客中心主義や持続可能性、イノベーションへの重要性など、企業が実現するための具体的なアプローチや方法論を反映したものです。
その意味では、フィロソフィーはバリューや次のクレドに近いとも言えますが、クレドは箇条書きで端的に表現されているのに対し、フィロソフィーは文章・問答集・経営理念やミッションの事例集といったイメージです。

例えば、稲盛和夫氏の「すばらしい人生を送るために」の中には大項目が「心を高める」、「より良い仕事をする」、「正しい判断をする」等6つあります。そして、「心を高める」の中にはさらに7つの項目があり、その中に「素直な心をもつ」という項目があります。そこには以下のように書かれています。

1.2.2 クレド

「クレド(Credo)」は、もともと「信条」「志」「約束」を意味するラテン語で、企業理念や経営理念をより具体的な行動に落とし込んだ文言、あるいはそれを記したツールを指します。会社の理念を組織に浸透させるため、従業員自身がどのような行動を取ればいいのかをわかりやすく明示しています。

例えば、楽天は「楽天主義-成功のコンセプト」の中で以下のような内容のものを作成されています。


クレドは簡潔な行動指針や行動規範を表し、フィロソフィーは組織や個人の広範な考え方や価値観を示すものとして使われます。
つまり、フィロソフィーはより経営理念に近い概念です。

1.2.3 企業理念

経営理念が経営者の使命感や価値観であることに対し、企業理念は企業の価値観と言えます。
企業理念は、行動指針にも近く、企業内で働く全従業員が共有し、「意思の決定」や「行動の基準」となる基本的な方針です。
そうような意味では、経営理念がミッション、企業理念がバリューという捉え方もありますが、経営理念と企業理念は同じ意味合いで扱われることも多く、厳密に区別する必要まではありません。

1.2.4 ミッション・ビジョン・バリュー

ミッションは企業の使命や存在意義を示したもので、ビジョンは目指すべき方向性や将来のあるべき姿、バリューは企業の価値観やミッション・ビジョンをどうやって、何を大切にしながら達成していくのかという行動の判断基準です。

ミッションと経営理念の概念は近しいですが、対社内向けに経営の考え方や進め方について宣言するのが経営理念、対社外向けにその企業の存在に関して宣言するのがミッションと考えると分かりやすいかもしれません。それらをひとまとめにして「ミッション」という使い方をすることも可です。

      
但し、1.1で触れた通り、「経営理念は具体的には、組織や企業が事業活動を行う上での基本的な価値観や信念」と言えますので、バリューという見方もできます。

そして、「ミッション・ビジョン・バリュー」の記事でも触れましたが、細かい定義に捉われることなく、大枠の定義や役割を理解した上で自社独自の定義づけをすることが大切です。
大事なことは経営理念の「浸透」であり「行動」に移すことです。
この点を忘れないようにしてください。

1.2.5 パーパス

パーパスは「目的」の意味で、企業の存在意義(何のためにうちの会社が存在するのか)を表します。
その意味では、ミッションとも近い概念となります。ということは、経営理念とも近いと言えますが、経営理念が社内(社員)に対するメッセージも含めると考えると、パーパスは経営理念よりもより「外」=「社会」を意識したものとなります。
古田土会計でいえば、使命感「日本中の中小企業を元気にし、その社員と家族を幸せにする」もパーパスとも言えます。

1.3経営理念の重要性

経営理念は、組織の指針としての役割を果たすだけでなく、従業員のモチベーションや行動指針を形成する重要な要素です。組織の価値観や信念を共有し、それに基づいて行動することで、組織全体の一体感や目標達成に貢献することが期待されます。

二宮尊徳が残したとされる言葉に「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」というものがあり、道徳=理念と読み替えるとイメージしやすいと思います。

また、京セラの創業者、故稲盛和夫氏も著書「経営12カ条 経営者として貫くべきことの中で、12か条の1番目に「事業の目的、意義を明確にする」と記し、事業の「目的」「意義」を明確にすることの必要性を説いています。具体的には、

さらに、中小企業白書2022年版では以下の分析がされています。
経営理念が全社的に浸透している企業は、労働生産性の上昇幅が大きくなる傾向にあり、経営理念・ビジョンの浸透による効果を通じて、企業業績にもプラスの効果が生まれている可能性があるということからも、経営理念の重要性が伺えます。

1.4経営理念を作成するメリット

経営理念を作成するメリットは主に4つです。

①    会社の方向性が明確になる
②    会社(組織)の一体感の醸成につながる
③    物事の判断基準になる
④    価値観にあった人材の採用が促進される

 

まず、①~③は関連しています。スポーツをイメージして頂くと分かりやすいかもしれませんが、チームの目的・目標は何かが明確になると自ずと結束感が生まれてきます。
そのような経験をされた方もいるのではないでしょうか。
例えば、「全国優勝」という目標だけだとすると、何のために全国優勝するのか?優勝した結果どうなるのか?といった目的が曖昧になり、目標=目的となってしまいがちですが、そこに『元気・勇気・感動をたくさんの人と分かち合い、「自分も頑張ろう」と少しでも思ってもらう。』等というような理念(ミッション)が加わると、周囲に元気や勇気を与えるため。という目的が明確になると共に、それに沿った行動ができているのか?といった指針にもなります。
そして、④については「ミッション・ビジョン・バリュー」の記事でも触れていますので参考にしてください。

参考までに、中小企業白書2022年版に掲載されている「経営理念・ビジョンの浸透状況別に見た、浸透による効果」を転載しますのでこちらも参考にしてください。
 

1.5経営理念の事例

以下に有名企業の経営理念の事例を紹介します。
ミッション・ビジョン・バリューの記事の事例と同じく、共通点やポイント等を考えながら読み進めてみてください。

【京セラ】
全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。

【Amazon】
地球上で最もお客様を大切にする企業

【ソフトバンクグループ】
情報革命で人々を幸せに

【株式会社ファーストリテイリング】
服を変え、常識を変え、世界を変えていく

【東京海上日動火災保険株式会社】
お客様の信頼をあらゆる事業活動の原点におき、
「安心と安全」の提供を通じて、
豊かで快適な社会生活と経済の発展に貢献します。

【株式会社ワークマン】
For the Customers
機能と価格に新基準
世の中にない高機能ウェアを低価格で開発して、生活者の価値基準を変えます。

【ライオン株式会社】
1.われわれは、人の力、技術の力、マーケティングの力を結集して、日々の暮らしに役立つ優良製品を提供する。
2.われわれは、創業以来の伝統である「挑戦と創造の心」を大切にし、事業の永続的発展に努める。
3.われわれは、企業を支えるすべての人々に深く感謝し、誠意と相互の信頼をもって共栄をはかる。

いかがでしたでしょうか。
1行で端的に策定している会社もあれば、数行に渡る会社もあります。
そして、共通した言葉遣いはありませんが、根底に流れている「幸せ」「革新」や「何を大切にするか」といったメッセージは伝わってくるのではないでしょうか。

1.6古田土会計の経営理念

古田土会計の経営理念は以下の通りです。

1.5の事例と比べて頂くと、社外よりもより社員向けのメッセージ性が強い印象を持つかもしれません。その意味ではより「経営者の価値観」に近いと言えますが、「幸せ」「目的」といった要素は盛り込まれています。

2.経営理念の作成方法

2.1経営理念はいつ作るか

誰と何のために何をするか?といった目的を明確にするという意味では、経営理念は本来、創業時に策定しておくことが望ましいです。しかし、現実的に創業時は売上確保・資金繰り確保で精一杯の場合もあります。その場合は短命に終わる可能性が高くなるため、起業・創業時に可能な限り早く策定することが望ましいと言えます。

2.2経営理念は誰が作るか?

経営理念は、上述の通り経営において羅針盤としての役割も果たすため経営者が作成すべきものです。そして、社員に形式的に経営理念を伝えるだけでは伝わりづらくなるため、その意図や背景、ストーリーを経営者自身が社員に対して伝えることも重要です。

2.3経営理念の作成方法

経営理念は戦略ではなく精神的な支柱、心の拠り所のような役割を果たすため、抽象度が高くても構いません。
例えば、「~を通じて世の中に貢献する」等のような形である。実際に1.5の事例を見て頂いても分かると思います。
また、最初から完全なものを作ろうとしなくて大丈夫です。その時の状況や経験によって変わってくるからです。より人生に大きなインパクトを与える出来事があれば自ずと理念も変わってくると思います。まずは、一度作成してみてください。

経営理念は「経営者の価値観」という観点からすると、経営者自身の内省がポイントになります。その意味では「自問自答」が必要となります。
具体的な作成方法については、「ミッション」の記事の中で「ミッションを導き出す質問33」や「4観点で考えてみる」で詳細に解説していますので参考にしてください。

3.経営理念をどう経営に活かすのか?

3.1経営理念を浸透させる方法

経営理念を浸透させる主な切り口は5つです。
①    リーダーシップ
②    社員教育
③    コミュニケーション
④    組織文化
⑤    顧客とのコミュニケーション
こちらについても詳しくは「ミッション・ビジョン・バリュー」の記事の中で紹介していますので参照いただければと思います。

こちらについても、中小企業白書2022年版に掲載されている「経営理念・ビジョンの浸透状況別に見た、浸透に向けて取り組んだ行動・取組」のデータを転載しますので参考にしてください。
こちらでの結論としては、全社的に浸透している企業は「従業員との日々のコミュニケーションでの啓もう」に5割以上が取り組んでいることが分かります。また、全社的に浸透している状況に近づくほど、取り組んでいる傾向も確認できます。

3.2経営理念の浸透度合いの測り方

経営理念の浸透度合いを測る方法としては、従業員満足度調査があります。
古田土会計でも実施していますが、その最初の質問で
・経営理念やビジョンが言語化(明確化)されている
・経営理念やビジョンが社員に浸透している
という項目を設けています。
結果は以下の通りです(10点満点)。

4.まとめ

以上、経営理念について、その役割や重要性、作成方法、またその浸透方法について述べてきました。
経営理念が無い場合は、まず作成することが大切ではあります。そして、作成している場合は状況によって見直しや改善もあり得ます。
しかし、作成自体がゴールではありません。経営理念をどのように社内に浸透させ、行動に結びつけていくかが重要となります。そして、経営理念の浸透は1年等という短期的な視野ではなく、3年、5年、場合によっては10年という期間で捉えて「コツコツ」積み重ねていくことが理念浸透の「コツ」でもあります。

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