【実践】SWOT分析完全ガイド|失敗しない戦略立案の超実用テクニック

昨今、企業環境は常に変化しており、競争が激化しています。さらに、リソース(ヒト・モノ・カネ)の限界も多くの企業にとって重要な問題です。特に経営戦略を立てる際に、現状を正確に把握し、最適な判断を下すことが求められます。
SWOT分析は、こうした課題をクリアするために有効なフレームワークです。この分析は、「内部環境」と「外部環境」を総合的に把握することで、企業や組織が現在の立ち位置を把握し、今後の戦略を立てるための重要なツールとして広く利用されています。
本記事では、どの経営者にも役立つSWOT分析の基本から応用までを解説し、実務に活かす方法をお伝えします。

1.SWOT分析とは
1.1 SWOT分析の概要と目的
SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境をそれぞれプラス要因とマイナス要因に分解し、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素を整理することで、企業の現状を把握し、戦略的な意思決定を支援するフレームワークです。
【内部環境】
強み(Strength) 自社や自社商品におけるプラス要因(自社の強み、競争優位性)
弱み(Weakness) 自社や自社商品におけるマイナス要因(自社の弱点、改善が必要な点)
【外部環境】
機会(Opportunity)自社や自社商品にプラスに働く外部要素(外部環境におけるチャンス)
脅威(Threat) 自社や自社商品にマイナスに働く外部要素(外部環境におけるリスクや競争圧力)
この4つの要素を整理することで、現在の状況や未来の戦略に役立つ洞察を得ることができます。
SWOT分析を実施する最大の目的は、自社の現状を客観的に把握し、強みを活かしながら、弱みを克服し、外部環境の機会をつかみ、脅威に対して適切に対策を講じることです。これにより、戦略を立てやすくなり、効果的な経営判断ができるようになります。
1.2 SWOT分析成功のためのポイント
・目的や目標を明確にする(手段との混同を防ぐ!)
SWOT分析を行う際は、目的・目標を明確化して参加者に共有しておきましょう。そうすることで、議論をより有意義に進めることに繋がります。
・正確な情報収集を行う ~好き嫌い抜きでやるのが大事~
SWOT分析を効果的に活用するためには、まず現状を正しく把握することが重要です。外部環境(市場の動向、競合など)や内部環境(人材、資源、業務プロセス)を客観的にしっかりと分析することが成功のポイントです。感情や思い込みによって正しく分析できないといったケースもよく見られるので注意しましょう。
・最適な人数(3~7名)で行う
SWOT分析を行う人数は、3〜7名程度が望ましいでしょう。
複数のメンバーが参加することで、部門や職位、役職や経験年数などが異なる幅広い視点を得ることができ、より多角的な分析が可能になります。また、人数が多すぎると意見がまとまりにくく、会話が散漫になりがちです。逆に、少なすぎると議論の深度が不足する場合があります。3〜7名程度であれば、意見をしっかりと出し合いつつ、議論を効率的に進めることができます。

2.SWOT分析の実施方法
それでは、実際にSWOT分析のやり方について解説していきます。まず、SWOT分析の流れの全体像は以下の通りです。まずは、内部環境分析と外部環境分析をそれぞれ行います。その結果を基にクロスSWOT分析を行い、戦略を考えていきます。
内部環境分析と外部環境分析を行う際は、SWOTの各要素について洗い出します。初めての場合は後に挙げる質問例を参考にしてみましょう。各要素の洗い出しが終わったら、SWOTの各4要素について、重要なものから順に5個程度に絞ってみましょう。多すぎると、重要なものが見えなくなる恐れがあります。
STEP3までを行い、施策や方向性が見えないときはSTEP1に戻り要素の再抽出→STEP2→STEP3とPDCAを回していくことで、より実現可能性の高い戦略にたどり着けるでしょう。
自社や取り巻く環境を客観的に判断することは意外と難しい作業です。そこで、今回は具体的な質問例をいくつかご用意しました。質問に答えることで要素の洗い出しにぜひ活用してください。
2.1 内部環境分析
自社の強み(例:独自の技術、ブランド力、従業員のスキル 等)を洗い出し、さらに課題となっている弱み(例:リソース不足、管理体制の甘さ、売上の季節的な波 等)を整理します。
初めての方は、以下の質問を参考に内部環境を分析してみましょう。回答を考える際は、無顧客・アナリストやコンサルタント・自社の各部門の代表・経営陣
などの声を参考にするとより有効な回答に近づくでしょう。
また、強みを探す際は以下の記事も参考にしてみてください。
〈参考〉コア・コンピタンスとは?企業の中核を担う強みの見つけ方
https://www.kodato.com/blog/p13089/
内部環境分析を通じて、自社が持つ競争優位性を強化するために必要な戦略を導き出すことが可能です。
以下は、とあるカフェに内部環境分析を行った例です。このように自社の強みと弱みをそれぞれ挙げてみましょう。




お客様の声や様々な部署や立場の方の意見を取り入れるなど、偏った視点にならないように注意することが大切ですね!
2.2 外部環境分析
外部環境分析は、自社が直面している市場の動向や外部要因を把握するプロセスです。ここでは、機会(Opportunities)と脅威(Threats)を分析し、市場の変化に適応するための戦略を立案します。以下の質問を参考に、外部環境を評価しましょう。
外部環境分析を行うことで、外部の機会を最大限に活用し、脅威に対して適切に対策を講じることが可能となります。
※補足 外部環境分析を行う際の注意点※
外部環境分析を行う際、本当に自社にとって機会または脅威になりうるのかを慎重に判断しましょう。「市内の人口が増えている」ではなく、「〇歳~〇歳の人口が増えている」といったようにより詳しい情報に落とし込み、自社のターゲット層と合致するかを確認することも重要です。例えば、幼稚園を展開している企業にとって高齢者の増加は直接的に機会にはならないといったイメージです。



先ほど、内部環境分析で取り上げたカフェを例に、次は外部環境分析を行いました。
各要素についてまずは以下のように挙げてみましょう。
2.3 要素の優先付けと絞り込み
SWOT分析を実施した後、次に重要なのは、その結果をどのように優先付けし、絞り込むかです。洗い出した「強み」「弱み」「機会」「脅威」の各要素に対して、どれが最も重要で、どれが優先的に対処すべきなのかを考えなければなりません。このプロセスを経ることで、ただの分析結果が、実際の戦略策定に活用できるアクションプランに変わります。絞り込みを行う際は以下の3ポイントを意識してみましょう。
・各要素の影響力を評価する
最初に、各要素が自分たちのビジネスやプロジェクトに与える影響力を評価しましょう。強みがどれほど競争優位性を生み出すのか、弱みがどれほどリスクをもたらすのか、機会をどれだけ活用できるのか、脅威がどれほど競争に影響するのかを考えることが大切です。例えば、強みが強力であっても、それを活かす環境が整っていなければ、優先順位を下げる必要があります。
・緊急性と重要性を掛け合わせる
次に、各要素の「緊急性」と「重要性」を掛け合わせて評価します。例えば、今すぐに対処しないと大きな影響を与える可能性がある「脅威」があれば、それを最優先で取り組むべきです。一方、機会が将来的に発展する可能性があっても、すぐに取り組む必要がない場合は、後回しにすることができます。
・リソースと制約を考慮する
最後に、現実的なリソースと制約を考慮します。たとえある要素が重要であっても、それを実現するためのリソース(時間・人材・資金など)が不足している場合、その優先順位を下げることになります。逆に、限られたリソースでできるだけ大きな効果を得られる要素に注力することが、効果的な戦略を生み出します。
2.4 クロスSWOT分析
SWOT分析(内部環境分析と外部環境分析)の絞り込みまで完成したら、次にSWOT分析を基に「クロスSWOT分析」を行い、戦略を立案します。
クロスSWOT分析とは、以下の図のようにSWOT分析で抽出した要素を掛け合わせ、強み(S)と機会(O)を組み合わせて新たなビジネスチャンスを見つけたり、弱み(W)と脅威(T)を組み合わせてリスクを軽減する戦略を考える手法です。
これは、以下の4つの組み合わせを検討します
S強み × O機会(積極化戦略): 強みを活かしてチャンスを掴む戦略
W弱み × O機会(改善戦略):弱みを克服してチャンスを逃さない戦略
S強み × T脅威(差別化戦略):強みを活かして脅威を回避し機会に変える戦略
W弱み × T脅威(防衛戦略):弱みの理解と脅威の回避でリスクを最小限にする戦略
例として、先ほどのカフェのケースで見ていきましょう。
今まで挙げたSWOT分析を整理すると以下のようになります。
ここで得られた情報をもとに、クロスSWOT分析を行い、カフェが実行できる具体的な戦略を4つに分類します。
このように、自社の現状を客観的に把握し外部環境を踏まえた今後の戦略立案を行うことができます。
3.まとめ
SWOT分析は、企業の現状を把握し、強みを活かして弱みを克服し、機会をつかんで脅威に備えるための強力なツールです。分析の際には、目的を明確にし、正確な情報収集を行うことが重要です。その結果を基にクロスSWOT分析を実施し、戦略的な意思決定に役立てましょう。
このようにSWOT分析を実践すれば、変化の激しい環境においても柔軟で強力な経営戦略を構築することが可能になります。