ミッション・ビジョン・バリューの定義から作成・浸透方法まで徹底解説!

ミッション・ビジョン・バリュー、それぞれの言葉の意味をなんとなく想像できても、自分の言葉で説明できる方は意外にも少ないのではないでしょうか。
ミッション・ビジョン・バリュー、略してMVVは簡単に言うと次のような意味を持ちます。
・ミッション:わが社が社会で実現したいこと
・ビジョン:未来の具体的なイメージ
・バリュー:ミッション・ビジョン達成のための日々の行動や判断の軸となる考え・価値観
さらにこの記事では、以下のような点についても詳しく説明していきます。
・MVVの具体的な意味と考え方
・MVVを実際に作成する方法
・MVVを組織に浸透させる方法
一般的な記事では理論的には分かる、頭では分かるけど、実際どのように作ってどのように浸透させるの?というところが語られていませんが、私たちが実際に現場で行っているリアルな浸透方法や取り組みも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、MVVについて詳しく知りたい方は該当の項目のみを読んでいただいても問題ありません。
MVVとはどのようなことを知りたいという方は1章から読んでいただき、それぞれの定義や全体像が理解できている方で作り方を知りたい方はミッション(4章)、ビジョン(5章)、バリュー(6章)を読んでみてください。
株式会社古田土経営で執行役員を務めており、会計・財務コンサルタントとして本業を持つ傍ら、
中小企業診断士・ビジネスモデル・デザイナー®
人事評価制度や社員研修、新規事業構築合宿などの新サービスを展開しています。
また、長年社内でのMVV作成・浸透施策立案においても中心的な役割を担っており、
お客様の経営計画書の作成支援も200を超えています。
社内外の経験・実績を踏まえて分かりやすくお伝えします!
1 ミッション・ビジョン・バリューとは
1.1 ミッション・ビジョン・バリューの全体像と定義
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、会社が進むべき方向を社員全員と共有するための「経営の言葉」として、非常に重要な役割を果たします。
まず、ミッション・ビジョン・バリューとは何か、という定義を明確にしておきます。
ポイントは
① 「ミッション」にはゴールがない
② そこに行きつくための途中経過が「ビジョン」
③ ミッション・ビジョンを達成するための行動指針・価値観が「バリュー」
となります。
また、ミッション=目的、ビジョン=目標という表現もできます。
また、パーパスを含め、別の表現をするとこのようになります。
そしてこちらは、経営理念やクレド、フィロソフィー等類義語との相関関係のイメージとなります。
例えば、桃太郎に例えるとこのような形になります。
★注意!!
ここまで、定義を事例も交えて解説してきましたが、あまり言葉の定義や使い方に固執しないことが大切です。
「経営理念とは?ミッションとは?何が違う??」などを考えすぎると前に進まなくなります。
大切なことは、会社の考え方や方向性を言語化、見える化をして社員と共有し、浸透、実践していくことなので、自社なりのMVVの定義を決めていくことをお勧めします。
1.2 古田土会計のミッション・ビジョン・バリュー
古田土会計グループのミッション・ビジョン・バリューは以下の通りとなります。
経営理念はミッションとも言えますし、バリューとも言えますが、古田土会計グループでは対社内・社員向けのメッセージという意味で使っているためここではバリューとして表現しています。
また、行動指針は経営理念を実現するための行動指針と位置付けています。
ビジョンはイラストにすることもお勧めです。
2 ミッション・ビジョン・バリューはなぜ必要?
ミッション・ビジョン・バリューが大切、だということを否定する方は少ないと思いますが、「なぜ必要?」という質問に対しては割とあいまいな回答が多いのではないでしょうか。
一言で言うと「この指とまれ!」となります。
日本の人口減少、採用難など今後の社会構造の変化を乗り越えていくにあたり、経営者がしっかりとしたビジョンを掲げ「この指止まれ!」という姿勢をはっきりと示すことがなにより大事になってきます。
そして、企業戦略の策定や実行においても非常に重要です。ミッション、ビジョン、バリューが明確に定義され、組織内で共有されることで、組織全体が同じ目標に向かって一体となり、より効果的な意思決定や実行が可能になります。
より具体的に見ていきましょう。
2.1 よい組織を築くため
「ビジョナリー・カンパニー」という名著がありますが、その中で以下のように述べられています。
※ビジョナリー・カンパニーとは
ビジョンを持つ企業、未来志向(ビジョナリー)の企業、先見的(ビジョナリー)な企業であり、同業他社から広く尊敬を集める企業である。そのほとんどが業界の超一流企業であり、何十年もの間、その地位を保っている。
つまり、「ミッション」です。
こちらも、同様に①は「ビジョン」であり、②は「バリュー」とも言えます。
つまり、永続的に発展している企業は、「ミッション・ビジョン・バリュー」を持っていることが共通項ということが暗に述べられています。
それでは、ミッション・ビジョン・バリューが無いと具体的にどうなるのかをまとめます。
大きく3つに分けられます。
① 目標が不明確になる
企業は、何を達成しようとしているのかが分からず、経営判断が迅速にできなくなります。また、社員にとっても、自分たちがどのような目標に向かって仕事をしているのかが不明確であれば、モチベーションの低下や仕事への取り組み方に不安が生じる可能性があります。
② 組織全体が統一されていない
ミッション、ビジョン、バリューがない場合、組織内の各部署や個人がそれぞれ独自の方向性や目標を持って仕事を進めることになります。このような状況では、組織全体が一体となって協力することが難しくなり、業務プロセスの不適切な改善や顧客ニーズの把握不足などが起こり得ます。
③ 企業文化が形成されない
ミッション、ビジョン、バリューがない場合、企業にとって重要な価値観や行動指針が共有されないことになります。このような状況では、社員がそれぞれ自分の判断で行動することになり、企業文化が形成されないことになります。
以上のように、ミッション、ビジョン、バリューがない場合、企業の経営方針や社員のモチベーション、業績に悪影響を与える可能性があるため、重要な指針となっています。
2.2 よい人材を確保するため
しかし、もう1つ、大きな影響を与えるものに採用があります。
これまでは企業が人を選ぶ時代でしたが、今・これからは人が企業を選ぶ時代に突入しています。
その理由は、そもそもの少子化、人口減という問題もありますが、求職者の価値観が変わってきていることもあります。
具体的には、「金銭的な報酬」から自身の使命感や社会貢献、自己成長など「意味に関する報酬」を求めるようになってきていることです。
言い換えると、自分の成果が目に見える目的・目標から自分のこと以外で目に見えない目的・目標に変わってきているとも言えます。
そのため、
ミッション・ビジョン・バリューが無いと、
求職者に企業の目指している所や魅力が伝わり
づらくなり、採用難に陥る可能性が高くなります。
2.3 永続的な発展のため
ミッション、ビジョン、バリューがなくても成功している会社は存在しますが、その成功は限定的であると言えます。
成功していると評価されている企業でも、長期的な成長や持続可能性については不透明である場合があります。
2.2同様に、ビジョナリー・カンパニーの中では以下のように述べられています。
つまり、ミッション、ビジョン、バリューがなくても成功している企業は、市場競争力や優れた製品やサービス、顧客サポートなどによって成功していることが多いということになりますが、ミッション、ビジョン、バリューがないまま成功している企業が、長期的な成長や持続可能性を実現することは困難であるということが言えると思います。
また、成功していると言われる企業でも、徐々に経営戦略を見直して、ミッション、ビジョン、バリューを策定する場合もありますし、長期的な成長や持続可能性を考えるうえでは、ミッション、ビジョン、バリューを策定することが必要不可欠です
経営方針に明確な指針がない場合、企業が取るべき方向性や意思決定の基準が不明確になり、企業文化やブランド価値などにも悪影響を与える可能性があります。
3 ミッション・ビジョン・バリューの作成のポイント
ミッション・ビジョン・バリューの作成のポイントは2点です。
① ストーリー性
② 一貫性
つまり、「分かりやすさ」と「伝わりやすさ」です。
ストーリー性があると、ミッション・ビジョン・バリューが人々の心に響きやすくなり、共感を呼びやすくなります。また、ストーリー性を持ったミッション・ビジョン・バリューは、社員や顧客など、企業に関わる人々にとって、より具体的かつイメージしやすいものとなります。また、ストーリー性があることで、企業の歴史や文化、価値観などが表現され、企業の独自性や強みが伝えられます。そのため、ストーリー性を持ったミッション・ビジョン・バリューを作成することは、企業のブランディングやアイデンティティの確立にもつながります。
よくある事例としては1章でも例に挙げた「桃太郎」があります。
改めて、ミッション・ビジョン・バリューの性質と共に整理すると理解しやすいと思います。
古田土会計グループの例は先にあげた通りですが、改めて整理すると以下のようになります。
ミッションは永遠に追い続けるものですが、そこには創業者の監査法人時代に感じた思いが込められています。
バリューには、創業してから起こった出来事や歴史を踏まえての価値観や想いが込められています。

ここからは事例や作成方法などを個別に見ていきますね。
まずは「ミッション」から見てみましょう。

4 ミッション
4.1 ミッションの事例
実際、皆さんがよく知っている企業ではどのようなミッションを掲げているのでしょうか。
作成にあたりイメージを膨らませるために業種別にミッションの事例を挙げてみます。
共通点はあるだろうか?等と是非考えながら見てみてください。
【飲食業】
スターバックスコーヒージャパン株式会社
「人々の心を豊かで活力あるものにするために
―― ひとりのお客さま、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティーから」
【小売業】
株式会社メルカリ
「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」
株式会社ファーストリテイリング
「本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します」
株式会社オートバックスセブン
「オートバックスは 常にお客様に最適なカーライフを提案し豊かで健全な車社会を創造することを使命とします」
【製造業】
キリンホールディングス株式会社
「キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します」
トヨタ自動車株式会社
「わたしたちは、幸せを量産する。
__だから、ひとの幸せについて深く考える。
__だから、より良いものをより安くつくる。
__だから、1秒1円にこだわる。
__だから、くふうと努力を惜しまない。
__だから、常識と過去にとらわれない。
__だから、この仕事は限りなくひろがっていく。」
いかがでしょうか?
そして、これらの共通点は何か見つかりましたでしょうか。
「幸せ」、「ゆたか(豊か)」、「価値」、「よろこび」等の共通した言葉が入っていると思います。
つまり、「世の中に何を提供するか?」ということです。
そして、「モノ」ではなく「コト」ということがポイントとなります。
まとめると、世の中にどのような「コト」を提供したいか?
ということになります。
4.2 ミッション作成のポイント
ミッションを作成するポイントの1つは上述した通り「コト」を表現することです。
「コト」の内容は、例えば、「貧困をなくす」、「子供たちが安心して暮らすことが出来る社会をつくる」、「地球環境を守る」等といった社会課題が中心となります。
そしてそれを言語化する=ミッションの作成方法の全体像としては、
自身に対して、「社会の何を解決したいのか?」、「それはなぜか?」、「そう思ったきっかけは何か?」、「なぜそう感じたのか?」、「その結果どうなるのか?どうしたいのか?」等と深堀りしていくことが大切です。自己探求といってもよいかもしれません。
ということで、次はその「問い」についてさらに具体的に見ていきます。

それでは、実際にその「コト」=「ミッション」を発見する旅に出てみましょう。
ミッションをこれから作成される方は以下の質問を通じて作成へ、すでに作成されている方も改めて確認の意味でご覧ください。

4.3 ミッションを導き出す質問33
ミッションの作成にあたり、ミッションを導き出すための質問を以下に列挙しました。
静かな場所や集中できる場所で是非取り組んでみて下さい。
ただし、全部の質問に答える必要はなく、自分がこれだと思えるものを見つけてもらえるためにこれだけの質問を集めたので必要に応じて選択してみてください。
もちろん、これ以外にもご自身で思いついた問いがあればそちらも考えてみて頂ければと思います。
質問は大きく3つのパートに分かれています。

改めて自分自身を見つめなおしてみると発見があるかもしれません!

パート1 自己分析
__1.創業のきっかけは何でしたか?
___何が起こり、なぜこのビジネスを始めることに決めたのでしょうか?
___回答例:会計事務所に勤務していた際に、お客様が倒産し社長の家族もバラバラになり社員と
_______その家族の苦労を目の当たりにした。
_______その時に、このような会社を二度と出したくない、
_______日本は中小企業で支えられているということを認識し、中小企業の役に立つ仕事をしたいと思った。
__2.今の仕事をしている理由・きっかけは何ですか?
___回答例:今のサービスを通じて会社がよくなり、
_______如いては社員と家族が幸せになることにつながっていると実感できるため。
_______過去、倒産しそうな会社が私のアドバイスをきっかけに立ち直り、今は表彰を受けるまでに成長。
_______その喜びや充実感は何物にも代えがたい。
__3.元々やりたかったことは何ですか?それはなぜですか?
___回答例:スポーツ関連の仕事(コーチ、トレーナー、イベント企画など)
_______スポーツを通じて色々なことを学んだので、それを今度は子供たちに伝えていきたいため。
_______また、スポーツを通じて地域活性化にも寄与できるため。
__4.これまでの困難は何でしたか? どのようにそれらを克服してきましたか?
____そもそもなぜその困難を克服しようと思ったのですか(がんばれたのですか)?
___回答例:社員が交通事故にあい障害を負った。社員を守りたいという一心で無我夢中で働いた。
_______そして、この事故をきっかけに会社が社員を守るにはお金を貯めておくことが必要だと感じた。
__5.過去、一番他人から喜ばれたことは何ですか?なぜ喜ばれたのですか?
___回答例:お客様の会社で初めて決算賞与を支給できるようになった時に社長や社員の皆さんから感謝されたこと。
_______リーマンショックや取引先の倒産、離職など苦しいことが立て続けに起きたが、
_______その都度お客様に寄り添い、一緒に方向性や対策を考えて行動してきた結果、
_______業績も持ち直して設立以来、初めて決算賞与を支給できることとなったため。
__6.あなたのビジネスが解決しようとしている問題は何ですか?
____なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:中小企業で働く社員の処遇改善や中小企業の倒産を防ぐこと。
_______新聞などで報道される賞与実績は大企業(その中でも公表してよいという企業)で
_______世の中の実態を表してはいない。
_______生活に苦しんでいる方も多く、そのような方たちの役にたちたいと思った。
__7.あなたが持つスキルや経験をビジネスにどのように活かしますか?
___回答例:税理士の知識や監査法人での勤務経験などを通じて中小企業の経営者に対して数字の見方を教える。
_______金融機関での経験を生かして、与信の見方や融資のポイントなどを伝える。
__8.あなたが持つスキルや経験は誰の役に立ちそうですか?
___回答例:中小企業の経営者とその家族。社員とその家族。ビジネスマン。
_______金融機関、コンサル会社など。学生(中小企業の実態を伝えることができる)。
__9.日頃気になるニュースは何ですか?気になることに共通点はありますか?
___回答例:倒産の動向、経済政策、事業承継、各業界の動向、金利の動向、円の動向
___共通点:日本経済(中小企業)に関すること
__10.あなたが一番時間を使っていることは何ですか?なぜそれに時間を使うのですか?
___回答例:読書・動画(ビジネス系)知識のインプット
_______新しい知識を学び、ビジネスに生かすため。自身の成長のため
__11.あなたが一番お金を使っていることは何ですか?なぜそれにお金を使うのですか?
___回答例:旅行。色々な場所に行って価値観・視野を広げるため
_______家族との時間を大切にするため。リフレッシュするため

こちらも色々な視点から考えてみると思いがけない発見があるかもしれません。
普段「考えているようで考えていなかったかも、、」と思うかもしれません。
子供や高齢者など当事者になり切って考えてみてください。

パート2 社会課題について、視点を変えながら考える質問
__12. 今ある社会課題で5年後、10年後も解決されていない課題は何でしょうか?
___何が起こり、なぜこのビジネスを始めることに決めたのでしょうか?
___回答例:少子高齢化、気候変動と環境破壊、核兵器、原発(核エネルギー)と廃棄物管理、
_______格差と貧困、核家族化
__13. どのような社会課題に取り組みたいと考えていますか?
___またはどのように貢献したいと思っていますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:格差と貧困
_______収入の格差が教育格差につながっており益々拡大している。
_______今後の日本の成長を支える人材が収入格差によって影響を受けることは好ましくない。
_______政府の方針などもあるが、できることとして、
_______中小企業がもっと利益を上げて給与・賞与をもっと払えるようになったらよい。
__14. 子供から見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:再生可能エネルギーの普及
_______教育の普及(オンラインで世界中どこでも教育を受けることが出来る)
_______健康・医療・多様性(ジェンダーレス)
__15. 主婦(主夫)から見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:男性の育児参加・キャリアの選択の多様化・ワークライフバランス・
_______家事の効率化、子育て支援、共働き支援
__16. シングルマザー(ファーザー)から見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:子育て支援・教育の機会の均等化・ジェンダーレス
_______地域コミュニティなどシングルパレントの交流や支援グループの増加
__17. 共働きの夫婦から見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:ワークライフバランス・男性の育児参加、家事の効率化、
_______保育施設の充実・キャリア支援の充実
__18. 高齢者から見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:高齢者の生活支援、医療・介護
_______高齢者向けのシニア向けの活動・交流の場の拡充、シルバーエコノミーの発展
__19. 経営者から見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:サスティナビリティへの取組・ダイバーシティ&インクルージョン
_______人材育成と働き方改革・イノベーションと技術の活用
__20. 後継者から見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:デジタル化による事業や技術の継承、後継者不足・教育
_____グローバルな事業展開、人材育成と多様化の推進
__21. 大企業のサラリーマンから見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:ワークライフバランスの改善
_______働きがいの創出・働き方の改善(場所や時間を問わない働き方)
_______グリーンイニシアティブの推進・DXによる業務効率化
_______多様性とインクルージョンの促進
__22. 中小企業のサラリーマンから見たときに、現在の社会課題で解決できそうなことは何でしょうか?
___そしてどのように貢献できますか?なぜそのように思ったのでしょうか?
___回答例:地域貢献(地域との連携)、スキルアップ・教育支援
_______ワークライフバランス、テクノロジーの活用・効率化
__23. 制限がないとしたら、社会がどのようになったら最高ですか?
___回答例:日本を元気にする。中小企業で働く社員、家族が元気でワクワクしている。

「生きがいチャート」に則って考えてみましょう。
「好き」「得意」「需要がある」「お金になる」が重なる部分が「生きがい」になる、という考え方です。
もちろんこの考え方だけが「生きがい」ではありませんが、ミッションを考える一助になります。

パート3 好きなこと×世間が必要とすること(需要)=使命
__24. 時間を忘れてやってしまうことは何ですか?
___回答例:スポーツ、映画鑑賞、動画鑑賞(ビジネス関連)
_______読書(ビジネス関連-経営戦略・マーケティング関連)
_______勉強会や研修資料の作成、誰かに何を教えること
__25. もし経済的に安定していたら、自分の時間を何に使いますか?
___回答例:地域貢献(スポーツ教室等子供の教育、中小企業支援)、旅行
__26. お金がもらえなくてもやり続けられることは何ですか?
___回答例:大人・子供問わず教えること
__27. 何時間でも話し続けられることは何ですか?
___回答例:経営計画、経営戦略論(事例やビジネスモデル、マーケティングなど)
_______財務・会計、組織論
__28. 身近な人々に感謝された経験は何ですか?
___回答例:お客様との打合せ(月次打合せ)、社員からの相談・面談
__29. 持っているスキルで需要が高いものを3つ挙げるとすると?
___回答例:経営計画コンサルティング、財務コンサルティング、コーチング
__30. 他人に教えられること、他人を助けられることはないですか?
___回答例:経営計画、財務・会計(収益の上げ方、資金繰り)、コーチング、HR全般
__31. 社会の問題を少しでも解決できそうなスキルは持っていませんか?
___回答例:経営計画、財務・会計、税務、コーチング、HR全般
__32. どうすれば、自分の友人や家族、身近なコミュニティに貢献できますか?
___回答例:地域のクラブチームへの参加、指導、部活動での応援・支援(食事・健康管理など)
__33. 好きなこと(24~27)、需要があること(28~32)で重なっている部分はありますか?
___回答例:経営者向けの教育(数字の見方、経営計画書など)、コーチング、コンサルティング

質問を通じてご自身なりの「ミッション」が見えてきましたか?
それでもまだ、、という方のために少し違う観点を用意しました。
「目的」と「目標」の違いが分かると「ミッション」=「目的」というイメージが持てると思います。

4.4 4観点で考えてみる
4.3の質問である程度まとまればそれでも大丈夫ですが、それだけではまだまとまらない、という方は こちらも試してみてください。
ここまでで出てきた目標や価値観等を図のような4つの象限に当てはめてみると整理できます。
・自分有形:主に自分・自社のことで有形の目的・目標
・自分無形:主に自分。自社のことで無形の目的・目標
・他者有形:主に自分・自社以外のことで有形の目的・目標
・他者無形:主に自分・自社以外のことで無形の目的・目標
※有形:お金・物・人材・情報・時間・成績・順位・地位・役割等
※無形:誇り・気持ち・感情・意欲・態度・姿勢・資質等
※他者:得意先、仕入先、外注先、従業員、株主、地域住民、
祖先・親、師、親戚・兄弟、職場の仲間、子、孫、友人、配偶者、地域社会等
例えば、以下のようなイメージです。
ここで整理した、左下の象限「他者無形」の目標が「目的」であり「ミッション」に近くなります。
これらをまとめ、一言で表すことができればミッションになり得ます。
4.5 ミッションに関するQ&A
1)古田土会計のミッションはどのように生まれた?
古田土会計のミッションは「日本中の中小企業を元気にし、その社員と家族を幸せにする」です。
このミッションはどのように生まれたのでしょうか?
古田土会計のミッションの変遷は以下の通りです。
このミッションは創業者で現会長の古田土満が考えたのもですが、初めて経営計画書を作成した第9期には存在していませんでした。
この文言が登場したのは第15期あたりとなります。
それではその時に初めてこの想いを持ったのかというと、そういうことではありません。
元々監査法人に勤めていた時には、大企業の監査がメインであり世の中で困っている人たちの役に立っていない、という想いから古田土会計を創業しました。
そして創業後、実際にお客様と向き合う中で数字に弱い経営者が多くより問題意識を持つようになると同時に、経営計画書の勉強をしている中で、「月次決算書と経営計画書を使って中小企業を元気にする」という使命感(ミッション)が生まれました。
2)ミッションは時代に応じて変わる?
ミッションは時代に応じて変えるべきかどうかは、状況によります。
一般的に、会社のミッションは、既述のとおり価値観に基づいて設定されます。しかし、社会や技術の進化に伴い、新たな課題や機会が生まれ、新たな価値観が芽生えることもあると思います。
ミッションを時代に応じて変える必要がある場合はどんな時でしょうか。
例えば、新たな技術の登場や社会の変化によって、以前のミッションが不適切になったり、新たな方向性を求める必要が出てきたりすることがあります。このような場合、ミッションの見直しや再定義が必要となります。
一方で、ミッションは目的または長期的な目標を示すものであり、基本的な価値観や信念に基づいていることが多いです。そのため、ミッションを頻繁に変更しすぎると、組織の方向性が曖昧になったり、信頼性が失われたりする可能性があります。
結論として、ミッションを時代に応じて変えるべきかどうかは、具体的な状況や目標によります。ミッションの変更が組織の方向性をより良く反映し、成果を上げるために必要な場合は、変更することが適切な場合もあります。
3)ミッションの達成度は図ることができる?
ミッションの達成度は以下のように表すことができます。
感動の深さ×感度を与える人の数=使命感(ミッション)の達成度
「新しい経営の教科書」 岩田松雄著 コスミック出版より引用
古田土会計の使命感は「日本中の中小企業を元気にする」です。より多くのお客様(中小企業)により深い感動を感じていただければ古田土会計の使命感(ミッション)がより実現します。お客様の数が増えても、採用や教育が間に合わず、サービスの質が落ち、お客様の期待を裏切ってしまったらむしろ使命感に反する方向になってしまいます。
4)ミッションと利益は相反する?
企業の目的はミッションの実現ですが、一方で継続することも大事であり、継続するためには利益が必要です。
利益は企業の目的ではありませんが、手段として必要となります。
売上高は、どれだけ自社の商品・サービスが世の中に受け入れられているかという指標となりますが、利益はその効率という風に考えることができます。

先ほどと同じように、まずはイメージしやすいように事例やポイントをご紹介します。

5 ビジョン
5.1 ビジョンの事例
続いてビジョンについて深堀りしていきます。
まずはいくつか事例をみてイメージを膨らませてみて下さい。
【日産自動車】
「Nissan Ambition 2030」を2021年に公表しました。
電動化を戦略の中核とし、移動と社会の可能性を広げるワクワクするクルマと技術を提供
・今後5年間で約2兆円を投資し、電動化を加速
・2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種のワクワクする新型電動車を投入し、グローバルの電動車のモデルミックスを50%以上へ拡大
・全固体電池を2028年度に市場投入
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/211129-00-j
【KDDI株式会社】
KDDI VISION 2030
「つなぐチカラ」を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。
https://brand.kddi.com/managementplan/kddivision2030/
【株式会社ローソン】
目指すは、マチの“ほっと”ステーション
https://www.lawson.co.jp/company/corporate/data/idea/
【LINE株式会社】
Life on LINE
私たちのビジョンは、24時間365日生活のすべてを支えるプラットフォームになることです
https://linecorp.com/ja/company/mission
【株式会社リクルートホールディングス】
Follow Your Heart
一人ひとりが、自分に素直に、自分で決める、自分らしい人生。本当に大切なことに夢中になれるとき、人や組織は、より良い未来を生み出せると信じています。
https://www.recruit.co.jp/company/philosophy/
いかがでしょうか。
日産自動車は少々長いかもしれませんが具体的に、他の企業は端的に表されていると思います。
5.2 ビジョン作成のポイント
ビジョン作成のポイントは4つです。
但し、前提として、ミッション・バリューとの整合性・関係性が保たれているということは忘れないようにしましょう。
①「未来」かつ「具体的」
1章の定義で示した通り、大きなポイントは、「未来」のことで「具体的」なものです。例えば、「革新的な製品をつくろう」は抽象的ですが「ポケットに入るラジオをつくろう」は具体的です。この言葉はソニーの井深大氏がトランジスタという新しい技術を手にした時の言葉ですが、新しい生活シーンをイメージさせ、技術者を奮い立たせました。
具体的な方がより社員やお客様・消費者がイメージしやすく共感を得やすくなり得やすくなります。
現在から適当な距離のある未来についてのビジョンを書くことです。
ある高校の部活動では、「全国優勝」を目標に掲げていましたがいつも関東大会止まりでした。
ある時、それを「連覇」とスローガンに掲げたことにより、毎年全国優勝をするといった変貌をとげたのです。
ここのポイントは、「連覇」は優しくはないが、非現実的な目標でもない、ということです。これにより部員の意識や行動が一つ上の段階に移行し、何連覇も成し遂げていくことになりました。
※佼成学園高等学校 アメリカンフットボール部 ロータス
2022年まで7年連続で、高校日本一を決するクリスマスボウルに出場を果たし、2022年の優勝は2年ぶり5回目。
7年前に初出場・初優勝、その後3年連続「連覇」を成し遂げて、関東では一度も公式戦に負けたことがないという驚異的なチームです。
③ワクワクする内容であること
①と②にも関係しますが、社員や消費者が夢を感じ、ワクワクする内容であることが大切です。
例えば、単に数値で「2030年の目標はシェアNO.1を実現すること」、「売上1兆円を達成すること」といっても(特にZ世代は)ワクワクしません。
それによって人々の生活や社員はどのようになるのか?その先に広がる世界がどのようなものか?といったことが含まれてはじめてビジョンとなります。
④短いフレーズで表現すること
5.1の事例で見た通り、端的なフレーズ(一言)で表現することです。
その方が分かりやすく、伝わりやすいからです。
短いといっても捉え方は様々ですが、2~3行以内を目安に考えてみてください。
但し、一言でまとめることはそう簡単ではありません。その場合は、古田土会計の事例の通り「未来像」という形で表現することでも問題ありません。

ここからは実際の質問を通じて「ビジョン」の作成にチャレンジしてみましょう。
それらを踏まえてここからチャレンジしてみてください!

5.3 ビジョンを導き出す質問30
実際にビジョンを作成する際に役立つ30の質問を用意しました。
大きく3つのパートに分かれていますが、全ての質問に答えて頂いてもよいですし、答えやすいものから答えて頂いても問題ありません。
これらの質問に答えることで、ビジョンが具体的で実現可能なものとなり、組織やプロジェクトの成功に向けた方向性を確立するのに役立ちます。ビジョンは明確で共有可能であるほど、チーム全体が共感し、協力して実現することが容易になります。

実際にどれだけ具体的な「景色」=イメージが思い浮かぶでしょうか?

パート1:現在から未来を考える
①私たちは将来、どんな景色を見ていたいか?
②その未来像は十分に具体的か?
③その未来像は自分中心ではないか?
④ビジョンが実現した時、あなたの会社は社会からどんな言葉で感謝されているか?
⑤ビジョンが実現した時、あなたの事業は地球環境にどのような影響を与えているだろうか?
その結果、自然環境にどのような影響があるだろうか?
⑥あなたが、あなたの子供世代に残したいものは何か?
⑦2200年を生きる未来の人のために何を残したいですか?
⑧未来の人たちからあなたはどんな存在として思い出されたいですか?


パート2:物語思考で未来から考える
時間軸を定めすに、自社の理想の未来を描き、自分の中で理想的な未来の出来事がメディアに取材され、記事として掲載されているところを想像します。
①その記事はどんなメディアだろうか?
②ヘッドラインはどのようなもの(見出し)だろうか?
③いつ、どのような出来事が起こったか?
④その出来事が実現した結果、自分の周りの人の生活にどんな変化が起こったか?
(今と何が違いますか?
⑤その時、誰がどのように喜んでくれているでしょうか?
⑥その出来事を実現するうえで、自分たちのどのような能力が使われただろうか?
そのために自分たちはどのように協働したのだろうか?
⑦その出来事が実現するうえで、大きな壁は何だったか?
それはどのようにして乗り越えられたのだろうか?

テレビなどでインタビューを受けている場面を想像してその世界に入り込んでみて下ささい。
誰かに実際にインタビュー(質問)してもらうとより臨場感がでます!

パート3:ヒーローインタビュー形式で考える
物語思考からさらに具体的にイメージする際に有効です。
自社・自分自身がテレビや新聞等のインタビューを受けているような感覚で取り組んでみてください。
①ビジョンが実現した(夢が叶った)ということですが、どのようなビジョンが達成されて(夢が叶った)のですか?
②その時の状況を是非詳しく教えてください。
③ビジョン(夢)が達成できて、今どのような気持ちですか?
④なぜそのビジョン(夢)を持ったのか、そもそもの動機や原点となる体験を教えてください。
⑤ビジョン(夢)を実現したことで、周りからはどんな風に言われていますか?
⑥特に印象に残っているシーンはありますか?
⑦そのビジョン(夢)が叶うことで周りの人に、また社会に、どんな影響を与えましたか?
⑧ビジョン(夢)を叶えるために具体的にどんなことをしてきたのですか?
⑨ビジョン(夢)を叶えるためのキーパーソンは誰でしたか?
⑩何が成功の要因でしたか?
⑪多くの人は諦めてしまうのに、なぜあなた(会社)は諦めなかったのですか?
⑫ビジョン達成(夢を叶える途中)にどんな困難がありましたか?それをどのように乗り越えたのですか?
⑬ビジョンを達成した(夢を叶えた)時、誰が一番喜んでくれましたか?どのように喜んでくれましたか?
⑭ビジョンを達成した(夢を叶えた)今、誰に、どんな言葉で感謝したいですか?
⑮ビジョンを達成する(夢を叶える)ために踏み出した、最初の一歩は何ですか?
※これらの質問はこちらの文献から引用、参照しています。
フォレスト出版 予祝ドリームノート ひすいこたろう/大嶋啓介 著
ダイヤモンド社 経営理念2.0 佐宗邦威 著
5.4 ビジョンに関するQ&A
1) ビジョンは状況に応じて変えてよい?
ビジョンは外部環境の変化など状況に応じて変えてもよいですが、毎年など頻繁に変更することは避けた方がよいです。毎年変わると「会社は結局どこに向かっているの?」となるためです。
2) ビジョンはいくつあってもよい?
ビジョンお客様、社員とも共有するため、できれば1つまたは1つにまとめて表現することがbetterです。しかし、古田土会計のように「未来像」のような形で作成する場合は社員の未来像・組織の未来像・事業の未来像の3つになり、端的にまとめるものとは異なるためカテゴリーごとに作成してもよいです。もちろん、両者の併用も可です。
3) ビジョンは社長1人で考えなくてもよい?
中小企業の場合は原則は社長が考えた方がよいです。なぜなら、社長の仕事は「決定すること」だからです。方向性や戦略を決定することが社長の仕事なので、ビジョンも社長が考えることが自然です。
一方で、組織が成熟化してきたり幹部が育ってきた場合には周囲の意見も取り入れてより良いビジョンを作成することもありです。これはこれで作成に携わった社員に当事者意識が芽生えるといったメリットもあります。

ミッション・ビジョンを達成するための行動・価値観を見出していきましょう!
ここで決めたことが絶対ではなく、毎年見直すこともありますのでまずは肩の力を抜いて考えてみて下さい。

6 バリュー
6.1 バリューの事例
ミッション・ビジョン・同様、より具体的なイメージをもっていただくために業種別にバリューの事例を挙げます。
【飲食業】
スターバックスコーヒージャパン株式会社
私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。
お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。
勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。
スターバックスと私たちの成長のために。
誠実に向き合い、威厳と尊敬をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。
一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。
私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます。
【小売業】
株式会社メルカリ
Go Bold 大胆にやろう
世の中に大きなインパクトを与えるイノベーションを生み出すためには、メンバー全員が前例にとらわれず、大胆にチャレンジすることが大切です。そのためには挑戦を続け、数多くのトライアル・アンド・エラーを繰り返し、失敗から学びを得ることが重要です。常に会社や自身のビジョン、あるべき姿を見失わず、周囲をリードしながら、ミッションの達成を目指します。
All for One 全ては成功のために
大きな成功を得るためには、チームの力を合わせることはもちろん、やるべきことを見極め、決定したことに全員でコミットすることが大切です。また、メンバー全員が手段や役割に固執せず、成功するために何が必要で、何を求められているのかを考え抜き、パフォーマンスを最大限に発揮することで、ミッションの達成を目指します。
Be a Pro プロフェッショナルであれ
一人ひとりがその道のプロフェッショナルとして高い専門性を持ち、日々の学びを怠らない姿勢は、 個人のみならずチームに良い影響を及ぼします。自らを高めるためには高度なスキルとポジティブなマインドの両方を持ち、行動に移すことが重要です。自らの仕事にオーナーシップと責任を持ち、成果や実績にコミットすることでミッションの達成を目指します。
株式会社ファーストリテイリング
・お客様の立場に立脚
・革新と挑戦
・個の尊重、会社と個人の成長
・正しさへのこだわり
※加えて、行動規範(Valueの下位概念)として以下が設定されています。
・お客様のために、あらゆる活動を行います
・卓越性を追求し、最高水準を目指します
・多様性を活かし、チームワークによって高い成果を上げます
・何事もスピーディに実行します
・現場・現物・現実に基づき、リアルなビジネス活動を行います
・高い倫理観を持った地球市民として行動します
【製造業】
キリンホールディングス株式会社
熱意・誠意・多様性〈Passion. Integrity. Diversity.〉
<熱意>
自由な発想で、進んで新しい価値をお客様・社会に提案することへの我々の熱い意志。会社やブランドに誇りを持ち、目標をやりきる熱い気持ち
<誠意>
ステークホルダーの皆さまのおかげでキリングループは存在しているということへの感謝の気持ち、 謙虚な気持ちで確かな価値を提供し、ステークホルダーに貢献するという誠実さ
<多様性>
個々の価値観や視点の違いを認め合い、尊重する気持ち。社内外を問わない建設的な議論により、「違い」が世界を変える力、より良い方法を生み出す力に変わるという信念
トヨタ自動車株式会社
トヨタウェイ
ソフトとハードを結合し、パートナーとともにトヨタウェイという唯一無二の価値を生み出す。
<ソフト>
_よりよい社会を描くイマジネーションと人起点の設計思想
<ハード>
_人とモノの可能性を高める装置。
_パートナーとともにつくるプラットフォーム。
_それらをソフトによって柔軟に、迅速に変化させていく。
<パートナー>
_ともに幸せをつくる仲間(顧客、社会、コミュニティ、社員、ステークホルダー)を尊重し、それぞれの力を結集する。
いかがでしょうか。
概ね、形式的には箇条書きで項目(短いフレーズ)がつらなり、それに対しての解説が加えられている、という構造になっているかと思います。
内容面においては、社員個人がどのように行動すべきか、という行動指針の役割を表現していると言えます。
6.2 バリューの作成のポイント
バリューの作成ポイントは2つです。
①「対社員」へのメッセージであること
バリューは社員がどのように行動すべきか、してほしいか等といった「対社員」へのメッセージが主となります。
ミッションの作成には、「社会の何を解決したいのか?」、「それはなぜか?」、「そう思ったきっかけは?」等という「対社会」を軸において考えることがポイントとなりましたが、それとは対照的となります。
②とにかく考えること
「価値観」を導き出すことになりますので、自身を振り返るとともにまずは「考える」ことが何より大事です。なぜなら、作成後に社員と共有することになりますが、その際に「自分の言葉」で「ストーリー性」をもって伝えることが重要となりますので、どこかから借りてきたような言葉、価値観だとこの辺りが弱くなるためです。
その後、どうしても出てこない場合は価値観のリスト等をヒントに考えることになります。
また、
・簡単かつ明瞭で
・覚えやすい
ということがよいバリューの条件になります。

「とにかく考えること」、「え!?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、解説を読んでいただくとその意味がご理解いただけるのではないかと思います。
とはいっても、何も無しに考えるのも難しいかもしれませんのでこれまでと同様に質問を用意しました。

6.3 バリューを導き出す質問24
実際にバリューを導き出すための質問を以下に列挙しました。
静かな場所や集中できる場所で是非取り組んでみて下さい。
ただし、全部の質問に答える必要はなく、自分がこれだと思えるものを見つけてもらえるためにこれだけの質問を集めたので必要に応じて選択してみてください。
もちろん、これ以外にもご自身で思いついた問いがあればそちらも考えてみて頂ければと思います。
質問は大きく5つのパートに分かれています。
パート1 個人の価値観に関する質問
1 あなたが大切にしたいビジネスの倫理観は何ですか?
_回答例:正直、勤勉(コツコツ)、感謝。スキルも大切ではあるが、土台は人間性、自利利他
2 あなたのビジネスにおいて、最も大切にしている価値・価値観は何ですか?
_回答例:素直、感謝、お陰様、三方よし
3 あなたが生きてきた中で大切にしている価値観、倫理観は何ですか?
_回答例:うそをつかない、正直、明るく、明朗快活
4 そもそも働く目的は何ですか?
_回答例:関わる人を幸せにしたい。自己成長。両親・家族を安心させたい
_____金銭的に余裕のある生活をしたい
5 社員にどのような成長機会を提供したいですか?またはどうなってほしいですか?
_回答例:人間的な成長
____例えば、感謝できる、礼儀・挨拶がしっかりできる、約束を守るなど
____その上で、自立できるようなスキルを身に着けてもらいたい
6 会社は何のためにあると考えますか?
_回答例:社員の成長、お客様への貢献、日本を明るく元気にするため、世界を変えるため、
_____未来の子供たちのため
7 座右の銘など、好きな言葉は何ですか?
_回答例:継続は力なり、主体変容、弘法筆を選ばず、努力する人は希望を語り、
_____怠ける人は不満を語る。
8 好きな本は何ですか?また、それはなぜですか?
_回答例:日本でいちばん大切にしたい会社(坂本光司)
_____売上や利益は社員を幸せにするための手段であり目的ではない。
_____人を大切にする経営とは等、経営の本質を考えさせられるため。
9 好きな映画・テレビ(ドラマ・アニメなど)は何ですか?また、それはなぜですか?
_回答例:ハイキュー
____「チーム」とは何か?「本当の勝ち負けとは何か」を教えてくれるアニメ
10 好きな有名人は誰ですか?また、それはなぜですか?
_回答例:鍵山秀三郎
____掃除を中心に、頭だけでなく自ら率先して体を動かして組織を作っていった点
____自利とは利他なりを実践されている点
11 両親から、どのような子供になってほしいと言われていましたか?
_回答例:人に迷惑をかけない、疑われても疑わない、正直者はバカを見るでよい
パート2 制限を外す質問
12 制限がないとしたら、会社がどのようになったら最高ですか?
_回答例:皆会社・仕事が好きでやりがい、生きがいをもって働くことが出来ている。
____また、給与も世間よりも1割以上高い水準で支払うことが出来ている。
13 制限がないとしたら、社員がどのようになったら最高ですか?
_回答例:皆楽しそうに働き、経済的・社会的・精神的に自立している。
14 制限がないとしたら、お客様がどのようになったら最高ですか?
_回答例:世界一高い給料を支払うことができ、社員満足度も満点!
____もちろん、お客様満足度も満点!
パート3 ミッション・ビジョン起点の質問
15 ミッション・ビジョンを達成するために必要な要素・価値観は何ですか?
_回答例:お客様目線、お客様第一、仲間を大切にする、きれいな言葉遣い、5S・6S、
____感謝、凡事徹底
16 あなたにとってのビジネスの成功(の定義)とは何ですか?
_回答例:三方よしの経営で継続的に利益を出し、安定成長すること。
_※自社だけではなく、社員、世の中がよくなっていくこと。
パート4 組織起点の質問
17 組織の成功の定義は何ですか?
_回答例:社員全員がやりがい、生きがいをもってイキイキと働いている。
18 組織が追及する理想的な未来の姿はどのようなものですか?
_回答例:組織として自立・自走している。
_→社員各自が考え、行動し、結果を出している。
19 組織の行動や意思決定において最も重要な原則や倫理は何ですか?
回答例:うそをつかない、お客様・社員に対して正直である
20 組織は地域やコミュニティに対してどのような貢献をしたいと考えていますか?
_回答例:地域の元気が出るような活動
_地域の美化
パート5 社員起点の質問
21 どのような社員が世の中の役に立ちますか?
_回答例:人間性が土台にあり、その上にスキル(スキルが先ではない)
_誠実、素直、明朗
22 お客様から喜ばれている、信頼されている社員にはどのような特性がありますか?
_回答例:笑顔がよい、明るい、素直、約束を守る、礼儀正しい、時間を守る、誠実
23 成長している社員にはどのような共通点がありますか?
_回答例:業務時間外の時間を有効に使っている(例 勉強、読書、講座)、
_人脈が広い、知的好奇心が旺盛、素直、自立
24 どのような社員にはなってほしくないですか?
回答例:うそをつく、社員を蹴落としてでも自分が這い上がる、不誠実

そんな場合のために、リストから抽出、という方法を用意しました。

6.4 個人の価値観をリストから抽出する
6.3では質問からバリューを検討していただきましたが、難しい場合もあるかもしれません。
特にパート1の価値観に関する質問については、以下のリストから5つ程度を目安に抽出することも有効な方法です。


6.5 「人を大切にする経営」からヒントを得る
人を大切にする経営学会の代表でもある坂本光司先生が推奨する「人を大切にする経営」からもヒントを得られると思います。
この中からバリュー(価値観)を検討してみても面白いのではないかと思います。
6.6 バリューに関するQ&A
1) バリューは状況に応じて変えてよい?
バリューは行動指針・価値観ですので頻繁に変更するものではありません。
しかし、幹は変わらずとも表現や順番等は状況応じて変更することはよいと思います。
古田土会計の経営理念(バリュー)も当初は
という順番でしたが、10年ほど前に今の順番に変わりました。
また、二(2)の「数字に強い経営者・幹部・社員を育てる」につきましても、当初は
「数字に強い経営者を育てる」から追加して今の形になりました。
2) バリューはいくつあってもよい?
バリューは社員と共有し、常に意識・行動するものになりますので多すぎると逆に何が大事なのかがぼやけてしまいます。古田土会計のバリューは大項目で2つ、事例に挙げさせていただいたものでも3~5つにまとまっていると思います。
このくらいが目安と考えてよいと思います。
3) バリューは社長1人で考えなくてもよい?
経営理念に該当するものであれば特にですが、中小企業の場合は社長(経営者)が考えるべきものです。そして、その背景や意味とともに社員に共有し、浸透を図ってください。
※6.4で解説しているクレドであれば、社員から意見を募って作成することもよいと思います。
4) バリューとクレドの違いは?
バリューは、企業の価値観・判断基準となりますが、クレドはより具体的な行動指針や心得・方針を指します。
ミッション・ビジョン・バリューを達成するためのさらに下層の位置づけとなりますが、社風や文化の醸成には重要な役割を果たします。
古田土会計の行動指針・心得は参考までに以下の通りです。

ポイントは、どのように「行動」に結びつけるかということです。そしてそれを仕組化していくと加速します。古田土会計グループが30年以上、紆余曲折を経ながら実践してきて効果があった取り組みをご紹介します。

7 ミッション・ビジョン・バリューを浸透させるには?
古田土会計では、ミッション・ビジョン・バリューという言葉こそ使っていないものの、30年以上前からこれらの要素を経営計画書で明確にし、浸透を図ってきました。
そして,古田土会計ではここ数年従業員満足度調査を毎年実施していますが、「理念」の項目については社内外の調査を問わず業界平均、全業種平均よりも高い水準となっています。
★2022年4月実施時点 自社で実施
経営理念やビジョンが言語化されている 9.2点/10点
経営理念やビジョンが社員に浸透している 7.9点/10点
※全項目の平均 7.3点
★外部機関による調査
理念・ビジョンへの共感 84%
※業種平均 63% 優良企業平均 78%
なぜこのような結果を出すことができたのでしょうか?
その秘訣は「行動」です。
次の節で具体的に解説していきます。
そして、ミッション・ビジョン・バリューを浸透させるためのポイントは以下の通りです。
① リーダーシップ
経営者がミッション、ビジョン、バリューを強く意識し、それを実践することが重要です。
いわゆる率先垂範です。
経営陣が自らが策定したミッション、ビジョン、バリューに従って行動し、それを社員や顧客に示すことで、浸透させることができます。
② 社員教育
ミッション、ビジョン、バリューを理解し、共有するために、社員教育が必要です。社員にミッション、ビジョン、バリューを説明し、その意義や目的を理解させることで、社員が自らの行動をミッション、ビジョン、バリューに沿って行うことができます。
③ コミュニケーション
組織内でのコミュニケーションを改善することも重要です。社員同士がお互いにミッション、ビジョン、バリューについて話し合うことで、理解を深め、浸透させることができます。
④ 組織文化
ミッション、ビジョン、バリューに基づいた組織文化を築くことも重要です。社員が自らの行動を通じて、ミッション、ビジョン、バリューを体現し、共有することで、組織文化が浸透しやすくなります。
⑤ 顧客とのコミュニケーション
ミッション、ビジョン、バリューを顧客に伝えることも重要です。顧客に対して、自社が追求する価値観や目的を明確に示すことで、顧客に共感してもらえる可能性が高まり、企業価値の向上につながります。
それでは、上述したポイントを古田土会計で行っている実際の具体例に基づいて見てみましょう。
7.1 リーダーシップ
・経営計画書の作成(明るい未来像の構築と共有)
未来像(事業の未来像・組織の未来像・社員の未来像)を中心に、何に力を入れていくのか(=方向性・戦略)、
何を大切にするのか等を記載します。
・経営計画発表会
年に1回(古田土会計は1月11日)、全社員を対象に前期の振り返り、今期の方針を発表、共有し士気を高めます。
1年で最も特別で大事な日です。
・経営計画書に書かれていることを率先垂範
経営者自身が経営計画書に書かれていることを率先して取り組む姿勢を示すことが大切です。
もちろん、経営計画書に記載したことが全てできる人はいません。言っていることをやっていることを少しでも一致させるように行動する「姿勢」が何より大事、ということです。
7.2 社員教育
インプットとアウトプットに分けて説明します。
両方行うことが大切です。
【インプット】
理念浸透を目的として以下の勉強会・会議を行っています。
【アウトプット】
・3つの文化である「挨拶」「掃除」「朝礼」で実際に「行動」することで体にしみこませていきます。
挨拶:毎朝会長・社長と全員が挨拶し、挨拶が雑な場合はやり直しとなります。
また、挨拶に上下関係はなく、後から出社した人が挨拶してまわります。
そして、お客様がいらっしゃった際には全員立って挨拶しています。
「挨拶は仕事に優先する」という考え方です。
掃除:駅前清掃:道具の準備から片付けまで含め教育となります。
所内清掃:業者任せにせず、自分たちで清掃します。
ビーチクリーン:コロナ前は小中学校のトイレ掃除に参加していましたが、その代替として昨年よりビーチクリーンを行っています。
環境整備:5S、6Sの徹底。毎月チェックしています。
朝礼:朝礼は訓練の場と位置付けています。返事の仕方、笑顔、聞く態度等に注意しながら進行します。また理念の金太郎飴朝礼という名前で経営計画書を題材にディスカッション(アウトプット)も行っています。
7.3 コミュニケーション
・朝礼
・古田土甲子園
理念に基づいてお客様に喜ばれた事例等を年に1回全社員と共有しています。
予選は全員が参加し、投票で選ばれた7~10名が全社員の前でプレゼンを行います。
そして全社員の投票で優勝者が決定します。涙もあり感動に包まれるイベントです。
・月間MVP
毎月テーマを決め、社員貫投票を実施し表彰しています。
・月間LVP
役職者が理念に基づいて行動している社員を選んで表彰しています。
目立たなくても会社のため、お客様のために頑張っている社員に焦点を当てる取り組みです。
上司は部下のことをよく見る訓練でもあります。
・サンクスカード
小さなことにも感謝し、感謝の気持ちを形に表します。
毎月、送った枚数の多い社員、もらった枚数の多い社員を表彰しています。
ポイントは、送った枚数の多い社員を称えることです。
7.4 組織文化
・3つの文化
挨拶・掃除・朝礼という3つの文化を通して理念を「行動」に移し毎日訓練しています。
・教えあう文化
先輩・後輩、上司・部下という立場や部署を超えて、困ったことや分からないことがあれば自分の仕事を差し置いてでも教えあうことが多々あります。
・親孝行
5月は親孝行月間として、新卒は初任給でご両親にプレゼントを渡します。
プレゼントを渡す際の口上も経営計画書に記載しており、事前に練習してから臨みます。
親孝行を通じて、人に喜ばれるということはどういうことなのか、ということを体感してもらいます。
・感謝(サンクスカード)
・障碍者雇用
障碍者雇用には多くの課題がありますが、雇用を通じてお互いに考え、行動し、感謝するという文化が育まれます。
・イベント:社員旅行
家族を招待してのディズニー研修やバーベキュー、お子様の職場体験(ファミリーデー)
や社員旅行(海外もあり)、忘年会等を通じて社員同士の交流を図っています。
7.5 顧客とのコミュニケーション
・汚い字シリーズを繰り返しお客様にお伝えする
毎月お客様向けに古田土から発行している手書きのメッセージとなります。
社員はお客様との打ち合わせの際にこちらを読み、解説することとなりますが、20社担
当している場合は20回読むことになります。
一番の目的はお客様へ古田土会計のメッセージを伝えることですが、副次的に社員教育にもなっています。
・古田土会計の取組を経営計画書を用いて説明する
例えば、お客様から「古田土会計さんでは会議はどのようなものがありますか?」等と
質問を頂いた際には、経営計画書を用いて「~~というような会議があり、目的は~~で
す。」という形で説明をしています。
・朝礼案内
お客様が朝礼見学でお越しになられた際に、若手が中心となって朝礼の目的や取組を説
明します。繰り返しアウトプットすることにより自社の取組の目的が体に刷り込まれて
いきます。
・採用のメンター制度
朝礼見学と同じく、学生に対して古田土会計のことを語ります。それを通じて自社の理念
や価値観を再認識します。
8 まとめ
以上、ミッション・ビジョン・バリューの定義・作成のポイント・浸透させるためのポイントを述べてきましたが、最後にもう一度大切なポイントをまとめておきます。
①ミッション・ビジョン・バリューの言葉の定義にとらわれすぎないこと
大切なことは、会社(経営者)が考えている方向性や価値観をしっかりと示すことです、
②行動レベルに落とし込んで浸透させること
作成し示しただけでは変わらないため、具体的な行動に落とし込み・実践することです。