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銀行が不動産購入を勧めるのは、信用があるからという勘違い

銀行が不動産購入を勧めるのは、信用があるからという勘違い

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、重要なポイントをかいつまんで解説していきます。

今回のテーマは、「銀行が不動産購入を勧めるのは、信用があるからという勘違い」です。

銀行員は業績が良くなった社長に「賃貸は家賃がもったいないですよ。良い物件があるので買いませんか」と声をかけてきますが、これが「銀行に信用されている」と捉えるのは勘違いです。では多くの場合の銀行の「本音」とはどのようなものでしょうか。

「銀行から声をかけられたら物件を買ったほうがいいと考えていた」
「賃貸より不動産を取得した方が得だと思っている」

このように考えている方は、ぜひご覧ください。

▽動画でも解説しています

銀行が不動産購入を勧める「本音」

全てではないものの、多くの場合、銀行員はその会社のために物件を紹介するわけではありません。
多くの場合は銀行が不良債権を抱えており、不良債権の担保として土地建物を差し押さえ、その差し押さえた不動産を売却し、不良債権を回収するのが支店長や銀行員の役割です。

そのための一番良い方法は、比較的優良な会社にその土地と建物を買ってもらうことです。
そうすると支店長や銀行の営業マンは「よく不良債権を回収した」「よく優良会社にお金を貸し付けた」と二重に評価されます。

銀行はあなたの会社のために親切に不動産を紹介するのではなく、自分の成績のため、銀行のために物件を持ってくるケースが多いのです。
銀行の言う通りに不動産を買い、その後資金的に困るケースを私は多々見てきました。

不動産を買ってもいい会社と買ってはいけない会社

全ての会社が不動産を買ってはいけないのではありません。
不動産を買っていい会社と、不動産をできるだけ持たない方が良い会社があります。

例えばメーカーの場合でしたら、工場が必要であるため、土地・建物を持たざるを得ません。
工場ですと都市より地方の方が適しており、土地代は安いです。

借入金も返済期間を15年や20年にしてもらうことがポイントです。
土地は償却できませんが、建物は工場で大体は24、5年の減価償却です。

一方、例えば卸売業などで倉庫を持つ業者の場合は、比較的都市の近郊の立地が求められ、土地代が高くなります。
中小企業の卸売業には特徴があります。

例えば中国やベトナムから規格どおりに作ってもらった商品を輸入し、国内で販売するビジネスの場合は、基本的に不動産を買ってはいけません。
そういう会社の場合は、売掛金と受取手形、棚卸資産が多く、そして買掛金が少ないという特徴があります。
極論、支払いは前渡金で、回収は受け取り手形、その間に在庫という関係になっています。

※輸入商品の販売をしている場合、仕入れ代金を先に払う必要があるため、支払手形や買掛金の額は小さく、一方で売上債権が現金になるまで時間を要するため、多額の運転資金が必要です。

実は経営者と銀行で「運転資金」の定義が異なります。
一般の経営者は、運転資金は事業活動に必要な全ての資金、設備資金以外は賞与の支払いや税金の支払いも含め、全て運転資金と見ますが、一方銀行は下記の式のように運転資金を見ています。
この運転資金を銀行は短期で貸そうとし、それほど返済を求めません。

運転資金=売上債権(受取手形と売掛金)+棚卸資産-仕入債務(支払手形と買掛金)

売上が立ってから現金になるまでの期間を「回収サイト」と呼び、仕入れから実際に支払うまでの期間を「支払いサイト」と呼びます。
そして、回収サイトより支払いサイトが短いことを「サイト負け」と言います。
サイト負けをしていると、P/Lでは黒字でも、B/Sを見ると現金が減少しています。

海外から輸入する業者の場合、支払いが早く、前渡金を支払う必要があります。
つまり買掛金が少なく、多額の支払いが早く発生する「支払いサイト」が短い状態です。

一方、販売先は国内であるため、売掛金や受取手形、在庫が多く、現金になるまでに時間がかかる「回収サイト」が長い状態となります。
そのため、会社が大きくなればなるほど、運転資金が膨らんでしまいます。
運転資金の大きな会社は、一般的に短期借入金で調達していますが、運転資金が膨らむほどトータルとしての借入金の枠がどんどん少なくなります。

以上から、海外で品物を製造し、輸入して国内で販売している会社は、運転資金が大きいため、相当自己資本比率が高く、資金が貯まってからでないと、自社ビルや倉庫などの不動産を持つべきではありません。

事業が成長する時に、資金需要はほとんどが運転資金です。
そのような時期に自社ビルを作ってしまったら、そこに長期的な資金を投入せざるを得なく、その返済が必要になり、資金の調達の範囲を狭くすることがあります。

自己資本比率の低い会社は土地・建物を買ってはいけない

自己資本比率の低い会社も土地・建物を買ってはいけません。
「自己資本比率が低い」とは「過去に儲からなかった」からです。

自己資本比率が低い中で、不動産を買った場合には、借入金の信用が当然少ないので、借入金を長く借りられるわけではありません。
儲かってもいないので、返済額がどんどん増えていき、借入金の返済ができず、どんどん借入をしなくてはならず、やがて破綻してしまいます。

返済原資がないため、自己資本比率の低い会社は土地・建物を買ってはいけません。
機械装置は減価償却ができますが、不動産に関しては、建物の減価償却費は大したことがないため、原資として現預金をある程度持っていることが条件です。

そして、減価償却費に頼るだけでなく、利益を出していて、利益の中からきちんと借金が返せるような高収益型事業構造でないと、不動産を買うのは危険と言えます。

「家賃と同じ額を支払うことで数年後に自分の物になりますから」の罠

例えば、銀行は「家賃を毎月300万円ずつ支払っていて、年間で3,600万円支払っていますよね。
年間3,600万円の返済スケジュールを組むので、今までと同じ額を支払うことで、20年後には自分の土地建物になります。
家賃を支払うのはもったいないですよ」という甘い言葉をかけてきます。

「同じ金額を支払うなら買った方が得」と思うのは大きな勘違いです。
なぜならば、地代家賃は全て経費にできますが、土地や建物を購入した場合、全てを経費にはできなくなるためです。

経費にできるのは、建物の減価償却費分ですし、建物の減価償却費は一般的に25~30年であることが多く、そうすると月300万円の経費になっていたところ、半分も経費にできなくなります。
そして固定資産を持つことになるため、固定資産税が余分にかかることにもなります。

また、賃貸の場合は、基本的に屋根や床など大きな修繕は大家さんが負担となっていることも少なくありませんが、土地・建物を購入すれば修繕費も全て自社負担です。

銀行が「同じ金額で土地建物が自分のものになる」という言葉の中には、全部が経費にならないがゆえに増える税金、固定資産税、修繕費の計算が抜けています。
土地・建物を購入するならば、それらを理解する必要があります。
単なる「返済額と家賃を同じにします」という言葉に惑わされてはいけません。

まとめ:土地・建物を購入するかの判断にはバランスシートを読み取れる力が必要

今回は銀行から不動産購入を勧められても、安易に乗ってはいけないという話をいたしました。
多くの場合、銀行は善意で不動産購入を勧めているのではなく、銀行側にもメリットがあるため提案しています。
その「本音」を忘れないようにしてください。

もちろん土地・建物が必要な場合もありますが、ビジネス形態や会社の自己資本比率によっては買うことをおすすめしません。
不動産や設備の投資ができるか、そのために長期借入金をどれだけ借りられるかは、社長が支払いサイト・自己資本比率・現預金・毎月の借入金の返済額・利息の支払いなどをバランスシートを見て、自社が借金を返済できるだけの高収益事業構造となっているのかを判断する必要があります。

バランスシートの見方や財務を知らないがために、自己資本比率が15%~20%であるにもかかわらず、数億の土地や建物を購入してしまう社長がいらっしゃいますが、こういった行為は会社を危険な状態にしています。
バランスシートを正しく読み、財務を理解すれば、会社を崖っぷちにする行為は避けられます。
ですので、経営者にはバランスシートを勉強してほしいと願っています。

その1つのきっかけとして、BSの基礎が学べる資料をご用意いたしました。ぜひ、有効活用していただければ幸いです。

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