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【現金払いにすれば大幅コストダウン】支払手形は金利の付かない資金調達法という勘違い

【現金払いにすれば大幅コストダウン】支払手形は金利の付かない資金調達法という勘違い

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、ポイントをかいつまんで解説していきます。

この記事では、同著の139ページから144ページに書かれていることを紹介します。

今回のテーマは、「支払手形は金利の付かない資金調達法という勘違い」です。支払手形には、金利と危険負担料が含まれています。そして、この金利と危険負担料などの支払いが必要なくなることを根拠に、仕入先との間で値引きの交渉ができるのです。

例えば、支払手形に2%の金利が含まれていたとすると、現金払いに変える際には交渉で1.5〜2%の値引きが実現できる可能性があります。

今回はこのような支払手形の現金払いに際する値引き交渉について、そのメリットや具体的なやり方などを解説します。

「支払手形を現金払いにすれば、一体どのくらいのコストを削減できる?」
「支払手形をなくす場合の値引き交渉ってどうやってやればいい?」

上記のようなことに少しでも興味をお持ちの方は、ぜひこのコラムをお読みください。

▽動画でも解説しています

【具体例】支払手形の現金払いによる大幅コストダウン

例えば、次のようなことを考えてみましょう。

毎月1億円の手形を振り出します。毎月1億円なので年間では12億円です。金利は2%と仮定します。

年間12億円の手形を振り出して、2%の金利がかかるので、年間で2,400万円の利息を支払うことになります。言い換えれば、これを現金払いにすることで、年間2,400万円のコストを削減できるわけです。

このようにバランスシートを少し工夫するだけで、財務で簡単に利益を出すことができます。

【実例】年間2億円節約できた卸売業者のお客様

金額を大きくすれば、利益はさらに上がります。これはある卸売業者さんの例ですが、年間100億円くらい手形を振り出していたそうです。金利は2%だったので、現金払いにすることで2億円もコストが下がりました。

その会社は、そのようなコストカットができることを全く知らなかったといいます。

B/Sで「支払手形」を「短期借入金」に変える意義

バランスシートで見ると、支払手形が短期借入金に変わるだけの話ですが、実質には大きな意味を持ちます。短期借入金にはリスケが効きますが、支払手形は待ったなしです。不渡りが倒産に直結します。

また短期借入金だと金利がかかりますが、年間で見ると支払手形にはそれ以上の金利がかかっており、現金化することでコストカットも実現可能です。

とはいえ、短期借入金もいつ返せと言われるかわからない点では、リスクがあります。そのため、支払手形を短期借入金に振り替えるだけでなく、時間をかけてゆくゆくはその短期借入金を減らしていくことも大切です。

支払手形を預金で代替するのが理想【実現可能な中小企業は多い】

私が現実に多くの会社を見せていただいた限りでは、支払手形の半分くらいの金額は、会社で持っている預金で賄えるケースが多いです。

私は「日本で一番大切にしたい会社」大賞の審査員をしており、応募してきた会社へ調査に行くのですが、その時にB/S・P/Lをすべて見て、アドバイスもしています。これは大阪のある会社を調査したときの話です。

その会社のバランスシートを見てみると、月々4億円、4カ月で16億円、年間では50億円くらいの手形を振り出していました。一方で預金を見てみると40億円も置いているわけです。

私は社長に「どうしてこんなに預金がたくさんあるのに、手形を振り出しているんですか」と質問しました。すると社長は、「いや、うちは昔からそういうふうにやっていて、何も不思議だと思わなかった」と答えました。

私はその社長に、支払手形には金利と危険負担料が含まれているので、現金化すればその分の金額について値下げ交渉ができると説明しました。この会社の場合は年間50億円振り出していたので、2%とはいかずとも1.5%の値下げを交渉することで、年間7,500万円のコストカットが可能です。

しかもその会社は40億円も預金を持っているので、現金化は容易に実現できます。4カ月で振り出す16億円の手形をすべて預金で代替しても、預金はまだ24億円も残ります。24億円もあれば、「ネットキャッシュ比率」、総資産に対する資金は十分です。

このように財務内容が良いのに、手形を振り出している会社は結構あります。そのような会社は支払手形をなくすことで、かなり儲かるわけです。加えて、倒産するリスクも低減できます。

・預金で賄うのが厳しければ短期借入金から始めよう

またそれほど財務体質が良いとはいえない普通の会社は、支払手形をなくすために短期借入金への振替から始めても良いわけです。短期借入金は返せなくてもリスケが効くので、支払手形に比べるとずっと安全だといえます。

とにかく会社の倒産に直結するのは支払手形なので、支払手形をなくすように経営を持っていくことが肝心です。

・長期借入金で賄えるならばそのほうが良い

また支払手形をなくすための金額が長期で借りられたとしましょう。金額が1億円未満であれば、長期借入金で返していくことも十分に可能です。例えば、1億円の長期借入金を5年で返すとすると、年間2,000万円ずつくらいの支払いで済みます。

その支払いの分だけ利益を出したり、買掛金を増やすように交渉したり、売掛金や受取手形を増やすなどすれば、やがて支払手形がゼロになり、借入金もそこそこの金額に抑えられるという会社にすることができます。

支払手形の危険性【手形帳や小切手帳は取扱要注意】

ともかく会社は支払手形で倒産します。加えて、もし会社に手形帳や小切手帳があれば、手形や小切手を偽造される恐れもあります。

偽造されたものでも、第三者がそれを知らずに受け取った場合は、善意取得が成立し、手形の権利は有効です。そのため、手形は盗まれたり、一枚でも抜かれたりしたら、会社がそれで倒産することもあり得ます。

経営者には、支払手形にまつわるそのようなリスクをぜひ理解していただきたいと思います。会社は支払手形で倒産するのです。決してお金を払えないから、赤字だから倒産するのではありません。

よって、支払手形を短期借入金に変えることや自己資金の中から調達することなどを考え、支払手形をなくす方向に持っていくことをおすすめします。

手形を現金払いにする際の値引き交渉術

支払手形をなくして現金払いにする場合、仕入先と値引きの交渉をすることができます。とはいえ、どのように交渉して良いかわからない方も多いでしょうから、『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』の144ページにサンプルを載せておきました。交渉用の文書の見本が見たい方は、ぜひ同著でご確認ください。

基本の条件は残し、現金払い時の値引きの条項を追加

交渉のポイントは何かというと、現金払いにしたときに値引きをしてもらうという約定にしておいて、基本の条件は通常の支払手形による支払いのまま残しておくということです。支払手形から現金払いに完全に移行させるという約束にしてしまうと、取引先がだんだん値上げをしていき、値引きの意味がなくなってしまう危険性があります。

支払手形をなくすのが現在のトレンド【ぜひ現金払いに】

2021年の10月あたりから、だんだん支払手形をなくすような世の中の動きになってきています。そのため、皆様もできるだけ早いうちに交渉をして手形をなくし、会社の健全性を高めるとともにコストカットを実現しましょう。財務で儲けるのです。

『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』には、これまでのような内容を、すべて詳しく文章化して載せています。会社を潰さないようにするうえでとても大事なことなので、ぜひご一読ください。

本当に手形を現金払いにすることによって、年間数百万円から数千万円コストを削減できます。しかもそれは1年だけの話ではありません。10年あれば10年間コストを削減できます。つまり数百万なら数千万、数千万なら数億のコストカットが可能ということです。

経営者の皆様は、手形をなくす努力をするとともに、このような財務の話をもっとよく勉強してみてください。

まとめ:手形をなくすと健全化とコスト削減の一挙両得

この記事のポイント:

  • 手形を現金払いにすれば、年間数百万円〜数千万円のコスト削減がずっと続く
  • 支払手形を預金で振り替えるのが理想
  • 預金が厳しいなら長期借入金か短期借入金で調達
  • 値引き交渉では手形による支払いを基本として残すべき

支払手形を現金払いに変えると、支払手形が内包する金利などの分だけ値引き交渉ができるので、年間で数百万円から数千万円、場合によっては数億円のコストカットを実現できます。しかもそれは毎年続くので、長期的にみてもかなりの儲けです。

もし会社で十分な預金を持っているのであれば、支払手形をなくし、自己資金の中でお金を調達するのが良いでしょう。預金が厳しい場合は、リスケのきく長期借入金や短期借入金から始めるのもおすすめです。

なお、値引き交渉の際は、完全に現金払いに移行するのではなく、手形の支払いを基本として残し、現金払いのときのみ値引きが適用されるという形にしてください。現金払いを基本にしてしまうと、取引先がどんどん値上げをして意味がなくなる恐れがあります。

何はともあれ、会社を倒産させるのは支払手形です。支払手形をなくせば、会社の健全性が増し、なおかつ大幅なコストカットも実現できるので、これを機会にぜひ取り組んでみてください。

また、健全な会社を作るためのヒントを『健全な会社とは』という資料にまとめましたので、ぜひご活用いただけますと幸いです。

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