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会社を安定させたいなら短期借入金に頼るという勘違い

会社を安定させたいなら短期借入金に頼るという勘違い

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、重要なポイントをかいつまんで解説していきます。

今回のテーマは、「会社を安定させたいなら短期借入金に頼るという勘違い」です。

「運転資金は短期借入金で調達すべきという勘違い」の記事では、銀行が考える運転資金と経営者が考える運転資金の内容には、ズレが存在することを解説しました。

経営者が考える運転資金とは設備投資以外の資金ですが、銀行が考える運転資金とは、(受取手形+売掛金+棚卸資産)ー(支払手形+買掛金)です。

では「銀行が認識している範囲内であれば、短期借入金で借りてもいいのでは」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、答えはNOです。

本記事では短期借入金で調達することの問題点や、例外的に短期借入金で調達したほうがいいもの、なるべく長期借入金で調達したほうがよい理由などを解説します。

「なぜ安易に短期借入金として借りてはいけないのか知りたい」
「短期借入金として借りてもよい例を知りたい」

このようにお考えの方は、ぜひご覧ください。

▽動画でも解説しています

短期借入金として調達することの問題点

結論から言うと、季節変動資金を除いて短期で借りてもよい資金はありません。

なぜ短期借入金として借りることが問題なのか、解説します。

たとえば新たにお店を出し、そこに1,000万円分の在庫を置いたとします。そして、サイト資金(売り上げの回収より仕入れの支払いの期限が先に到来し資金が不足する「サイト負け」の対策資金)として1,000万円を借りたとします。それは短期借入金で調達していいのでしょうか。

短期で借りて1年で返済するとなると、毎月約100万円ずつ減っていきます。しかし、在庫は売れたら補充するので減りません。在庫が減らないにもかかわらず、調達する資金を短期借入金でまかなっていたら、あっという間に資金はなくなってしまいます。ゆえに棚卸資産は、実務的には長期借入金として借りなくてはならないのです。

ここで銀行の考える運転資金の定義を振り返ります。

(受取手形+売掛金+棚卸資産)ー(支払手形+買掛金)

この計算式のとおり、棚卸資産は運転資金に含まれています。しかしここまでで説明してきたとおり、銀行という貸す側としては短期の認識ですが、経営者という借りる側は長期で想定しなければ資金繰りは詰まってしまいます。

サイト負けの対策資金についても同じことが言えます。たとえばメーカーで考えてみましょう。

売掛金が1億円、受取手形が1億円、支払手形が5,000万円、買掛金が5,000万円、合計すると売上債権が2億、買掛債務が1億、その差額が1億だとします。

売上高が変わらなければ、1億円のサイト負け状態は続くと言えます。つまりサイト負けの対策資金を短期で借りていれば、あっという間に資金はなくなってしまいます。

このように、サイト負け対策資金は、短期借入金で調達してはいけないのです。

例外である季節変動資金は短期借入金で調達する

ここまでで「短期借入金での調達はなるべく控えたほうがいい」ということはご理解いただけたと存じます。ただし、季節変動資金は例外です。

業種によっては売上が上がる月と上がらない月の差が大きいケースがあります。たとえば、輸入で農薬を扱っている会社があります。

農薬が売れるシーズンとは、田植えが近くなったシーズンに限られています。3~6月の決まったシーズンでしか売り上げは上がらないのです。

しかしメーカーはシーズン外の時期でも製造を行っているので、1年間購入し続けています。そうすると、7~2月のほとんど売れない時期も仕入れを続けることになります。

売れない時期はどんどん在庫が増え、棚卸資産も増えていきます。しかし、3~6月という明確に返せる時期の目途がたっているので、短期借入金で調達しても問題ありません。むしろ短期的な変動に基づく資金の需要を長期借入金で調達したら、借りた分だけ資金の無駄が発生してしまいます。

潰れない会社であるためには長期借入金での調達を

短期借入金は約定で1年以内の返済が条件になっています。しかし、中小企業の経営者には「短期借入金は転がし(短期継続融資の俗称)だから、元本は返済をしなくてもいいし、金繰りを心配しなくてもよい」と思い込んでいる方も珍しくありません。ただこれは銀行が認めてくれているから成立しているのであって、銀行に返済を求められたら返さなくてはいけませんし、返済できなければ資金繰りに詰まる状態となります。

そのため、できる限り5年ほどで返済する長期借入金で調達することを勧めています。5年で返済する場合、毎月60分の1ずつの返済であるので、負担も軽減させられますし、返済原資は、税引き後の儲けである損益資金です。

経営者として潰れない安全な会社を経営したいのならば、可能な限り長期借入金で調達することをおすすめします。長期借入金で調達し、長期的に返済を行えば、通常の営業キャッシュフローのなかでお金を回すことができます。

まとめ:安全な経営のための運転資金の調達方法を知っておきましょう

繰り返しになりますが、「運転資金」の認識は、銀行と経営者とでズレがあることをまずは知っていただきたいです。そして銀行が運転資金と考えるもののなかには、経営者としては長期借入金で調達したほうがいいものもあります。

長期で借りられる機会があればそれを逃さず、月々の返済額を少なくし、キャッシュフローを確保する経営を心掛けていただきたいと思います。

経営者がこのような情報を知らなければ、安易に短期借入金で調達してしまい、どんどん資金繰りが苦しくなる恐れもあります。長期借入金が減り、短期借入金ばかり増えると、銀行はその会社を信用していないということですから、ますます資金繰りが忙しくなり、やがて倒産する可能性があるのです。

古田土会計では、今回ご説明したような細かい情報もご提供し、会社ごとに合ったアドバイスをしております。会社を潰さない安全な経営を行うためにも、ご活用をご検討いただけますと幸いです。

今回ご説明したように、会社の財務には見るべきポイントがあります。

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