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借入金の返済原資は税引後利益や減価償却費という勘違い
こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。
本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、重要なポイントをピックアップし解説していきます。
今回のテーマは、「借入金の返済原資は税引後利益や減価償却費という勘違い」です。
銀行が企業に設備投資資金を貸す際の書類を見ると、「返済原資は税引後利益+減価償却費」と書かれています。このような書き方から、多くの経営者が銀行からの借入金の返済原資は税引後利益+減価償却費と認識し、できるだけ多く借りるため、税引後利益や減価償却費は多いほうがよいと考えています。
しかしこれは勘違いであり、この通りにすると、どんどんお金が足りなくなる事態が起きうるのです。
「より多く銀行から借りるために、なぜ税引後利益や減価償却費を増やしてはいけないのか」
「借入金の返済原資についての考え方を知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方はぜひご覧ください。
▽動画でも解説しています
税引後利益や減価償却費を多くすることの意味
まず、税引後利益や減価償却費を増やすことがどのようなことを意味するか説明します。
「税引後利益を増やす」とは、利益をたくさん出すということです。利益が多く出れば、その分税金の支払いも増え、その結果、税引後利益が出るという流れになります。
減価償却費が多いということは、節税にはなるかもしれません。しかし、銀行から見れば「多くを返済原資とみなすので、たくさん設備投資のためにお金を借り、土地建物も買ってほしい」という意味を示します。言い換えれば銀行への借金が増えるということです。
つまり「税引後利益+減価償却費が借金の返済原資」というのは、銀行側の都合が基準となっているのです。
本来は税引後利益も減価償却費も借金の返済原資ではない
借金の返済原資とは税引後利益や減価償却費ではなく、お金です。当然ですが、お金でしか借金は返済できません。
お金を会計仕訳の言葉で言いかえると現預金です。
税引後利益や減価償却費はP/Lの科目ですので、B/Sの借方には該当しません。多くの人がP/Lの科目である税引後利益と減価償却費を借入金の返済原資だと勘違いしているのが現状です。
P/Lの科目でB/Sの科目である現預金が返済できるわけがありません。資金の動きは全てB/Sの科目で見ます。B/Sの科目でしか借入金は返済できません。
「借入金の返済原資はお金である」ということを、古田土式キャッシュフロー計算書であるケースを例に見ていきます。
キャッシュフローを理解する目的はお金の残し方を学ぶことです。今期儲けた利益がどこに消えたのか、今期の利益とお金の違いを知ることとも言えます。
いくら税引後当期純利益や減価償却費が多くても、営業キャッシュフローがプラスであっても、投資活動によるキャッシュフローで有価証券を買ったり、有形固定資産を買ったり、保険に多く加入していたら、その結果として投資キャッシュフローにお金が吸い込まれ、フリーキャッシュフローがマイナスになるケースもありえます。
いくら当期純利益+減価償却費が多くとも、営業キャッシュフローでマイナスになったり、フリーキャッシュフローでマイナスになったりしたら、長期借入金の返済原資は手元に残っていません。
このようにあくまでキャッシュフローはB/Sのなかで決まってくるものです。これが借入金の返済原資はお金であり、税引後利益でも減価償却費でもないということを意味します。
銀行が「税引後利益+減価償却費が返済原資」という計算をしている理由
ここまで見てきたように「税引後利益+減価償却費」は実際には返済原資ではありません。ではなぜ銀行は返済原資としているのでしょうか。
実は銀行側は長期の設備投資と長期の資金に対する融資として考えています。長期で考えているため、返済原資ではなく「目安」として見ています。つまり税引後利益+減価償却費が多ければ多いほど、長期的な設備投資に対する返済原資がたくさんあると見ているということです。
まとめ:税引後利益を増やそうとすると返済原資は減少してしまう
ここまでお話ししてきたように「借入金の返済原資として税引後利益を増やした方がいい」という考えは勘違いです。税引後利益を増やすために税金をたくさん支払うことになりますし、税金を多く支払うためには売上を伸ばす必要があります。売上が増えると受取手形・売掛金・在庫が増えますが、支払手形や買掛金もそれに合わせて増えます。
それは売上を拡大し、税引後利益を多くしようとすればするほどお金が貯まらなくなることを意味します。銀行に言われた通りに税引後利益を増やそうとすると、どんどんお金が足りなくなり、返済原資が減ってしまうのです。
しかし、これらは財務を学ばなければ理解が難しいとも言えます。
より深く財務について学びたい方に向けて資料をご用意いたしましたので、ぜひご活用いただけますと幸いです。