『健全な会社とは』
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土地建物は所有していたほうがお金は貯まるという勘違い
こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。
本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、基礎として抑えていただきたい内容をピックアップして解説していきます。
今回のテーマは、「土地建物は所有していたほうがお金は貯まるという勘違い」です。
「いずれ自社のものになるので、家賃を払い続けるより多額の借金をしてでも土地建物を購入した方が得」と考える経営者の方がいらっしゃいますが、これは大きな勘違いです。
2020年から新型コロナウイルスがさまざまな業界に影響を及ぼしているように、業績はいつ悪化するか予測が難しいものです。土地建物を購入する際に全額借金をしていたら、業績が悪化した際にあっという間に資金繰りが詰まってしまいます。土地建物を購入するとしても、ある程度の内部留保がなければ危険です。
本記事では内部留保なしに土地建物を購入することの危険性や、急成長よりも安定成長を目指すべき理由について解説します。
「土地建物を購入しようか迷っている」
「より安全な財務や経営について知りたい」
このような悩みを抱えている方は、ぜひご覧ください。
▽動画でも解説しています
内部留保なしに土地建物を購入することの危険性
内部留保が少ない状態で土地建物を購入するとどのようなデメリットがあるのか、個人を例に見ていきましょう。
2020年に新型コロナウイルスが流行し、職を失ったり、収入が大幅に減ったりする人がたくさんいらっしゃったのは記憶に新しいところです。たとえば、年収1,200~1,300万円の人が600~700万円まで減った例を見ました。
年収1,000万円の人が7~8,000万円のマンションを購入することがありますが、これだけ大幅に収入が下がってしまえば、返済ができなくなってしまいます。
そこで「マンションを売ろう」という考えになりますが、マンションの場合、元利均等返済でローンを組んでいます。すると最初の10年間の返済のうち、利息が占める割合が多く、たとえば購入から5年後に売却しても、元金はそのまま残っています。言い換えれば、マンションを売却したにもかかわらず、多くの借金が残ってしまうということです。
これを数字に当てはめますと、8,000万円で購入したマンションが6,000万円程度でしか売れないと、売却までに500万円返済していたとしても、結局残りの1,500万円程度は持ちだしになってしまいます。
しかし自力で2,000万円ほどを貯めていれば、借金は6,000万円から始まりますから、売却するまでに500万円返済していたとして6,000万円で売却をすれば残務整理をして借金は残りません。
会社経営も同じことが言えます。全額借金で土地建物を購入してしまうと、いざ売却したいときに借金だけ残ってしまうケースが珍しくありません。
「全額借金をすべき。余裕資金があれば、その分やがて運転資金が増えるため、その分で返済すれば問題ない」と仰る方もいまして、それは間違ってはいません。
ただ、全額借金をして土地建物を購入するのではなく、土地建物を購入する際の費用も含めて資金を持ち、借金を少なくすれば、会社はより安全な状態でいられるはずです。
私はどんなことがあっても会社を潰してはいけないと考えています。今まで多くの企業を見てきましたが、会社を潰す原因はほとんどが社長の判断の誤りです。財務を知らないゆえに判断を誤ったり、経営判断を誤ったりしていることが原因です。社員の失敗で会社が倒産するというのはほぼ現実にはありません。
無理な土地建物の購入は会社の倒産を招く恐れも
会社が倒産する原因は、売上の縮小や新型コロナウイルスなどイレギュラーな出来事の影響などもありますが、設備投資の失敗も大きな要因の一つです。
具体的には自社ビルを建ててはいけない状況であるにもかかわらず建ててしまったり、借金や投資の仕方が誤っていたりします。業種によっては土地建物の購入が必須な場合もありますが、返済期間を10年ほどに設定するのも危険です。このように財務を知らない状態で、投資や借入によって倒産してしまう会社が世の中には多くあります。
何十年も利益を出して資金を貯めてきたにもかかわらず、財務や設備投資の失敗で一瞬にして資金を失っている例も見てきています。昔は土地建物・不動産投資・ゴルフ会員権・投資有価証券で一瞬にして資金を失った会社もありました。
土地建物を所有した方が得な気がしてしまうかもしれませんが、それはここまで説明してきたとおり勘違いです。土地建物を所有しなくても経営はできますので、いずれ土地建物を所有したい場合でも、十分に資金を貯めてからにすることをおすすめします。
より財務として健全な方法は、自己資金で土地建物や工場を所有することです。自己資金で土地建物を所有するのでしたら、失敗しても会社はびくともしません。
まとめ:社員とその家族を守るためにも正しく財務を学ぶ
世の中には節税に関する本は溢れています。しかし意外と財務に関することが書かれている本は多くはありません。
「借りたお金は返さなくていい」——そのようなノウハウが世の中に出回っています。これは一見得をしているように見えますが、不誠実です。やはり借りたお金は返さなくてはいけません。お金を貸してくれた相手のためにも、自社のためにも無理をしない借金の仕方が非常に重要です。
我々、中小企業は急成長よりも安定成長を目指すべきです。安全な範囲で安心して経営をすることで、大事な社員とその家族を守ることができます。
これからの時代、業績中心の経営や、単に技術的に労働時間の短縮を行うことではなく、社長が社員を愛し、社員とその家族を守るという哲学や思想を持って経営することが大事だと考えています。そのためにも急成長を目指すのではなく、安定成長を目指すことがポイントです。
ゆえに財務も急がないことが重要です。土地建物を所有しなくても経営はできますので、十分に内部留保が確保できてから土地建物を購入しても遅くはありません。
「社員とその家族、会社を取り巻くすべての人を幸せにする」という観点から会社経営を考えていただきたいです。そのためには儲けることだけでなく、財務をきちんと学ぶ必要があります。
より体系的に健全な会社について知りたい方のために、別途、資料をご用意いたしました。ぜひ、こちらもご覧いただければ幸いです。