CS・ESの関係性とは?顧客と従業員の満足度を高めるためにすべきこと
CSとは、”Customer Satisfaction”の略であり、顧客満足のことを指します。
また、ESとは”Employee Satisfaction”の略で、従業員満足を指します。
従来から企業では、利益追求の為、製品やサービスの販売に大きく影響する、顧客第一主義のCSの向上に力を入れてきました。半面、従業員満足度に目を向けられることは少ない状況でした。
しかし最近は、働き方改革や、人材不足から、ESも注目されるようになり、極端な例だと、「CSよりES」との言葉も多くみられるようになっています。
では、顧客満足度と従業員満足度は対立する概念であり、どちらかのみが高まるような性質のものなのでしょうか?
この記事では、CS・ESの関係性を解説します。
1.CS・ESとは
企業の業績を左右する大切な要素として、
CS(Customer Satisfaction・顧客満足)ES(Employee Satisfaction・従業員満足)が広く知られていますが、具体的にはどのような意味を持つのか、この章で解説していきます。
1.1 CSとは
CSとは、顧客満足(Customer Satisfaction)のことを指し、製品やサービスが、顧客の期待にどれだけ応え、満足させているかを示す指標を指します。
CSが向上することにより、
・企業ブランドの向上
・新規顧客の創造、リピーターの増加
・売り上げのアップ
などの効果がもたらされると考えられています。
ポイントは、CSは、企業側(商品・サービスの生産者・提供者)の評価ではなく、顧客の評価で決まるため、顧客ニーズの把握が必須です。
どれだけ高品質・高機能・丁寧なサービスでも、ニーズがなければCSは向上できません。
1.2 ESとは
ESとは、従業員満足(Employee Satisfaction)のことを指し、
福利厚生やマネジメント、評価制度や働きがいなどについて、従業員の満足を示す指標です。
近年、ESの向上を意識する企業も増えていますが、その背景には人材不足の問題があります。
ESの向上でもたらされる効果は、
・生産性の向上
・意欲的な社員の育成
・従業員の定着率の向上
などが挙げられます。
ここでのポイントも、CS同様に、従業員の評価で決定されるため、福利厚生や評価制度などが従業員側のニーズと一致していることが重要です。
2.CS・ESは誰が高めるのか?
企業において、CSとESとともに重要な概念です。それでは、どちらかを優先して高めるものなのでしょうか?
答えは、「CS・ESは共に高めるもの」です。企業においては、CS・ESは両立して、どちらも高め続けていかなければなりません。
しかし、CSとESはそれぞれ高めるべき立場の人間は異なります。
2.1 ES=経営者を高める
企業経営において、一番大切なことは、経営者の戦略です。ここでいう戦略とは、会社が進むべき方向性を決めることを指します。
どの商品を、誰に販売するのか?新商品の開発を行う事は、すべて経営者にかかっています。
しかし、実際に顧客の下でその商品を生産し、販売するのは、従業員です。経営者のみで、ESを高めることはできません。
だからこそ、経営者はESを高める従業員のCSを高めるために、さまざまな手を打つ必要があります。
従業員が、顧客の満足を高められるようなサービスを行うために、従業員教育や待遇・福利厚生を行います。
CSの要素は、経営者一人では満たすことができませんが、ESの要素は、経営者の決断でより高めることができます。働きやすい会社や、誇りを持てる会社を作ることで、従業員は安心してCS、つまり顧客に全力で向き合うことができるのです。
2.2 CS=従業員を高める
経営者がESを高めるために力を注ぐのは、実際に顧客に商品を販売する従業員がCSを高めることに集中するためです。
特に中小企業では、商品の価値を高めることは、大企業の資本力に基づく開発力・広告戦略に立ち向かうことは困難です。しかし、サービス・情報の価値を高めることは可能です。
目の前の顧客に向き合うのは、経営者ではなく従業員です。その従業員が、意欲的に仕事に取り組むことができれば、サービス・情報の価値が高まり、CSは向上します。
2.3 CS・ESの関係性
古田土会計では、社長が自転車に乗る図を経営計画書に掲載しています。「社長は社員第一主義(ES)、社員はお客様第一主義(CS)」を掲げて、社員へ公表をしています。
CSとESの関係性は、自転車に例えることができます。
経営者は、会社の進むべき方向である戦略と、ESを高める施策を決定します。これは、自転車における、ハンドルと後輪に当たります。
経営者がESを高めたとき、従業員は、目の前の顧客の満足のために全力で仕事に取り組むことができ、前輪のCSが動き出します。
これがもし、どちらかに偏っていれば、自転車は前に進むどころか、倒れる(倒産)してしまいます。
CSとESの関係は、双方が両立しなければ、高めることはできません。
3.そもそもCS・ESにおける「満足」の定義とは?
そもそも、CS・ESにおける「満足度」とは、何を指すのでしょうか?
満足を感じる要素として、CSであれば、商品の価値や丁寧なサービスなどが該当し、ESであれば、給与や労働時間、福利厚生などが挙げられます。
人が満足を感じるには、次のような「期待と実感」の相対関係があります。
例えば、人は期待や価格を上回る商品やサービスを受けたとき、そこに「価値」を感じ、これが期待を下回ると、値打ちがないと判断します。
つまり、期待値を上回る実感(価値)を与えることが、満足度の評価を決めるのです。
これは、顧客に提供する商品・サービスの取引のみに当てはまるのではなく、従業員に対する企業の姿勢にも当てはまります。昨年を超える賞与が出た、他社とくらべて福利厚生がしっかりしている、など企業側から従業員に対して、期待を超える待遇を取ったとき、満足度は高まります。
顧客・従業員の期待・価格を上回る実感を与えることが、CS・ESの向上に重要なのです。
そして、ESについては、主に次の要素で決定されます。
①企業理念への共感
②評価制度の納得感
③人間関係
④快適な環境(給与・福利厚生etc)
顧客・従業員の期待・価格を上回る実感を与えることが、CS・ESの向上に必要です。
4.CS・ESの高めるには、企業理念の浸透が重要
ここまでで、CS・ESは双方が支えあうものであり、片方のみでは向上させることは難しいことを述べました。では、どのようにしてCS・ESを向上させるべきなのでしょうか?
2章で、CS・ESの関係性を自転車の前輪・後輪に例えて説明をしましたが、CSの向上には、ESを高めることが欠かせません。その為にまず用いられることは、顧客・従業員に対するアンケート調査です。
主な調査項目としては、CSでは
①商品(製品の機能や改善etc)
②サービス(わかりやすさ・スピード・丁寧な姿勢etc)
③情報(流行・口コミや評判、権威etc)
ESについては、
①企業理念への共感
②評価制度の納得感
③人間関係
④快適な環境(給与・福利厚生etc)
が挙げられます。
しかし、CSを高めるべく、商品の広告やスペックを高めたり、ES向上のために、給与を上げたとしても、一時的に効果はあったとしても、継続することはありません。
それは、「企業理念の浸透」がCS・ESの施策に対して最も重要であるからです。
パーソル総合研究所の調査では、ESの要素として、福利厚生や給与、評価制度などがありますが、その中でも企業理念の浸透が最も企業の業績、つまりCSの向上に資することが調査で明らかになっています。
(株式会社パーソル総合研究所「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」)
また、株式会社アレスグッドが行った、大学生の仕事・企業選びで重視する項目のトップに「会社のビジョンやミッションへの共感」を挙げています。
(株式会社アレスグッド調査より)
経営者は、従業員が安心して働く環境を整えるとともに、企業理念という「商品・サービスを販売すべき理由」に共感させることが、そこで働く従業員の満足=ESを高めます。その結果、従業員は、仕事を通して目の前の顧客のCS向上のため、全力で仕事に取り組むことができ、業績にも良い影響を与えるのです。
決して、CS向上のために、高品質な商品を開発する事や、ES向上のために給与を上げる・休みを増やしたとしても、従業員に企業理念が浸透していなければ、CSもESも高まることはありません。
古田土会計では、全国平均以上・業界平均以上の給与を語り、また休日も多く設定しています。顧客に対しては、毎年多種多様な新サービスを打ち出しています。しかし、CS・ES向上のために、最も重要にしていることは、社長が全社員に対して、毎週勉強会を開き、企業理念を浸透させることです。
この勉強会を通し、従業員は自社の存在意義と、誇りを感じ、自信をもってサービスをお客様に提供しています。創業以来43年間黒字を継続できている最大の要因は、企業理念の浸透です。
5. まとめ
CS・ESは双方が支えあうものであり、経営者はES、従業員はCSを全力で高めることが重要です。
そして、そこで最も重要なことは、企業理念の浸透です。
まずは、自社の企業理念を再度従業員へ語ることから始めてみてはいかがでしょうか?
古田土会計では、自社の理念と方針を、社員に語るための経営計画書の作成のお手伝いもしております。ぜひご連絡ください。