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自己資本比率が高い会社は潰れないという勘違い

自己資本比率が高い会社は潰れないという勘違い

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、基礎として抑えていただきたい内容をピックアップして解説していきます。

今回のテーマは、「自己資本比率が高い会社は潰れないという勘違い」です。

「毎年利益が出ているから、うちの会社は安全!という勘違い」の記事では、「利益が出ているからといって、借入金依存度が高く、自己資本比率が低ければ安全な会社とは言えない」「自己資本比率はまず30%以上を目標とする」というお話をしました。

そのため「自己資本比率が高ければ安心なのだろう」とお考えになった方もいらっしゃるかもしれませんが、答えは「NO」です。

「なぜ自己資本比率が高くても安心と言い切れないのか」
「安全な会社経営をしていくためにどこに気を付ければいいか知りたい」

このように考えている方は、ぜひご覧ください。

▽動画でも解説しています

※「毎年利益が出ているから、うちの会社は安全!という勘違い」の記事はこちら

会社が倒産する理由は「お金がないから」

なぜ自己資本比率が高くても安心と言い切れないのかと言いますと、いくら自己資本比率が高くても倒産する会社はあるためです。
その例が2020年5月に倒産したアパレル企業の「レナウン」です。

総資産が300億、現預金が33億ほどで、自己資本比率は約55%でした。
固定資産もそれほど多くなく、自己資本比率が55%ですので借入金もそれほど多くはありませんでした。
多かったのは、売上債権と棚卸資産です。
そして、メインバンクがお金を貸してくれなくなり、倒産しました。

倒産した理由はお金がなかったからです。
総資産300億円に対し、現預金が33億ほどなので、総資産の11%ほどしか現預金を持っていませんでした。

ここから言えることは、会社は「自己資本比率が高かったり、利益が出ていたりしているから大丈夫」というわけではないですし、逆に「赤字だから倒産する」というものでもありません。

逆に赤字でも資金さえあれば会社は生き残れる可能性はあります。
自己資本比率が高くても、利益が出ても、現預金がなければ倒産する。
「黒字倒産」と言われるのは大体そういう類のものです。

「潰れない会社」でいるためにどうすればいいか

では「潰れない会社」でいるためにどう対策を施せばいいのでしょうか。
自己資本比率は「最低30%」目標と掲げています。

現預金については、どうすべきか。
一般的には預金は月商の3か月分持つべきで、借入金は月商の6か月分以上持つと危険と言われていますが、私はそれに違和感を覚えます。

月商とはP/Lの売上高のことです。
B/Sのお金に関するものは売上高ではなく、売掛金であり、売掛金は現金で回収する業種もあれば、1か月~3か月で手形にて回収するような業種もあり、色々な業種業態によって異なります。棚卸資産も業種によって違います。

レナウンは総資産の2/3を売上債権と棚卸資産が占めていました。
決して月商に対する現預金が足りなかったのではなく、売上債権が多くて預金が少なかったために倒産しました。

また、例えば粗利益が10%の会社があるとして、卸売などの会社は粗利益率が同じでも売上が十倍異なります。
だからといって、十倍預金を持たなくてはいけないのかというと、そんなことはありません。

売上があれば必ず仕入れがあるため、売掛金があれば買掛金があります。
売掛金と買掛金の差額だけ資金が必要であり、「現預金を月商の3か月以上持たなくてはいけない」というのはあまりにも根拠のない話です。

借入金も月商の6か月以上あれば危険とは言い切れません。
自社ビルを持ってる会社と持ってない会社で比べてみると、自社ビルを持っている会社は借金が多いです。

一方、わが社のように全部賃借している会社は借金が少ないです。
そのため、借金も月商が参考にはなりません。
現実、不動産会社を見てみるとたくさん借金はあるものの、月商の売上はそれほどでもないという企業も少なくありません。
あくまでもお金はP/Lではなく、B/Sで見ることが大事です。

ここからは「安全と言える目安の基準」についてお話しましょう。

①総資産に対する預金の割合が30%
②自己資本比率は最低限30%目標
③借入金(金融債務)の割合も30%
④信用債務(手形など)の割合も30%

「3対3対3」の割合で覚えてください。
B/Sの右側は自己資本比率33%、借入金の比率33%、信用債務の比率33%です。

「いきなり全部は達成できない」と思った方もいらっしゃると思います。
どこから改善すべきかと言いますと、現預金です。現預金が総資産に対し30%なければ、まず借金をしてでも総資産に対して30%程度の預金を持つようにしてください。その結果、借入金の割合が40%、50%になるとしてもひとまず、現預金を優先します。

次に総資産の圧縮などでバランスシートの左側を少なくしたり、利益を蓄積したりすることによって、徐々に借入金を減らしていきます。
そうして借入金が減っていくと、自己資本比率が上がっていき、だんだんと右側が自己資本比率33%、借入金依存度33%というバランスになってきます。

繰り返しになりますが、会社はなぜ倒産するかというとお金(現金)がないからです。
ですので最優先するのは、総資産に対して3割を目安に資金を手元に持っておくことです。

そのための一番良い方法は借金することです。
その後に、総資産の圧縮や利益の蓄積によって借入金を減らし、自己資本比率を圧縮する。
そして「3対3対3」のバランスにしていくのが正しい財務改善の考え方です。

総資産に対する理想の現預金や自己資本比率の割合は?

「自己資本比率は最低限30%をまずは目指しましょう」とお話してきましたが、理想としてはどのくらいを目指せばいいのかご説明します。

古田土会計で出している「社長の成績表® 銀行交渉版」に自己資本比率の格付けスコアリングシートがあり、そこでは下記のように掲載しています。

・60%以上:10点
・50%以上:9点
・40%以上:8点
・35%以上:7点
・30%以上:6点
・20%以上:3点
・15%以上:1点
・15%未満:0点

つまり、理想的な自己資本比率は60%以上です。
現預金も総資産の60%以上あれば、預金の範囲内で全ての債務の返済が可能になります。
自己資本比率60%以上、現預金60%以上の状態になると、少々の不況が訪れてもびくともしない会社経営ができます。

とはいえ、実際に「自己資本比率60%以上、現預金60%以上」を実現している会社は一握りです。
「いずれはその状態を目指す」という目標を頭の片隅に置いていただければと思います。

補足しますと、私は無借金経営を勧めていますが、借金が絶対ダメというわけではありません。
自己資本比率が60%以上の多くの会社は無借金経営です。

しかし、銀行との付き合いで、例えば総資産が5億あるなかで、5,000万や1億円借金するのはかまいません。
銀行との付き合いで余分な預金を持っているようなもので、余裕があるなかで借金をするのは実質無借金と言えます。

まとめ:潰れない会社経営のためにはバランスシートを正しく読むことが必要

今回は「自己資本比率が高いからといって、安心とは言い切れない」というお話をしてきました。
自己資本比率が高くても現預金がなければ、会社が倒産する恐れはあります。
まずは、総資産に対する預金の割合30%、自己資本比率30%、借入金30%、信用債務30%の「3対3対3」の状態を目指しましょう。

そして総資産に対し、30%程度の預金がなければ借金をしてでも現預金を増やしてください。
会社が倒産するのは手元にお金がないからです。
現預金を増やした後、総資産の圧縮や利益の蓄積によって借入金を減らしていく方法があります。

バランスシートを正しく読むことで、潰れない会社経営ができます。

どういった点に注意すれば良いのか、ポイントをまとめた『BS(貸借対照表)とは』をご用意いたしましたので、ぜひ有効活用いただけますと幸いです。

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