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「無借金経営だと返済実績がなく、借り入れができない」という勘違い

「無借金経営だと返済実績がなく、借り入れができない」という勘違い

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、重要な内容をピックアップして解説していきます。

今回のテーマは、「無借金経営だと返済実績がなく、借り入れができないという勘違い」です。

世の中には「無借金経営だと返済実績がないため、借入ができない」「無借金会社は倒産しやすく、実質無借金が正しい」と、まことしやかに話す経営コンサルタントがいますが、これは的外れな見解です。

「もしものとき借入をするために、必要のない借金をしている」
「借金は金利があるため、支払手形の方がお得だと考えている」

上記に当てはまる方は、ぜひご覧ください。

▽動画でも解説しています

倒産した会社は借金過多または支払手形を振り出している会社

私は約40年、3,000社以上色々な企業を見ていますが、無借金経営の会社で、社長の高齢化や後継者不在で廃業する会社はあっても、倒産した会社は一社もありません。

倒産した会社は「借金過多または支払手形を振り出している会社」です。
現実、大損失を出したときに銀行がお金を貸さないのは、借金過多で現預金のない企業です。

「実質無借金の方が良い」という言説を信じ、本来必要のない借金をしている企業が少なくありません。
例えば本来、借金が2億円程度であるにもかかわらず、5億円借金していたり、預金は1億円あれば十分であるところ、借金して4億円持っていたりする企業もいます。

金利が1%以上であるため、年間で考えると少なくない利息を余分に払っている状態です。
そういう会社はあまり儲かっていませんし、社員の賞与も高くありません。
利息を支払っている分で社員に賞与を出せば、社員のモチベーションが上がります。

多くの借金をし、預金を持つということは無駄な利息を払い、借入金の返済を大きくしています。
そのために不要な借入もする状態になり、もったいないと言えます。

ここで必要なのは財務の勉強です。
財務を勉強すれば、自社に必要な借金・預金が見えてきて、無駄な借入をせずに社員に還元できます。

バランスシートの状態と安定順位を解説

では、バランスシートで見たとき、どういう状態を目指すべきなのでしょうか。
ここからは、中小企業が目指すべき安定順位を紹介します。

安定順位1は「借入金0で現預金が非常に多い」会社で、現預金が総資産の60%以上ある超優良・完全無借金の状態です。
私が「無借金会社」と言っているのはこの状態のことです。

実際にはわが社と契約しているお客様を含め、世の中に(ある程度の現預金がある)無借金会社は少なくありません。
ですので、無駄な借金をするのはもったいないことだと覚えておいてください。
そして無借金会社であると、何かイレギュラーな事態が起きても、会社はびくともしません。

安定順位2は「現預金が多く、借入金が少ない」、一般的に「実質無借金」と言われている状態で、現預金が総資産の50%以上ある優良会社です。借入金も預金の半分程度ですと理想的です。
預金より借入金が少ない状態を「実質無借金」と言いますが、言い換えれば「実質無借金」は定義に当てはまる幅が広く、本当の無借金に近い実質無借金もある一方で、預金と借入金がほぼ変わらない実質無借金もあります。

財務体質の改善とは「いかに預金を増やし、借金を減らすか。
そしてその差額を大きくすること」です。その差額が開けば開くほど、財務体質が改善されていると言えます。
財務体質の改善とは、必ずしも借金を0にすることを示すのではなく、預金を増やし借金を減らして、両者の差額を大きくすることでもあります。

理想は安定順位1か2を目指したいものですが、なかなか最初からそこを目指すのは困難です。
まずは自己資本比率30%以上を目指し、現預金が借入金より多い状態にしていきましょう。

安定順位3も実質無借金で、左右がバランスのとれた状態です。
自己資本比率が高い会社は潰れないという勘違い」の記事で、安全と言える目安について下記のとおり基準を示しました。

①総資産に対する預金の割合が30%
②自己資本比率は最低限30%目標
③借入金(金融債務)の割合も30%
④信用債務(手形など)の割合も30%

総資産に対し、バランスシートの左側は現預金が33%、右側は純資産・借入金・信用債務がそれぞれ3分の1ずつの状態を目指しましょう。

安定順位4は「現預金が多いけれども、借入金も多い、借金過多」の会社です。返済額が多いため、借入金も多くなり、無駄な利息の支払いが生じています。
「借りられるだけ借りる」は間違いだと覚えておいてください。
ただし、有利な条件で借りられる際には別です。有利な条件で借り、通常の借入金を返済することで、キャッシュフローを改善できるためです。

また新型コロナウイルス感染症に関して、日本政策金融公庫や銀行から、平時に銀行から借りる際にはなかなか見られないような有利な条件で借りられるようになっています。
このように、社会規模の非常時には特別な対応が取られるため、「念のため」に余分に借りる必要はないと私は考えています。

とにかく、利息が安くても無駄な借金は無駄であり、その分社員に多くの賞与を払ったほうが社員のモチベーションが上がるため、会社にも良い影響が期待できます。
社員のモチベーションは、教育よりもまずは賃金です。
賃金を世間相場よりも10%ほど高くすることによって、社員のモチベーションは上がります。

賃金を上げるためにどうすればいいかというと、利益を出す必要があります。
そのために無駄も省かなくちゃいけないというのがわが社の考え方です。
ゆえに財務体質改善において、総資産の圧縮を勧めています。

安定順位5は「現預金が少なく、借金が多い」状態で、中小企業に多く見られます。
毎年利益が出ているから、うちの会社は安全!という勘違い」の際にお話したように、現預金が少なく、借金が多い会社は、借金をしてでもまずは現預金を総資産の3分の1以上にしてください。
そして、据え置き期間を利用して返済したり、バランスシートの左側を改善していったり、利益を出したりして、徐々に借入金を減らしましょう。

経営コンサルタントが否定している無借金会社は、安定順位6のような会社です。
借入金は0であるものの、現預金が非常に少ない状態です。
現預金がほぼない無借金の会社は、借り入れ実績がないので銀行がお金を貸してくれないため倒産します。

本来、ここで問題なのは借り入れ実績がないことというより現預金が少ないことです。
6の状態は、借入金をしてでも現預金を増やすという改善方法があります。
目安としては総資産の33%の現預金を持つようにしましょう。

「無借金経営だと返済実績がないため、借入ができない」「無借金会社は倒産しやすく、実質無借金が正しい」といった情報は、財務の知識がない人が読めば勘違いするような表現方法で書かれていることも少なくありません。
誤読した人が「無借金会社経営は良くない。
少々余裕があっても(現預金があっても)わざわざ借金を多くする」という誤った判断をし、無駄な経費を使っている実態があります。

安定順位7は「現預金が非常に少なく、借金も非常に少ない」実質無借金会社です。
「借金は金利があるのでもったいない」と言いますが、そういう会社に限って資金の不足を支払手形の振り出しで調達しているケースが少なくありません。
「手形には利息がないから無駄がない」と考えているようですが、それは大きな勘違いです。

支払手形の中には金利と危険負担料が入っているため、お得ではありません。
さらに借入金は払えなかったら返済を止める「リスケ」ができますが、支払手形は返済を止めることは絶対できないので、リスクが高いのです。
現預金も借金も少ない状態で支払い手形を振り出すのは、危険だと覚えておいてください。

安定順位8は「借入金が多く、現預金が非常に少ない」借金過多の状態です。
この状態でも危険なうえ、支払い手形を振り出していたら会社はかなり危険と言えます。
借金が多い背景には、過剰な設備投資、無駄な建物の購入、社長貸付金の多さ、仮払金や立替金の多さも理由となっているので見直すべきです。

特に社長貸付金が多いのは、様々な事情もあるでしょうが、基本的には避けるべきです。
個人のために会社のお金を使うべきではありません。隠しているつもりでも社員は見ています。
社員は常に社長の後ろ姿を見ながら過ごしてるので、いくら隠していても、社長が公私混同していたら大体伝わるものです。
社長が公私混同していたら社員も公私混同し「この社長のために働こう」という熱意は湧きません。

一番の社員教育は、社員を激励することでも教育費をかけることでもなく、社長の後ろ姿です。
ですので、人一倍勉強し、清廉潔白に公私混同をしないような、人を大切にする経営、社員を大切にする経営を自分が先頭に立って示してください。
そうすることによって、社員のモチベーションが上がります。

まとめ:財務を知ることによって無駄な借入を防げる

今回は「無借金経営だと返済実績がないため、借入ができない」「無借金会社は倒産しやすく、実質無借金が正しい」といった認識がなぜ誤っているのか解説してきました。

倒産する会社の特徴は、借金過多または支払手形を振り出していることであり、望ましくない無借金経営とは現預金のない状態です。

本記事で紹介したように、バランスシートの安定順位の理想は1と2ではありますが、わが社では実質無借金の安定順位3を目指すようご提案しています。
そして、実質無借金を目指すにしても、大切なのは具体的な目標値と戦略です。
まずは実質無借金を目指し、少しずつ総資産を圧縮し借入金を減らしていき、現預金を増やし、財務体質を改善していきましょう。

財務を知らなければ、会社がいつ倒産するかも見分けられなくなってしまいます。
ゆえに社長は財務を知る必要があります。

今回ご紹介した、8つの安定順位がまとめられた資料を特典としてご用意いたしましたので、ぜひご活用いただけますと幸いです。

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