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振込手数料は受け取るほうが負担するという勘違い

振込手数料は受け取るほうが負担するという勘違い

「振込手数料は受け取るこちらが負担しないといけないの?」
「支払う側に手数料を負担させるおすすめの方法は?」

などと疑問をお持ちの経営者の方は、ぜひこのコラムをお読みください。

こんにちは。古田土会計・代表社員の古田圡満です。

本コラムでは、中小企業の社長の皆さまが勘違いしやすい事例をまとめた書籍『熱血会計士が教える 会社を潰す社長の財務!勘違い』から、ポイントをかいつまんで解説していきます。

この記事では同著の149ページ〜151ページを取り上げます。テーマは「振込手数料は受け取るほうが負担するという勘違い」です。

皆さんの会社では、振込手数料は支払う側が負担しているでしょうか。振込手数料を差し引いた金額が支払われている、つまり受け取るほうが振込手数料を負担していることはありませんか。

もし受け取るほうが手数料を払っているのであれば、一度取引先と交渉し、相手に払ってもらうように働きかけてみましょう。振込手数料を支払う側が負担することは、民法にも定められた原則だからです。詳しくは、以下の見出しで解説します。

▽動画でも解説しています

振込手数料は支払うほうが負担するのが原則

会計事務所としてお客様の元帳を見ていると、振込手手数料を差し引いての入金がかなり確認できます。つまり向こうで手数料を支払わず、「こちら持ち」で支払いが行われているケースが結構あるということです。

きちんとした会社であれば、請求書の中に「振込手手数料は御社が負担してください」と明記するので、上記のようなことは起こり得ません。しかし、手数料をどちらが払うべきかについて理解しておらず、本来支払わなくてもよい手数料を余分に支払っている会社も多いです。

今回はこのような事実を踏まえ、振込手手数料は受け取るほうではなく、支払うほうが負担するのが正解であることを解説します。

現実には受け取るほうが負担しているケースも多い

とはいえ、振込手手数料を受け取る側が負担することは、世の中ではかなり良く見られる現象です。実際、取引先から商品代金が振り込まれる際、振込手手数料を差し引いた金額になっていることも多いでしょう。

業界によってはこれが商慣習になっていることもあり、疑問を持つ人は少ないかもしれません。実際、私の顧問先でも手数料の支払いに応じている社長さんがたくさんいます。

しかし、これは完全なる勘違いです。振込手手数料は受け取るほうではなく、本来は支払うほう、振り込むほうが負担しなくてはなりません。

振込手数料の負担で年間100万単位の損をすることも

振込手手数料は1回あたりだと微々たるものですが、年間の累計となると100万単位で会社に残るお金に差が出てきます。支払い金額や取引の頻度が多ければ、それ以上の損失になり、収益にも影響する可能性があります。

そのため、本来支払わなくてもよい振込手手数料については、交渉や対策をして取引先に負担してもらうよう変えていきましょう。

【民法に根拠あり】手数料は原則として支払う側の負担

振込手手数料は、受け取る側でなく、支払う側が負担しなければなりません。受け取る側が負担する合意があれば別ですが、合意がない場合、手数料は振り込む側が負担するのが原則です。

これは法律的な裏付けがある話で、民法484条、485条に「持参債務の原則」という形で明文化されています。持参債務の原則とは、簡単にいうと、受け取る人の場所へ渡す人が目的のものや金銭を持っていくこと、そして持っていくのにかかる費用は渡す人が負担することです。

例えば、代金を支払いに行くのに電車を利用する場合、電車賃は当然のように自分で支払います。振込手手数料を振り込む側が支払うのは、これと同じ理屈なのです。

またネットショッピングでお金を払うと品物が届きますが、配送にかかる交通費や運賃などは売る側が負担します。これも同様に「持参責務の原則」を示す事例であり、支払う側が振込手手数料を払うことと本質的には同じです。

※参考

・手数料を振り込む側が支払うべき法的根拠

(弁済の場所及び時間)
第四百八十四条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
2 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。
(弁済の費用)
第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

出典:民法|e-Gov法令検索

・持参債務の原則:契約に基づく金銭などは、債務者が債権者の住所もしくは営業所に持参して引き渡さなければならない原則

取引先に手数料を負担してもらう方法

さて、続いては振込手手数料の負担を「相手持ち」にする方法をお伝えします。

まず新規取引先については、請求書に「振込手手数料は貴社の負担でお願いいたします」と明記するだけで十分です。このように明記しておけば、普通の人や会社なら払ってくれます。

問題は既存の取引先と交渉する場合です。これまで商慣習にならってこちらが支払っていた手数料を、突然「これからは払ってください」とはなかなか言いづらいこともあるでしょう。

これまで振込手数料を払ってくれていなかった取引先に今後は負担してもらいたい旨を伝えるのはどうすればよいのでしょうか。

「会計事務所の先生に言われた」と話してみるのがおすすめ

おすすめの方法は以下のように打診してみることです。

「会計事務所の先生に帳簿をチェックしてもらったとき、『振込手数料は本来振り込む会社が負担するものなので、一度お客さまに負担していただくようにお願いしてみてください』と言われました」。

私のお客さまにも同様のアドバイスをし、実践してもらっています。ぜひ一度お試しください。

【要注意】相手が難色を示したら交渉はやめておく

注意すべきなのは、振込手数料の支払いを拒否された場合は、すみやかに引き下がることです。無理にお願いして取引先そのものがなくなったら元も子もないので、感触が悪ければそれ以上の交渉はやめておきましょう。

たかだか月に700円〜800円くらいのために、取引自体を失ってしまうことはありません。

とはいえ、きちんと道理をわきまえた取引先であれば、支払いに応じてくれる場合も多いです。ちゃんと民法484条・485条に法的な裏付けもあるわけなので。

振込手数料による損失は年間960万円!?

振込手数料は金融機関によってさまざまです。なかにはそれを踏まえ、振込手数料を一律800円として差し引く会社もあります。

仮に月の振込手数料が800円の取引が1,000社あったとすると、年間で960万円も損をすることになります。一件一件は少額でも、年間で見ると相当な金額になるので、これ機会にぜひ取引先と交渉をしてみてください。

【せこい商売はやめとけ】支払う側は素直に手数料を負担すべき

ちなみに一回の振込手数料は多い場合は800円ほどかかりますが、少ない場合だと200円くらいです。しかし、実際は200円でも、できるだけ得をしようと振込手数料という名目で800円を差し引いて振り込む会社もあります。

今回は受け取る側の視点から解説していますが、振り込む側でもしそのような振り込み方をしているところがあれば、すぐに改めるべきです。せこい商売のやり方は、かえって信用をなくすことにつながります。

昔、ある喫茶店の経営者で、野菜やコーヒー豆などの請求書に対して、1,000円未満は切り捨てで払っていた人がいました。そのようなことをしていたら、取引先は切り捨てられるのを見越して、高い金額を請求してくるに決まっています。

例えば、本来5,800円のところを、800円が切り捨てられるのを防ぐために、6,000円で請求してくるということです。結果、喫茶店経営者のほうが損をすることになります。

このように、トータルで得をしたいなら、目先の損得にはこだわらないほうが良い場合もあります。

支払い先に手数料負担を要求するのはせこくない

振込手数料を支払い先に負担してもらうことは、法的根拠のある妥当な判断です。決してせこいやり方ではありません。

大半の支払い先に振込手数料を支払ってもらうことで、年間数十万円、場合によっては百万単位で経費が節減されて収入になります。そうなれば、今までと事業の状況は同じでも、財務はいくらか健全になるわけです。

このように売上を伸ばす以外にも儲ける方法があることを、経営者はきちんと知っておかなくてはなりません。

まとめ:手数料を負担してもらうよう取引先に交渉を

この記事のポイント:

・支払うほうが手数料を負担することは民法で定められた原則
・新規取引先には請求書に「手数料を負担してください」と明記
・既存の取引先には「会計事務所の先生に言われて」と交渉してみる
・相手が拒否したらそれ以上は交渉しないこと

振込手数料は受け取るほうが負担するというのは完全な勘違いで、支払うほうが負担するのが原則です。民法484条・485条にもそう定められています。

たしかに現実には商慣習で受け取る側が負担するのが当たり前になっていることもあります。しかし、手数料の負担をなくせば年間で数十万から数百万円のお金が節約できることもあるので、ぜひ取引先に振込手数料を支払ってもらうよう交渉してみてください。

交渉の仕方は、新規取引先には請求書に「振込手数料は貴社がご負担していただくようお願いいたします」などと明記しておくだけでOKです。既存の取引先に対しては、「会計事務所の先生に交渉するように言われて」という切り出し方で話をしてみましょう。

なお、注意すべきなのは、相手が支払いを拒否したらそこでお願いするのをやめることです。無理に頼み込んで取引そのものがなくなってしまったら元も子もないので注意しましょう。

そういった1つ1つの積み重ねが、強い会社を作ります。

また、今回の振込手数料に限らず、ちょっとした項目の見直しが案外会社に大きな影響を与えることがあります。

会社の現状を把握するためにも、ぜひ当社で活用する『未来会計図表』をご活用ください。

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