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【お客様インタビュー】食品からつくる医療用の模擬臓器の開発に挑戦(株式会社寿技研 4/7)

【お客様インタビュー】食品からつくる医療用の模擬臓器の開発に挑戦(株式会社寿技研 4/7)

事業のトランスフォームに焦点をあて、今注目の企業に、苦境からの脱却や業績が伸びた転機といった、さまざまなストーリーをお聞きするお客様インタビュー。今回は、埼玉県にある株式会社寿技研の代表取締役・高山成一郎さんからお話を伺います。

同社は金属・樹脂加工やラジコン用のスポンジタイヤ製造などを手がけ、近年では手術トレーニング用品などの医療関連機器製造にも注力されている会社です。現在の世相から見ても、同社の歩みは非常に興味深い例だと思いますので、みなさんぜひご一読ください。

▽動画も視聴いただけます

◇前回までの記事はこちら
【お客様インタビュー】脱なんでも屋を図る町工場が新事業に挑むまで(株式会社寿技研 1/7)

【お客様インタビュー】数字に強くなれば会社の将来がより見える(株式会社寿技研 2/7)

【お客様インタビュー】未知の医療業界で商品が売れた秘訣とは(株式会社寿技研 3/7)

【出演者】
インタビュイー:
株式会社寿技研
代表取締役社長
高山 成一郎氏

インタビュアー:
株式会社古田土経営
代表取締役社長
飯島 彰仁

好調に伸びた売り上げも3年を過ぎて止まり…

飯島 背水の陣の覚悟で、自ら活路を見いだされた高山さんですが、現在、展開されている医療機器に関してライバルはいらっしゃるんですか?

高山 いますよ。例えば中国製品にはもっと安いものがありますから。けれどもアマゾンなどに出品されてはいても、たくさん売れているわけではないようです。やはり安価の製品は、国を超えてやりとりするほどの付加価値はないので、日本国内では当社が日本の先生向けにつくった製品がスタンダードになりつつあると思います。

飯島 寿技研の取り扱う医療機器商品は、どう変遷されていったのでしょうか?

高山 当社のネットショップには、僕たちが一番初めにつくった医療機器の名前を含む「腹腔鏡トレーニングボックスのお店」というタイトルをつけています。腹腔鏡手術のトレーニングボックスは、日本全国何千万人などではなく、特定の人たちのみをターゲットにしている製品です。ですから、これを探している人が検索するキーワードをそのままつけたんですよね。

腹腔鏡手術トレーニングボックスの売り上げに関しては、初年度1千万円、2年目2千万円、3年目4千万円というペースで勢い良く伸びていきました。けれども、製作を勧めてくれた先生からは、無限に売れ続ける製品ではない、とは言われていたんです。腹腔鏡手術の練習をしたい先生が常にたくさんいるわけではありませんからね。そして実際に、3年目を過ぎたあたりで「あれ、急に勢いが止まったな」と感じたんです。

飯島 売り上げが落ち着く兆しが見えたんですね。

高山 その頃にはいろいろな先生方と知り合いになっていたので、「もっと売り上げを上げたいのですが、ほかに何か必要なものはありますか?」と尋ねて回りました。ただ、学会などに参加する中で、余裕のある企業はどこも、注射針や手袋といった消耗品を扱っていることにも気づいていたんですよね。ですから当社でも、手術トレーニングに必要な消耗品があれば、それを商品にしたいと考えました。

飯島 確かに、消耗品は繰り返し購入されますからね。

安定した売上が得られる「消耗品」開発に挑む

高山 その中で教えていただいたのが、手術の練習に使う豚の臓器は使い捨てなので、ある意味、消耗品であるということです。しかしそれは生体なので、臭いや衛生面などの問題もあって、頻繁に使用されているものではなかったんですよね。豚の臓器を使うのは、ほかに道具がないからにすぎず、「衛生的で使いやすく、安い道具があればそれを使いたい」と、皆さん思われているようでした。「電気メスで切ったり、超音波メスで剥がしたり、縫ってふさいだりといった練習ができる便利な道具があれば、幅広い場面で利用される可能性があるはずだよ」という先生の言葉を受け、僕は豚の臓器に代わる手術の練習用の臓器をつくってみようと思いました。

それからは2〜3か月ほど、どんなものを用いればそれができるのかを、毎日ずっと考え続けていました。「ゴムスポンジではできないか?いや、電気が通らないから電気メスが使えない」「電気が通るスポンジはないか?」「シリコンのような素材はどうだ?」など…。そうやって探してみると、使えそうな素材は結構あったんですよね。

僕も学会では、3Dプリンターで再現した特殊な樹脂製の肝臓は見たことがありました。それは電気メスでも切れるという上質なものでしたが、価格が1個20万〜30万円もするんですよ。豚の臓器なら数百円〜数千円で買えるので、やはりそのくらい手軽でかつもっと便利なものでなければいけないと思いました。

そして次に思いついたのが「食品ならいいのではないだろうか?」ということです。調べてみると、食品で手術の練習用の臓器を製造している会社は、日本にも世界にも存在しないことがわかりました。「まだ存在しないもの」ということは、当社がその商品でトップランナーになれるかもしれないということです。

早速、どんな材料が良いかを探し始めたときに、以前テレビで紹介されていた焼肉店で、牛レバ刺しの代わりに、赤く着色したこんにゃくが提供されていたことを思い出したんですよ。そこで、レバ刺しの代わりがこんにゃくなら、手術の練習に使う臓器がこんにゃくでも良いのではないか、と思ったんです。

手術練習用の模擬臓器をこんにゃくで試作

高山 こんにゃくが原料の模擬臓器、これは可能性があるかもしれないと思いました。ちょうどその頃、「渋沢栄一ビジネス大賞」の2014年度コンテストの「ベンチャースピリット部門」で、当社の腹腔鏡手術トレーニングボックス事業が、3等賞にあたる特別賞をいただいたんです。そしてその時に大賞を獲得したのが、「蒟蒻屋本舗株式会社」という会社だったんですよ。

蒟蒻屋本舗さんにこの話を相談すると、快く協力してくれると言ってくださいました。それと並行して先生を訪ねて、電気メスでこんにゃくを切ってもらったりなどもしましたね。

そうやって少しずつ話を進めていたある日、弁理士の方にこの話をしたんです。すると「他社の協力で進めると自社の技術にできない可能性が高い。これまでいろいろ自分でやってきたのだから、まずは自分でつくってみたら」と言われたんですよ。他社に協力してもらう場合でも、まずは自分で試作してみて、それから技術を展開していくほうが良いのでは、ということでした。

飯島 なるほど。確かにそうですよね。

高山 それからは、こんにゃく粉を買って、社内の食堂で朝から晩までこんにゃくを練るようになりました。「今日は何を混ぜようか…」と、いろいろなことを試みたりしました(笑)。

こんにゃく自体、電気メスでの切れ味は最初から良かったんですよ。先生も「これはリアリティのある切れ方をするな〜」とおっしゃっていました。ただ、切る前にピンセットのような機械の端子でつまんだりひっぱったりする必要があるのですが、普通のこんにゃくだとその工程でちぎれてしまうんですよね。メスで切れるだけでは手術の練習にはならないので、つまんだりひっぱたりすることができて、そのうえ電気メスで切れて、最後は縫えなければダメだと。縫えるこんにゃくをつくるのはかなりハードルが高いと思いましたが、つまりそれは、どこもそう簡単にはつくれるものではないということでもあります。なので、もしこれが実現できたら、ほかが真似できない特別な技術になる可能性が高いと思いました。

そうして1週間ほどこんにゃくを練り続けていると、失敗して山積みにしていたこんにゃくがひからびてくるんですよね。すると、そのひからびたこんにゃくに、そこそこ強度があることを発見するんです。現在はひからびさせる技術は用いていないのですが、そういった試行錯誤を繰り返しながら、つまんだりひっぱったり、縫ったりできるものに近づけていったんですよね。

飯島 現在の製品が完成するまでに、相当いろいろなチャレンジを繰り返されてきたんですね。

高山 そうですね。けれども先にもお話ししましたが、根拠はなくても常に「できるに違いない」という気持ちはあったんですよね。また、国からの補助金を受けることもできたので、種さえ見つかればチャレンジすることは困難ではありませんでした。

製品が完成するまではアルバイトを雇い、必要な装置も補助金で購入して、1年間毎日パターンを変えながらさまざまな実験を続けました。そうして1年半ほど経った頃、先生に絶賛されるくらいの品質のものをつくることができたんです。

飯島 試作は何百回のレベルではないということですね。

高山 いやもう、そんなレベルではなかったですね。けれどもやはり、その過程もずっと楽しいわけですよ。途中段階の試作品でも、先生方に披露すれば「すごい!すごい!」と言っていただけるわけですからね。

第5回に続く]

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