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継続的・安定的な成長に向けた「正しい拡大のやり方」【社長の仕事その3】

継続的・安定的な成長に向けた「正しい拡大のやり方」【社長の仕事その3】

継続的に安定的に成長していくには「正しい拡大のやり方」がある。

倒産のリスクが少ない強い会社を目指してください。最初の2、 3年は利益が出ないものとして資金計画を立てておくことが大切です。

多額の借り入れをしてスタートすると、あっという間に立ち行かなくなり、倒産する恐れがあります。

出典:古田土 満「社員100人までの会社の『社長の仕事』」, p.38

今回のテーマは、会社を成長させるための正しい拡大の方法です。拡大の仕方を間違うと、会社は「成長」ではなく「膨張」し、すぐに倒産してしまう可能性があります。

会社を末永く守りたい人、正しい経営のやり方を知りたい人は、ぜひ以下の内容を参考にしてください。

▼動画でも解説しています。

会社は「お金」でつぶれる

会社はなぜ倒産するのか。その理由はお金がなくなるから。つまりは資金繰りの問題です。

会社の倒産は以下4つのタイプに分けられます。

1. 売上も利益も伸びているが、お金がなくて倒産するタイプ
2. 売上は伸びているが、利益が減ってお金がなくなり倒産するタイプ
3. 急激に売上・利益が減少して倒産するタイプ
4. 本業の業績とは無関係に、何らかの事故で倒産するタイプ

出典:古田土 満「社員100人までの会社の『社長の仕事』」, p.39

今回一番伝えたいことは、「会社は『お金』でつぶれる」ということです。いくら借金があっても手元にお金があれば会社はつぶれません。反対に、いくら利益が出ていても、手元にお金がなければ会社はつぶれます。

倒産する会社のタイプは、以下の4種類に分類することが可能です。

1. 売上も利益も伸びているが、お金がなくて倒産するタイプ

会社が拡大すると、売上や受取手形、棚卸資産が増えます。しかし、買掛金や支払手形は、売掛金や受取手形ほど増えません。買掛金・支払手形は、売掛金・受取手形より少なくなります。

買掛金は、売上高に対する変動費です。売掛金に粗利益率から算出した経費率を乗じて求めます。つまり売掛金×(1-粗利益率)=買掛金という関係にあるわけです。例えば、粗利益率が50%の会社は、売掛金が1億円ならば買掛金は5,000万円になります。売掛金と買掛金の差額は5,000万円です。

粗利益率50%の会社が拡大した場合、売上が2倍になると売掛金と買掛金の差額も2倍になることに注意しなければなりません。売掛金が2倍の2億円になれば、売掛金と買掛金の差額も2倍の1億円になります。つまり売上が2倍になれば、さらに5,000万円不足するということです。

売上が増えたとき、不足する資金を事前に調達しておかなければ、資金繰りがショートしてしまいます。会社を成長させるには、売上を増大させる前にまず資金を準備しなければなりません。このことを経営者は肝に銘じておくべきです。

以上のようなことを知らない経営者が多いので、売上が増えたらお金が足りなくなって銀行に駆け込むという事態が起こります。そして貸してもらえず会社が倒産するというケースがよくあります。

2. 売上は伸びているが、利益が減ってお金がなくなり倒産するタイプ

目標を「売上高」だけで設定している会社は、倒産する危険性が高いといえます。

社員の目標を全て売上高で設定すると、社員は売りやすい商品を優先して売るようになります。しかし、売りやすい商品はたいてい粗利益をあまり取れないものです。そのため、利益が出にくくなって経費の負担が大きくなり、やがて自転車操業になって会社は倒産します。

3. 急激に売上・利益が減少して倒産するタイプ

3番目のタイプは、コロナ禍で多くの会社が経験した事例です。

コロナ禍で会社の売上は全体的に大きく下がりました。とくに減少が顕著だったのは、飲食業やクリーニング業、ホテル業、旅行業などです。たくさんの会社が、売上高が急減して倒産に追い込まれました。

売上高が急激に減ったときに倒産する原因は、内部蓄積の少なさが挙げられます。会社は内部蓄積が少ないまま拡大すると、急に売上高が下がったときにお金が足りなくなり、すぐに倒産してしまいます。緊急事態の資金繰りに使う内部蓄積を、会社は用意しておかなければなりません。

以上のようなお金と売上、利益の関係を経営者は知る必要があります。我々はいつも言っていますが、「売上より利益、利益よりお金」です。まずお金をしっかり確保し、その上で拡大しないと、会社はすぐに倒産してしまう恐れがあります。

従業員の給料や事務所の家賃など、会社には最低限必要なコストがあります。売上が急激に下がって利益が出なくなれば、そうしたコストをまかなえず、会社は当然つぶれてしまいます。おそらく多くの人がイメージしやすい倒産はこのタイプでしょう。

4. 本業の業績とは無関係に、何らかの事故で倒産するタイプ

4番目のタイプは、特殊なケースの倒産です。例えば、まだ力が十分でないのに土地・建物を買い、その後売上が思うように上がらず倒産するようなケースを指します。

また他人の個人保証により連鎖倒産するケースも、4番目のタイプに分類されます。

「成長」と「膨張」の違い

1番目のタイプ(売上も利益も伸びているが、お金がなくて倒産するタイプ)は「膨張拡大」の例です。

過剰な設備投資、身の丈を超えた急速な事業拡大などの結果、売上・利益が伸びているのに十分にお金が残せなくなります。そして資金繰りに行き詰まり、倒産してしまうのです。

出典:古田土 満「社員100人までの会社の『社長の仕事』」, p.39

会社の倒産は資金だけの問題ではありません。

一般的に、10年経てば100社のうち8社しか生き残れないと言われています。92社は倒産してしまうのです。倒産する理由は、お金とマーケティングの不足にあります。

売上が上がりながらも倒産するケースでは、マーケティングはある程度うまくいっているのかもしれません。問題点は財務を知らないことです。お金を残しておくことの重要性を知らないために倒産します。

会社はヒトでも倒産する

また、よく「企業はヒト・モノ・カネ」と言いますが、「ヒト」の準備が整わないまま拡大しても、会社は倒産します。拡大したもののそれを管理する人材がおらず、ヒトの不足で倒産するわけです。

ヒト・モノ・カネのバランスが取れていない状態で拡大することを、我々は「成長」と言いません。それは「膨張」です。

成長とは、売上と利益の両方を十分に出し、お金もしっかり確保してから拡大することを指します。また「ヒト」の観点では、事業を担う人材が育ってから拡大することが成長です。

簡単に潰れてしまう中小企業の多くは、資金とヒトの面をかえりみずに「膨張」し、倒産してしまいます。利益が出ない、お金が残らない拡大は、成長ではなく膨張です。

会社を成長させる正しい拡大の仕方

継続的に成長していくためには、正しい拡大のやり方があります。

出典:古田土 満「社員100人までの会社の『社長の仕事』」, p.42

会社を始めたばかりの人は、正しい拡大のやり方を知らなければなりません。

例えば飲食業では、まず最初の店舗で徹底的に成功することが肝心です。高収益型の店舗を一つ作りましょう。最初の店舗がそれほど儲かっていないのに、第2、第3の店舗を出してはいけません。

内部留保を作ってから拡大する

また最初の店舗で成功を収め、次の店舗を出す場合も、一定の自己資金を初期費用に充てることが必要です。借り入れをする際は、どの程度の借入金が財務的に適正なのか、きちんと精査しなければなりません。

1店舗目で成功したものの、2店舗目、3店舗目を出して失敗して倒産する。このケースが一番多いです。最初の店舗で成功したとしても、内部留保が十分にないまま次の店舗を出してはいけません。

通常運転でも危ういですが、コロナ禍のように各店舗の売上が急激に下がる事態に見舞われたときには、会社はあっという間に倒産します。

儲かる事業構造を確立してから拡大する

新商品の開発や事業の多角化、周辺ビジネスへの進出などは、儲けられる事業構造を確立した後に取り組むべきです。

とくに新規創業の場合、創業1年目から利益が出せるのは、大変恵まれたレアケースといえます。通常、最初の2、 3年は利益が出ないものと仮定し、資金計画を立てておく必要があります。とりわけ設備投資が必要となる事業の場合は、そうした準備が大切です。

少ない自己資金と多額の借入金で事業をスタートすると、あっという間に立ち行かなくなり、倒産するリスクがあります。

出典:古田土 満「社員100人までの会社の『社長の仕事』」, p.43

会社を成長させるには資金計画が肝心です。お金がないにもかかわらず膨張すると、会社はすぐに倒産してしまいます。経営者の方には、以上の点を肝に銘じていただきたいです。

まとめ:成長するにはまずお金を残すこと

会社を順調に成長させるには、正しい拡大の仕方があります。ポイントはお金(内部留保)を十分に作ることです。会社はお金がなくて倒産します。裏を返せば、お金さえあれば会社はつぶれません。

また「ヒト・モノ・カネ」のバランスに配慮することも大切です。拡大したものの人材が足りず、事業が行き詰まることもあります。資金と人材の確保を最優先し、「膨張」ではなく「成長」を目指しましょう。

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