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経営計画は過去の数字の分析ではなく安定成長に必要な利益額で考える【社長の仕事その5】

経営計画は過去の数字の分析ではなく安定成長に必要な利益額で考える【社長の仕事その5】

過去の数字の分析からではなく、安定成長に必要な利益額から考える

安定成長を続けるには「対前年比◯%アップ」という考え方ではなく、必要な利益額を出発点とする必要があります。安定成長のためにどのくらいの売上が必要かを分析し、目標売上などの予算を策定します。

出典:古田土 満「社員100人までの会社の『社長の仕事』」, p.50

この記事では、経営計画を立てる際の正しい順序について解説します。効果的な経営計画の立て方が知りたい方、経営や財務がうまくいっていないと感じる方などは、ぜひ以下を参考にしてください。

▼動画でも解説しています。

経営計画を「売上高」から立てるのは間違い

コロナをきっかけにお客様とリモートで会話ができるようになりました。そこで「経営計画書を作成していますか」という質問もよくしますが、「作っています」という答えも時々返ってきます。

経営計画書を作っているお客様には「作り方を教えてください」といって、とくに数字の計画の立て方についてお聞きします。「最初に決めるのは何ですか」と聞くと、「売上高」と答える方が多いです。

続けて「誰から教わりましたか」と聞くと、「税理士さんから教わりました」「コンサルタントから聞きました」などと答えられます。私はそうした答えを聞いて、「それは間違っていますよ」と毎回言っています。

売上から立てる来期の計画は、経営計画ではありません。過去の延長線上に未来はないのです。

社員中心に立てる計画は消極的

売上から来期の計画を立てている会社の多くは、社員が中心となって数字を考えています。しかし、社員が中心になって立てる計画に、来期以降の意欲的な数字が出てくるはずはありません。

社員は自分が立てた計画に対して責任を負いたくないと考えます。そのため、前年並みか前年より少ない計画を立てることが多いです。もし意欲的な数字を掲げて、それが計画通りに行かなかったら自分が責められるわけなので、どうしても消極的になります。

また社長が計画づくりを主導する場合でも、「前年対比5〜10%売上アップで作れ」という流れになることがよくあります。しかし、全ての商品が5〜10%アップすることは現実的ではありません。

計画の出発点は「税引後利益」

経営計画を作る上で理解しておくべきことは、貸借対照表(B/S)の目的です。バランスシートの目的は、自己資本比率を上げながら現預金を増やすことにあります。

自己資本比率を上げるには、総資産を圧縮しながら純資産を増やすこと。そして純資産を増やすには税引後利益を増やすことが必要になります。つまり税引後利益を増やすことが財務の目的なので、税引後利益こそが最初の出発点になるわけです。

社員に関係あるのは「経常利益」まで

損益計算書でいうと一番下にあるのが税引後利益、それから逆算した税引前利益、そして特別損益を加味して経常利益になります。特別損益などは「特別」なものなので、無理矢理計画の中に入れる必要はありません。

また特別損失として一般的である固定資産の売却損や役員退職金などは、会社の経営において社員には関係ないものです。社員に関係があるのは経常利益までになります。

中には「営業利益まで」という人もいますが、それは大企業の話です。大企業は営業外収益で配当金や利息がもらえて、それらも収益源になるので、計画はその前の営業利益で見る必要があります。また上場企業は財務体質がよく、市場からも資金を調達できるので、支払利息もそれほどないわけです。

一方、中小企業は市場からお金を調達できません。調達の手段は借入金です。設備投資も借入金によって行います。そのため、支払利息が発生します。

加えて、自社のビルや工場を持っていない会社はそれらを借りることになるので、地代家賃も発生するわけです。そのため、地代家賃と利息の両方を加味しないと正しい数字にはなりません。

よって中小企業の計画は経常利益からスタートします。経常利益からスタートし、一般的な営業外収益、営業外費用を加味します。正確に言えば「経常利益−営業外収益+営業外費用」の式で、下から逆算して営業利益を出すのです。

未来費用も売上の目標に大きく影響する

次に、我々が「未来費用」と呼ぶ人件費や一般経費、減価償却費などを、今期の予想をしながら算出します。

減価償却費はすぐに計算できます。一般経費も前期の数字を参考にすれば容易に計算可能です。

会社の計画を作るときに肝心なのは「人件費」です。これからコロナ後の物価上昇により、社員の生活はどんどん苦しくなっていきます。人件費計画では、そうした社員の生活を豊かにすべく、いかに給料や賞与をアップするかが重要です。

そうした人件費の計画を中心とした固定費の数字が上がっていくと会社が稼がなければならない粗利益の額も上がります。粗利益が増えるということは、基本的には売上高が増えるということです。

つまり粗利益額を粗利益率で割るという仕方で逆算すれば、会社に必要な売上高の数字がわかります。

商品別販売計画の必要性

粗利益の性質は業種によって異なります。単純に全商品の粗利益が平均で40〜50%といった業種もあれば、商品ごとに粗利益率が異なる業種もあります。例えば自動車整備業の場合、整備の利益率は60%、新車販売は8〜10%、保険は100%です。

そのように商品ごとに粗利益が違う業種では、トータルの利益を決めたらそれを商品ごとに分ける必要があります。商品ごとに分類し、商品別販売計画を作るのです。商品別に分けて粗利益を確認して粗利益率で割れば、商品ごとに目標の売上高を出せます。

粗利益率の違いを加味した売上目標の出し方

上記の自動車整備業を例に説明しましょう。保険で1,000万円の粗利益を稼がなくてはならないなら、保険の粗利は100%なので目標の売上高も1,000万円です。

次に新車販売の粗利益率を10%と仮定し、1億円の粗利益を稼ぐとすると、新車販売では10億の売上高が必要になります。そのほか、粗利益率60%の整備業で3億円の粗利益を稼ぐ場合、達成すべき売上高は5億円です。

以上より、1,000万円、10億円、5億円を足した15億1,000万円が目標の売上高になります。

単純に平均粗利益で計算してはいけません。商品ごとに粗利益を計算しなければ、正しい売上と粗利益が出ないのです。

社長が未来の貸借対照表を作る

経営計画の数字編における目的は、未来の貸借対照表(B/S)を作ることです。また経営の目的は自己資本比率をアップさせることなので、常に税引後利益を増やすような計画を立てることが必要になります。

常にお尻から逆算して売上高を出すことが重要です。一つひとつの商品別販売計画、どの商品をどれだけ売るかという計画を経営者自身が作りましょう。

商品別販売計画には、新商品やこれから伸ばすべき商品、粗利益の高い商品なども含みます。各商品に対して経営者の目線で判断しながら売上を設定するわけです。

社員は販売計画を立てられない

社員が出した数字をもとにして商品別販売計画を作ってはいけません。社員は売るべき商品ではなく、売りやすい商品を売ろうとします。売りやすい商品はたいてい粗利益の少ない商品なので、たとえ売上高の目標を達成しても粗利益が不足する恐れがあります。

そのような計画は、経営計画とはいえません。数字のことを正しく理解しなければ、本当の計画は立てられないのです。

社員への「数字教育」も重要

もう一つ大事なのは、社員への「数字教育」です。例えば、計画より売上・粗利益が1,000万円少なくなったら、いくら経常利益が減少するか。そうした数字に関する実践的なことを普段から教育しなければ、社員は売上高だけを求めてしまいます。

「この商品の売上高が1,000万円下がったら、粗利がいくら下がって、その結果として経常利益がどうなるか」。そうしたことを社長はもちろん、社員も理解しておかなくてはなりません。

そのような数字教育もしながら経営計画書を作り、計画と実績を対比していく。そして出た誤差に対して対策を打つ。これが正しい経営のあり方です。

くれぐれも経営計画のことをわかっていない人たちの話を鵜呑みにし、本来あるべき経営計画の数字の作り方を勘違いしないでください。

まとめ:経営計画は必要な粗利から逆算して立てる

経営計画は逆算です。なぜなら経営計画は未来を創るものだから。過去の延長線上に未来はありません。売上高から計画を作るなど、「愚の骨頂」だと私は考えています。

下から積み上げていくようにして粗利益を決め、その粗利益を達成できるように売上高を決めるのです。粗利益さえきちんと確保できれば、本来売上などどうでも良いといえます。

また商品ごとに粗利益率は違うため、商品別販売計画を立てることも大切です。以上のようなことを理解し、正しく経営計画を立てていただきたいと思います。

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