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貸借対照表(B/S)を読めるようにする方法【なぜ、社長は決算書が読めないのか③】

貸借対照表(B/S)を読めるようにする方法【なぜ、社長は決算書が読めないのか③】

なぜ中小企業の経営者は、「貸借対照表(B/S)」と「資金」のことがわからないのか。損益計算書(P/L)以上に、貸借対照表は理解されていません。

著書『なぜ、社長は決算書が読めないのか』でも主題にしたその問題の原因について、私なりに気づいたことがいくつかあります。この記事では、貸借対照表が読めない原因と読めるようになる方法を紹介するので参考にしてください。

▼動画でも解説しています。

貸借対照表の正しい読み方

会社の経理部や会計事務所からは、当月分の試算表しか出されません。毎月、その月の試算表が2、3枚で出てくるのです。

私は多くの社長さんに聞きました。「社長さん、貸借対照表のどこを見ていますか」。

するとほとんどの社長さんが「どこを見たら良いかわからない」と答えました。彼らは、誰からも貸借対照表のどこを見るべきか教わっていないのです。

こうした経験から私は、会計事務所が会計のプロとして、お客様に数字について教えなくてはいけないと思いました。だからこそ、このコラムや動画で、諸表の読み方を解説しています。

貸借対照表(B/S)は、2、3枚に分けて見てはいけません。バランスシートは必ず1枚で見るのが鉄則です。

貸借対照表の目的

また貸借対照表が読めるようになるには、その目的から理解する必要があります。貸借対照表の目的は、自己資本比率を上げながら現預金を増やすことです。自己資本額を増やし、自己資本比率を高めて、同時に現預金を増やすために使います。

「財務体質の改善」という言葉がよく使われます。財務体質の改善とは、借入金を減らしながら預金を増やすことです。また借金と預金の差を大きくすることを指します。あくまでも問題となるのは「お金」です。

貸借対照表はお金の残高と流れを表した資料になります。どの勘定科目にいくらお金が流れているか、バランスシートを見ればわかります。残高だけでなくお金の流れを知るために、借方・貸方を分析する必要があります。

目指すべきは「無借金」

貸借対照表の目的は、自己資本比率を上げながら預金を増やすことです。よって、同表で見るべき勘定科目は、自己資本額と借入金、預金ということになります。自己資本比率を上げるということは、借入金依存度を減らすことにほかなりません。

財務体質には、債務超過から自己資本比率90〜100%まで、さまざまなフェーズがあります。普通の会社には買掛金や売掛金、棚卸資産がいつでも残るため、自己資本比率をいくら高めても90%くらいまでにしかなりません。未払金と買掛金が必ず残るのです。

しかし、借入金はゼロにできます。それを実現すれば「完全無借金会社」と呼ばれます。そのような会社も世の中には多いです。自己資本比率を上げるということは、借入金が減っていき、無借金会社に近づいていくことを意味します。

お金の流れはキャッシュフロー計算書で見る

貸借対照表で見るべき勘定科目は、自己資本額と借入金、預金です。そして流れを見るのが資金の合計、つまりは「キャッシュフロー」になります。

キャッシュフローをどのように見るかわかるでしょうか。ほとんどの会計事務所は、中小企業に対してお金の流れを見るための資料を何も提供していません。しかし、資金の動きは、本来「キャッシュフロー計算書」で見られます。

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は、一般的に「財務三表」と呼ばれます。けれども、「三表」という呼び名は適切ではありません。キャッシュフロー計算書は、貸借対照表から作られるものだからです。

貸借対照表の借方・貸方の増減をまとめたのがキャッシュフロー計算書になります。キャッシュフロー計算書における当期純利益や減価償却費などは、貸借対照表から数字を持ってきて作成するのです。

ちなみに我々古田土会計が提供するキャッシュフロー計算書では、肝心の数字を空欄にしています。経営者や幹部の方に、自分で計算して数字を記入してほしいからです。自分で記入することによってお金の動きが認識できます。

キャッシュフローに最も影響を与えるのは、当期の利益、売上債権、買掛債務、棚卸資産、そして借入金の返済です。我々が独自に考案したキャッシュフロー計算書では、そうした資金の動きを把握できます。

しかし、キャッシュフロー計算書で見るのは、あくまで1ヶ月のお金の動きです。そのため、1期分や全期分など、累計で資金の流れを見ることはできません。

累計の貸借対照表こそ財務改善のツール

経営に役立つのは当月の貸借対照表(およびキャッシュフロー計算書)ではありません。経営者が真に活用すべきなのは、累計の貸借対照表です。

経営者が知りたいと考えるのは、当期になっていくら借りたか、いくら返したか、減価償却累計額はいくらあったか、利益はいくらだったか。全て累計の数字に関する事柄です。

そのため、バランスシートは累計で見ることが重要になります。

累計だからお金の流れが見える

貸借対照表は累計で見なければ肝心なことがわかりません。

損益計算書の場合、当月だけでなく過去の数字を横に並べるため、過去の状況と平均と比較しながら数字を見られます。要するに過去のことを思い出しながら変化を読み取れるのです。

ところがバランスシートではそうはいきません。バランスシートはお金の流れを表すものなので、残高を横に比較しても無意味です。流れを表すものだからこそ、累計で増減を見る必要があります。

例えば、借入金は今と期首の数字を比較しても実態が見えません。見るべきなのは期首から今までにあったお金の動き。具体的には長期借入金をいくら借り、いくら返済したのかという観点こそが重要です。点と点を比較するのではなく、累計で見なければ動きは捉えられません。

固定資産ならいくら購入し、いくら売却したのかが重要です。土地・建物の売却後、3ヶ月もすれば、元々何円だったものをいくらで売ったかなど、覚えていないでしょう。だからこそ確認のための資料として貸借対照表が必要です。

会計事務所が累計のB/Sを提供しない理由

当月の業績を掴むには、累計のバランスシートで数字を読まなければなりません。しかし、古田土会計を除き、累計のバランスシートをお客様に提供している会計事務所はほとんどないのが現状です。

なぜ世の会計事務所は、累計の貸借対照表を提供しないのか。それは「試算表を経営に役立てる」という発想がないからです。皆「財務会計」のほうしか向いていません。

キャッシュフロー計算書の使い方

さて、累計の動きを見るのに便利な資料が「キャッシュフロー計算書」です。キャッシュフロー計算書は、全て貸借対照表の貸方と借方から数字を持ってきて作成します。

キャッシュフロー計算書では、まず営業活動のキャッシュフローを出し、それに投資キャッシュフローを加えてフリーキャッシュフローを算出します。この3つのキャッシュフローと長期借入金の返済額を比較し、財務体質を検証するのです。

具体的には以下のようなことを確かめます。

  1. 当期純損益金額(当期利益+減価償却累計額)で長期借入金を返済できているか
  2. 営業キャッシュフローで長期借入金を返済できているか
  3. フリーキャッシュフローで長期借入金を返済できているか

上記のうち、3しか満たさない、もしくはどれも満たさない場合、会社の借入金が多すぎると判断できます。借入金が多く、それを無理なく返済するだけの収益がないのです。改善するには利益を増やすことに加えて、借入金の返済額を少なくすることが重要になります。

コロナ禍で4億円の借金から解放された会社の事例

我々のあるお客様は、月1,200万円の返済額を330万円まで減らしました。コロナ禍で4億円を、据置期間3年、返済期間10年、無担保・無保証で借りたのです。それによって今まであった約4億円の借金を全て返済し、無理のない返済額にすることができました。

その会社はコロナ禍に乗じて借り方を工夫することで、キャッシュフローをガラッと改善することに成功したのです。

まとめ:貸借対照表は累計で見ることが肝心

貸借対照表は、残高と動きを見ながら対策を打つための資料です。その使い方を実現するには、バランスシートは当月と累計で見る必要があります。累計で見る際は、キャッシュフロー計算書と一体として数字を確認します。これが貸借対照表の正しい読み方です。

これを機会にぜひ、バランスシートを「累計で見る」という観点を取り入れてみましょう。

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