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経営の判断を誤らない「数字に強い経営者」になるには【なぜ、社長は決算書が読めないのか②】

経営の判断を誤らない「数字に強い経営者」になるには【なぜ、社長は決算書が読めないのか②】

私、古田土満はこの度、8冊目の著作となる『なぜ、社長は決算書が読めないのか』を出版しました。このブログでも同著で紹介している内容をいくつかピックアップして皆さんに解説します。

今回は、経営者が決算書を読めるようになり、数字に強くなるにはどうすれば良いのかについて、基本的な事項を紹介します。損益計算書(P/L)が読めない方、決算書を経営に役立てる方法が知りたい方などはぜひ参考にしてください。

▼動画でも解説しています。

決算書を経営に役立つよう組み替える

普通の試算表の場合、目的は決算書を作るだけなので、当月分だけで構いません。しかし、決算書に「経営に役立てる」という発想は含まれていないことに注意が必要です。

「売上原価」は「変動費」として考える

財務諸表を経営に役立てるためには、普通の試算表を組み替える必要があります。具体的には、「売上高」に対する「売上原価」を「変動費」に組み替えましょう。

古田土経営では、中小企業の会計に役立つよう、月次の試算表ではなく、「月次決算書」ないし「月次推移変動損益計算書」をお客様にお渡ししています。決算の時は、それを再度組み替えて財務会計に直すだけです。

月次決算書では、売上高に対して「売上原価」ではなく、「変動費」という勘定科目を使っています。変動費とは、材料費、外注加工費、商品仕入費の3つです。例外は設けず、全てその3つの勘定科目のどれかに割り当てて考えます。

付加価値は粗利益として定義する

さて、「売上高−変動費=粗利益」という式があります。粗利益とは「付加価値」のことです。

世の中では「付加価値÷人件費=労働生産性」という式が一般的に知られています。しかし、労働生産性のもとになる付加価値が明確に定義されていません。加えて、計算がややこしいことも問題です。そのため、中小企業の経営の役には立ちません。

中小企業の経営に役立てるために我々は「付加価値=売上−変動費=粗利益」と定義します。

変動費には労務費と経費を含めない

一般的に売上原価(変動費)には労務費と経費を含みますが、我々は含めません。労務費と経費を入れてしまうと、売上の変化に基づく利益の変化がわからないからです。

経営者としては、売上が増えたら利益が増えないと納得できないはずです。反対に売上が減った場合、利益が少なくなったり赤字になったりしても納得するでしょう。そのため、売上と利益が明確な相関を持つように設定しなければなりません。

言い換えれば、経営者が考える経営の数字に近いように月次の試算表を作り直すことが必要です。その作り直しの結果生まれた資料こそが「月次決算書」です。

売上の変化に基づく利益の変化を読む

売上高に対して材料費・外注費・商品仕入費のみを変動費とし、残りを粗利益(または付加価値)と定義する。すると、売上高に対する粗利益率がわかります。

例えば、とある会社の月次決算書において、粗利益率は62.5%でした。この場合、売上が5,000万円ならば、粗利益は3,12万円です。

またこの会社における固定費の平均は約2,600万円でした。よって、利益は525万円だとシミュレーションできます。このように、月次決算書を活用すれば、売上の変化に基づく利益の変化が読み取れるのです。

数字は大きい順に並べる

固定費の中で、経営者は「人件費」に一番の関心を持っています。なぜなら中小企業の固定費の中で、金額が最も大きいのが人件費だからです。

よって、経営に役立つ試算表を作るには、人件費を筆頭に、大きい順に数字を並べることも大事だといえます。大きい順に数字を並べたほうが、経営者が数字を見やすいからです。

財務会計で使う試算表と同じように、役員報酬がほかの人件費と離れて下のほうに来るなど、配置がバラバラだと役に立ちません。よって、私たちの月次試算表では、人件費を「役員報酬、販売員給与、事務員給与、従業員賞与」のようにまとめて配置しています。

まとめて配置することに加え、適度に科目を分けることで、部門・部署別の人件費の動きを把握することが可能です。

固定費は月々に均して記載する

賞与は月々に引き当てて固定費とします。6月と12月など、賞与を払った月だけ人件費が多いと正しい損益を認識できないからです。

また法定福利費は決してマイナスにしてはいけません。例えば12月は、30、31日が休みで引き落としが1月4日となるため、法定福利がゼロになります。しかし、実際は12月分のお金なので、1月に含めたのでは正しい情報になりません。

固定費の数字は、経営の実態に合うよう、均(なら)して試算表に組み込むのが適切です。

会計事務所の怠慢と社長の数字意識

我々会計のプロは、中小企業の経営に役立つよう、損益計算書(P/L)の表記方法を工夫し、変更するべきでした。そうすれば、中小企業の社長と幹部の多くは、数字が読めるようになったでしょう。

ところがほとんどの会計人は、ただ決算書に合わせて月次試算表を作るだけで、経営に役立てようという意識を持ち合わせていなかったのです。そのため、多くの中小企業の社長は、数字が読めなくなってしまった。これが私の考えです。

多くの社長は利益の変化を読めない

中小企業の社長は、売上の変化だけでなく、それに基づく利益の変化も知らなくてはなりません。例えば、下記のような設定を仮定してみましょう。

  • 売上高 – 4億7,000万円
  • 粗利益率 – 62.5%
  • 経常利益 – 3,600万円
  • 売上高経常利益率 – 7.7%

上記の状態から売上高が1,000万円下がったら、経常利益はいくら下がるでしょうか。この質問に対し、多くの経営者は「売上高経常利益率が7.7%だから77万円下がる」と答えます。

経営者と幹部の多くは、月次の試算表しか見ていません。その月次の試算表で見るのは「売上」と「利益」だけです。この場合の利益とは「経常利益」のことを指します。そのため、売上が1,000万円変わると、7.7%の比率で経常利益は77万円しか下がらないと考えてしまうのです。

ところが実際には違います。売上高が1,000万円下がると、粗利益率が62.5%なので粗利益は625万円下がります。一方で固定費は変わらないため、経常利益は625万円下がるというのが正しい計算です。経常利益は3,600万円から3,000万円未満まで下がることから、割合で見ると相当な下落となります。

固定費は売上によって変動しない

固定費は経営者の判断で変化するものであり、売上によって変わるものではありません。売上高が増減すれば粗利益額は増えたり減ったりしますが、固定費は変わらないのです。

よって、粗利益が下がった分だけ経常利益も下がります。こうしたことを経営者と社員が知らなければ、経営の判断を誤ることになります。

まとめ:『なぜ、社長は決算書が読めないのか』で財務の勉強を

中小企業の経営者が数字を読めない原因の一端は、会計事務所にあるというのが私の考えです。

財務会計のための資料を、経営に役立つ形式に組み換えてお客様に説明する。そうしたことに会計業界はこれまで取り組んできませんでした。そのため、中小企業の社長は数字に弱く、間違った経営判断をしてしまうのです。

そうした状況を打開するために、今回私は『なぜ、社長は決算書が読めないのか』という本を出版しました。本にすれば何度も読み返すことができます。ぜひお手に取って、財務の勉強にお役立てください。

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