あなたの会社に元気と未来を届けます!

CLOSE

BLOG ブログ

社長が会社を経営するうえで大切なこと【なぜ、社長は決算書が読めないのか①】

社長が会社を経営するうえで大切なこと【なぜ、社長は決算書が読めないのか①】

実は、多くの社長が「月次決算書」に独自の読み方があることを知りません。多くの方は「月次決算書を年次決算書の見方で読む」という罠にはまっています。

そのうえ、わざわざ間違えるような形で書類を作り、それを見ています。

出典:古田土 満「なぜ、社長は決算書が読めないのか」, p.3

これから数回にわたって、私の8冊目の著作『なぜ、社長は決算書が読めないのか』を題材に中小企業の経営を解説します。経営の方法に迷っている経営者の方、もっと経営成績や財務を良くしたいとお考えの方などはぜひ参考にしてください。

初回の今回は、私がこの本を出版した理由についてお伝えします。

▼動画でも解説しています。

数字が読めない中小企業の経営者たち

私は色々なところで経営や財務に関するセミナーをやっています。中小企業家同友会、倫理法人会、トップリーダーなど。銀行さんから頼まれてセミナーをすることもあります。

残念ながら、そのようなセミナーで、参加した社長や幹部に数字のことをお話しても、ほとんど理解してもらえません。「自己資本比率は何%ですか」と聞いても答えが返ってこないし、どこを見たら良いかすらもわかっていない。

そのため、私は当初「中小企業の経営者はなぜ数字を勉強しないのだろう」と思っていました。しかし、その考えは間違っていることに気がついたのです。

会計事務所が数字を教えないのが根本の問題

そもそも中小企業の社長や幹部に数字を教えるべきなのは、会計事務所です。会計士や税理士は会計のプロなので、専門家として適切なレクチャーをしなければなりません。

ところがほとんどの会計事務所は、中小企業の社長や幹部に数字の見方を理解させるという観点で仕事をしてきませんでした。多くの会計事務所は、決算書とそれを作るための試算表を作成することに終始してきたのです。

会計事務所が提供する形式的な資料の無益さ

経営の役に立つような資料を会計事務所は提供してきませんでした。月次の試算表はあくまで決算書を作るための道具です。財務会計に合わせて作られるものであり、経営の改善を主眼にしたものではありません。

決算時、中小企業では貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を作ります。そして決算が終わったら、会計ソフトでその決算書の分析をします。しかし、多くの経営者はその分析の意味をほとんど理解していません。

決算から3、4ヶ月経ったあと、会計事務所から説明もありますが、その説明に対する理解も不十分です。加えて、説明する側(会計士)にも、数字を理解してもらいたいという意識はありません。聞いている側(経営者)も数字が読めないので、ただうなずいているだけです。

以上のように、決算で作られる財務諸表は、全くといって良いほど、経営の役に立っていません。

銀行の分析も経営の役に立たない

銀行も決算書を分析してくれます。しかし、それは会計事務所よりもっと後、決算が終わってから5、6ヶ月後の話です。これも経営の役には立ちません。

なぜ銀行の分析が年1回しかないかというと、同じ月のデータがないと比較できないから。銀行が確認するのは年1回の決算書だけなので、そのタイミングでしか分析ができないのです。今年と過去の決算書を比較・分析し、会社のアドバイスや銀行の格付けに関する説明などが行われます。しかし、ほとんど経営の役には立ちません。

数字を理解するには「月次決算書」が必要

経営に役立つのは、月次ごとに経営者や幹部がわかるように数字を説明することです。数字を説明するためには、決算のための試算表ではいけません。

経営に役立つ数字を説明できるのは月次決算書です。月次決算書こそ、社長や幹部、社員が数字に強くなり、数字を経営に生かせるようになるための最高の資料なのです。

良い経営成績とは

簿記の3級を勉強すると、貸借対照表は「財務状態」、損益計算書は「経営成績」を表す資料だと習います。それでは、経営に活かすという観点においての「経営成績」とは一体何でしょうか。簿記3級ではこの点はほとんど論じられていません。まずはここから考えてみましょう。

良い経営成績とは何か。何事にも目的があることから、経営にも一つ一つの業務にも目的が存在します。例えば、我々は挨拶を大切にしていますが、挨拶には人づくりという目的があります。

「前年比」や「黒字・赤字」は本質的な指標ではない

損益計算書(P/L)の目的は「利益」です。ここで問題になるのが、どのような利益を上げることがP/Lが示すべき「良い経営成績」なのかということ。この質問に対して「前年より売上と利益が上がることが良い経営成績」と答える人もいるでしょう。

しかし、前年より会社の売上と利益が増えることが、すなわち良い経営成績といって良いのでしょうか。例えば、業界全体が活性化していた場合、ほかの事業者はもっと前年比を伸ばしているかもしれません。つまり前年より数字は伸びていても、同業者に比べて伸び率は劣っているかもしれないのです。

またコロナ禍では、多くの会社が売上と利益を落としました。それでもさまざまな努力をして減少幅を少なくしたり、固定費の削減に取り組んで赤字を減らしたりした企業もあります。「赤字=悪い成績」と決めてしまうと、そうした企業の成果を評価できなくなります。要するに利益とは、前年と対比したり、赤字・黒字で判断したりするものではないのです。

利益の正しい認識

利益の正しい認識は、利益計画と比較することにあります。

年間の利益計画を作って目標を12ヶ月分に分け、月ごとに当月と累計の実績を計画と比較する。当月の売上に関する計画と実績の対比、累計の売上に関する計画と実績の対比。また粗利益の計画・実績、固定費の計画・実績。比較することで利益の差額が出てくるわけです。

差額を認識した上でそれに対して対策を打てば、やがて差額は消えます。つまり計画通りに利益を上げられるのです。

経営の目安にすべき正しい利益とは、社長が中心となって作成した利益計画と販売計画に載っている数字です。計画に届かなくてもオーバーしても、会社の見込み違いがあります。計画と実績を対比して差額を出すことで、どこを読み違えたかを認識し、改善のための対策が打てます。これこそが経営です。

売上は商品別や得意先別に考える

正しい利益を表す利益計画と販売計画において、一番誤差が出るのは「売上」です。よって、売上の内容は「商品別」や「得意先別」、場合によっては「担当者別」に細分化して考えましょう。どの商品や取引先に対する誤差があったのか、誰が担当しているものだったのかというように、詳細に結果を確かめます。

得意先別販売計画に関しては、誤差が大きくなるのは「新規開拓」の顧客のはずです。まずは新規開拓の計画に対して実績が正しく出ているか確認しましょう。誤差が出ていれば差をなくすための対策を打ちます。これが正しい経営のやり方です。

以上のようなことを、多くの中小企業は誰からも教わっていません。経営者が数字を読めない原因は、このような実態にあります。

利益の数字は横向きに比較する

繰り返しますが、正しい利益の認識とは、計画と実績の対比です。それも月次ごとに対比することで現状を正確に認識できます。

なお、損益計算書で利益を見る際のポイントは、数字を横に比較することです。計画と実績の対比、各月の対比など、全て数字を横に並べて比べることで、差を認識しやすくなります。

月次推移損益計算書がおすすめ

そのために必要なツールが「月次推移損益計算書」です。通常の損益計算書で当月だけの数字を見るのでは、数字は頭に入りません。

しかし、ほとんどの会計事務所から提供されるのは当月の損益計算書です。そのため、例えば11月分の試算表では、10月までの累計、11月の月次、11月までの累計しか載っておらず、数字を比較するのに役立ちません。結果として数字が頭に入らないのです。

数字を頭に入れるためには、各月の損益計算書を横に比較しながら値を見る必要があります。横で比較することで、会社が立っている位置がわかります。また過去にさかのぼって数字をチェックすることも可能です。だからこそ数字に強くなれます。

まとめ:利益の認識とは計画と実績の対比

数字の意味は、当月だけを見ていてもわかりません。数字は過去との関係、平均との関係など、比較の中で見てはじめて意味を持ちます。

最も実用的なのは、利益計画において当月の計画と実績を比較することです。これを機会にぜひ月次決算書を導入し、数字の勉強および数字による経営改革を始めましょう。

『マネるだけ、埋めるだけで作れる経営計画書 作成シート(ダイジェスト版)』
無料プレゼント!

今すぐ無料ダウンロードする

古田土会計グループでは、経営者のお悩み別に無料セミナーを行っています。