『目的と目標を勘違いしていませんか』 (運は人との出会いと利他の心)

目的は経営理念、目標は売上、利益等の数字です。
致知3月号の2023WBC侍ジャパンヘッドコーチの白井一幸氏の記事に「侍ジャパンが掲げた目的と目標」がありましたので書かせてもらいます。
「何のためにこの目標を達成するのか。この目標を達成するとどんなことが起きるのか。どんな価値が生まれるのか。侍ジャパンは世界一になるという目標を掲げましたけど、それは必ずなれるわけではない。もっと大事なもの、我々ができることは何かというと、野球を通して多くの皆さんに感動をお届けする。これが侍ジャパンの目的でした。目標は世界一、目的は世界中の人達に感動を届ける」とありました。
私はこの文章を見て野球のヘッドコーチの言葉とは思えませんでした。
特にこの目標を達成すると「どんなことが起きるのか」「どんな価値が生まれるのか」には感動しました。
監督やコーチがこんなことを考えながら戦っていたとは驚きです。
この言葉は経営者が常に考え続け、実践しなければならないことなのです。
そして何よりもすごいのは目標と目的を明確に示し、監督、コーチ、選手が共有して全員が一丸となって戦ったことです。
企業経営で目的と目標を示すと、目的は経営理念、目標は売上、利益等の数字です。
私は昨今の企業の不祥事や社員に過大なノルマや目標を与え、数字が人格などと言い、業績中心主義の経営をしている経営者は目的と目標を勘違いしているのではないかと思っています。
私は社員教育で、「目的は、経営理念の浸透です。目標の数字は手段です。数字のために理念からずれてはいけません。」と言い続けています。
多くの中小企業では経営理念がありません。
あっても形ばかりで役員、幹部すら覚えていないのが現実です。
ですから、経営の目的は、売上や利益の目標を達成することだと勘違いしています。
経営の目的は、自社の成果ではありません。
世のため、人のため、社会に貢献すること、社員が幸せになることでなければならないと私は思っています。
侍ジャパンの目的は「世界中の人達に感動をお届けする」すばらしい目的です。
だから監督、コーチ、選手が一丸となって戦えるのです。
ジャンプして届くくらいがよい目標
会社の理念も全く同じで世のため、人のため、社会に貢献するために我々はこの仕事に誇りを持ってするわけです。
そして社内の成果は、業績中心主義の会社は、役員報酬以外の人件費はコストと考え過大 な売上目標等の成果を求めます。
社員の幸せを目的とする会社は、人件費はコストではなく、目的であると定義し、社員の給与賞与をアップするために必要な売上、利益を目標とします。
社員はどちらの会社の社長のもとで働きたいでしょうか。
ある雑誌に仕事の領域の話がありました。
(1)コンフォートゾーン…容易にこなせる安定したパフォーマンス。
(2)ストレッチゾーン…努力することで目標が達成できる。適度な緊張感がある。
(3)パニックゾーン…過度なレベルを要求される。パフォーマンスとモチベーションが低下する。
私達古田土会計は売上は10%以上成長しないことを目標としています。
10年で2倍が目標。
ジャンプして届くくらいがよい目標と考え、ずうっと実行してきました。
その結果目標はほぼ達成してきました。
(2)のストレッチゾーンを目標とした結果だと思います。
(3)のパニックゾーンを社員に要求すると目標達成が無理なので社員は最初からチャレンジしなくなったり、達成感が味わえないのではないかと思います。
目的と目標の違いをわかっている社長は、社員にパニックゾーンを要求しません。
運は、人の縁と自分の言葉と行いで他人を喜ばせることにより与えられるもの
最後に「運」について私見を書きます。
3月31日に臨済宗円覚寺派管長横田南嶺氏と円覚寺で対談することになりました。
横田氏の本や記事はよく読んでいるので本当に光栄なことと思っています。
去年の5月に勲章をいただき、天皇陛下に拝謁できたのも運がよかったからです。
なぜ運がよいのか心あたりがあります。
出会った人がよかったから、うちの社長、役員、社員がすばらしかった、出会ったお客様等がよかった。
そしてもう1つは利他の心で社会貢献をしてきたことです。
運は、人の縁と自分の言葉と行いで他人を喜ばせることにより与えられるものと気がつきました。
古田圡 満