『中小企業は、原価計算で損をする』 (利益計画は最初に経常利益と人件費を決める)
外部報告用の決算書は、全部原価計算によって売上原価が計算される
会計には、財務会計と管理会計があります。
一般的には、財務会計です。
中小企業において税務署や銀行に提出するものは、法律や規則によって形が定められております。
形を統一しておかないと期間比較や同業他社との比較ができないからです。
外部報告用の決算書は、全部原価計算によって売上原価が計算されます。
製造業は「製造原価報告書」建設業は「完成工事原価報告書」です。
内容は、1.材料費2.労務費3.外注加工費4.経費です。
原価計算には2つあります。
全部原価計算と直接原価計算です。
ほとんどの会社が財務会計の全部原価計算のみで月次も決算も計算しています。
会計事務所に経理の表示方法を任せておくと会計事務所は税務申告書を作成するのが仕事ですから、決算のための会計すなわち、全部原価計算による月次の試算表を作ります。
また多くの税理士は経営に興味がないため、経営の役に立つ試算表を作ろうとはしません。
何故全部原価計算では損をするか
中小企業において、経営者が欲っしているのは、経営の役に立つ数字です。
全部原価計算では経営の役に立たないと私は思っています。
そこで私達古田土会計では、決算は財務会計による全部原価計算。
期中は管理会計である直接原価計算により損益計算書を作成するというやり方をしています。
古田土式月次決算書は、未来会計図、月次推移変動損益計算書で儲けるための会計で数字の説明をしています。
何故全部原価計算では損をするか説明します。
甲社は弁当の製造販売会社です。
店舗は10店舗あります。
工場で製造し、各店舗で販売しています。
売上高2億円、売上原価1.2億円(材料費70M\、労務費40 M\、経費10 M\)売上総利益80 M\、販売費及び一般管理費80 M\で営業利益0とします。
各店舗別損益計算書は、売上高に対して材料費は35%、製造労務費は20%、製造経費は5%なので、A店売上高30 M\に対して原価は材料費10.5 M\、労務費6 M\、経費1.5 M\の18 M\、売上総利益12 M\、A店の人件費9 M\、家賃等の経費4 M\なのでA店は個別で▲1 M\の赤字です。
それに本社費が年間で2 M\が配賦されるので、年間で▲3 M\の赤字です。
A店は閉店すべきでしょうか。
通常の判断では個店で赤字なので閉店すべしという判断になりますが、正しい判断は閉店すると赤字が増えるので店は継続すべきです。
工場の人件費と経費は個店の売上に関係なく発生する固定費です。
売上原価に含めてはいけない費用です。
そこで直接原価計算に直すと、売上高30 M\、変動費10.5 M\、限界利益19.5 M\、個店の固定費13 M\となり、個店利益6.5 M\-(マイナス)本社費配賦(6 M\+1.5 M\+2 M\)9.5 M\=▲3M\の赤字になります。
すなわち、店を閉めることにより、A店の利益6.5 M\がなくなるので全体としては、赤字1 M\が減ってプラス1 M\になるのではなく、6.5 M\の赤字になります。
このように中小企業では直接原価計算により経営判断しないと損をすることになります。
人件費の目標を高く定める
また利益計画は、直接原価計算により作成されます。
目標とする粗利益(MQ)を限界利益率(m率)で割って目標売上高を計算するからです。
利益計画は経常利益から逆算して作成されますが、大事なのは人件費の計画です。
一倉定先生が言っているように「高収益高賃金経営こそ生き残る道」なので高賃金経営にするためには、人件費の目標を高く定めることです。
では高賃金はどのくらいなのかというと、私の尊敬する坂本光司先生によると、きちんとした賃金を払っているという目安は、社員の年齢の15倍程度からだと考えているそうです。
30歳で450万円、40歳で600万円の計算になり、20倍払っていると高賃金を支払っていると感じているそうです。
また先生は、経営者の報酬は社員の5倍程度にとどめるべきだとも言っています。
古田土はお客様の相談を待っています。当然無料です。
古田圡 満