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【お客様インタビュー】6歳の女の子のために受けた仕事が今の事業展開の原点に(株式会社浜野製作所 3/7)

【お客様インタビュー】6歳の女の子のために受けた仕事が今の事業展開の原点に(株式会社浜野製作所 3/7)

本連載は、中小企業の星として、今やメディアに引っ張りだこの株式会社浜野製作所 代表取締役CEOである浜野氏へのインタビューを書き起こしたものです。

全7回に渡るシリーズものとなっていますので、ぜひ中小企業の経営のヒントを得ていただけますと幸いです。

▽動画も視聴いただけます

◇前回までの記事はこちら
【お客様インタビュー】時代や環境の変化を見つめて事業展開をする中小企業の鑑(株式会社浜野製作所 1/7)

【お客様インタビュー】インターンシップの受け入れが会社に新たな風を吹き込んだ(株式会社浜野製作所 2/7)

【出演者】
インタビュイー:
株式会社浜野製作所
代表取締役 CEO
浜野 慶一氏

インタビュアー:
株式会社古田土経営
代表取締役社長
飯島 彰仁

パイプ加工品を6歳の娘にあげたい
その依頼の奥にあった事情とは

飯島 ホームページからお問い合わせをしてきた方と電話で話して、浜野さんはどこか重く暗い印象を受けたということですが…。

浜野 お問合せをくださったのは、奥様と6歳の娘さんとの3人で暮らすお父さまです。彼の依頼内容は「1週間後に6歳になる娘の誕生日にプレゼントを贈りたいので、その日まで間に合うようパイプの加工品をつくってもらえないか」というものでした。純正パイプの加工品を6歳の子にプレゼントするとはどういうことだろう?違和感を覚えた私は、さらに詳しく話を聞いてみたんです。

飯島 確かに、不思議に思いますよね。

浜野 彼は娘さんをとてもかわいがっていました。会社が休みの週末には、一緒に公園へ遊びに行ったり土手を散歩したり…、それが彼にとって生きがいであり唯一の楽しみだったそうです。けれどもある時、彼が目を離した隙に、ボールを追いかけて公園から飛び出した娘さんが、車にひかれて半身不随になってしまったそうです。彼は「娘の人生を変えてしまったのは自分だ」と、悔やんでおられましたね。彼は娘さんが手術を終えて退院した後も、車椅子を押して一緒に公園や土手へ出かけていました。もちろん娘さんを元気づけたいという思いがあってのことだそうです。ところがある日、娘さんから「今までのように遊べないし、もう公園や土手には行きたくない」と言われるんですよね。娘の気持ちを察することができなかった自身の無神経さを悔やんだ彼は、今度は娘さんの欲しがるものをなんでも買い与えるようになったそうです。おそらく彼は娘さんに毎日「パパのせいでごめんね」と言って、娘さんの言うことを無条件に聞き入れていたのでしょう。次第に娘さんも「私はパパのせいで歩けなくなったんだ」と思うようになり、だんだんとわがままになっていきました。

そんな娘さんを、なんとか歩けるようにしたいと思った彼は、最初にかかった病院からカルテと診断書をもらって、いろいろな病院へ相談してまわりました。するとある総合病院で、整形外科の先生とリハビリの先生が2人揃って話を聞いてくれ、「保証はできないが、もしかしたらお嬢さんは歩けるようになるかもしれない」と言ってくれたそうなんですよ。

そして、小さなリハビリから段階的に進めていくことになり、まずは家庭で1日1〜2分でも良いからトレーニングをするよう指導されました。けれども住まいはマンションで、リハビリ機器などは買えません。そこで彼が思いついたのは、娘さんの使っている介護用ベッドの機器を改造して、トレーニング道具をつくることでした。リハビリの先生にも、それは良いアイデアだと言われたので、彼はこれを娘さんの6歳の誕生日にプレゼントしようと決めます。そうして誕生日の数か月前に、介護ベッドメーカーや購入店に製作を依頼しました。ところが、いろいろなところでたらい回しにされていたのでしょう。メーカーから断りの連絡が、誕生日の1週間前に来たそうです。途方に暮れた彼は、インターネットで検索して数社に問い合わせをします。そして、最初に電話がつながったのが当社だったんですよね。

多忙でもなんとか力になりたい
現場スタッフも協力し依頼品を完成

私は最初に生まれた娘を、小さいうちに病気で亡くしているんです。この子は生まれてから自宅に帰ってくることなくずっと入院していたので、あの頃は休日になると妻と一緒に朝から晩まで病院で過ごしていました。ですから彼の話を聞いた時、当時の何とも言えない気持ちを思い出して、なんとか力になりたいと思ったんですよね。当時は毎日遅くまで残業するのが当たり前の時代で、私たちの通常業務も多忙だったのですが、現場スタッフたちにこの話をすると、みんな「ぜひやりましょう」と協力してくれて…。なんとか1週間でパイプの加工を仕上げて、無事製品を配送することができました。

そして娘さんの誕生日の翌日、彼から「浜野製作所の皆様へ」とメールが届いたんです。その書き出しは「実は誕生日の前日に夢を見たんです」というものでした。彼は夢のなかで、娘さんに「こんなのいらない!リハビリなんてしたくないし、私は一生車椅子のままでいい」と、誕生日プレゼントを突き返されてしまったそうです。彼はこの悲しい夢にショックを受け、パイプを加工したこのトレーニング道具を渡して良いものかどうか、考えてしまったそうです。けれども「せっかく浜野製作所のみなさんがつくってくれたのだから…」と、勇気をふりしぼってプレゼントを渡したそうです。「一緒に歩けるようになろう。またパパとママと手をつないで、公園や土手を散歩しよう」という想いも伝えて…。すると、6歳になったばかりの娘さんが「パパ本当にありがとう!」と言って、車椅子から抱きついてきてくれたのだそうです。メールには「浜野製作所のみなさん、本当にありがとうございました」と、そして最後に「感謝感謝感謝感謝」と書かれていました。

お客様から感謝される仕事がしたい
もち続けた想いが叶えた今の事業展開

飯島 感動しますね…。

浜野 私はこれまでものづくりの仕事をずっと続けてきましたが、納品といえば、倉庫や納品場などに商品を置いて…というだけのものでした。ですから私にとって、お客様からこんなにダイレクトに感謝されたのは初めてのことで、「こんなにもやりがいのある仕事があるんだ」と感動したんですよね。従業員5、6人の小さな町工場でも、人からこんなにも感謝してもらえる製品づくりができるんだ…と思った瞬間です。この時に私は、絶対にこういう仕事をしようと決めたんですよ。

当時はプロジェクトを動かすだけのスタッフが揃っていないなど、実現に足りない要素はたくさんありました。けれども「いずれ当社では、家族の未来をつくれるような仕事をしたいんだ」ということを、常にいろいろな人に言っていました。するとそう言い続けて2〜3年経った頃、ある方が「知り合いで設計をやっている子がいて、会社を辞めるそうなんだが、もしよかったら話をしてみないか」と声をかけてくださったんです。これが、当社の設計開発部立ち上げの後押しとなりました。自分の想いを言葉にして人に伝えていると、それを聞いて覚えていてくれている人がいて、縁をつないでくれることがあるんですよね。当社では現在、ロボット開発や装置開発を手がけていますが、実はこれは、6歳の車椅子に乗った女の子のものづくりがきっかけだったんですよ。

飯島 最高のエピソードですね。仕事の原点は人に喜ばれることだとはよく言いますが、まさにそのど真ん中のお話ですね。浜野さんは、社長になられてから社屋が火災に遭うなど、ご苦労もされてきました。しかし、お問い合わせがきっかけとなり受けた仕事や、そこでの気づき、また人との縁などを会社の発展につなげていらっしゃいます。商売はそういったところから始まるのだということを、改めて学ばせていただきました。

浜野 全ての人を喜ばせることはできなくても、少なくとも一家族の絆や未来、夢のためのお手伝いをさせていただくことはできるんだと。私たちは誇りある素晴らしい仕事をしているんだと、実感したできごとでしたね。

第4回に続く]

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