『中小企業の経営目標は最初に「賃金」を決める』 (高収益は社長の戦略、高賃金は社長の哲学)
財務の目標は、自己資本比率を高め、資金を多く持つこと
経営計画には、経営方針と数字の計画があります。
どちらか一方のみでは経営計画書とはいえません。
一倉定先生は、数字のみの計画では、「仏作って魂入れず」と言っておられます。
数字が仏で経営方針が魂です。
今月は数字の目標について書きます。
数字のことは、財務のことなので財務の目標は、自己資本比率を高め、資金を多く持つことです。
自己資本比率は、50%以上理想は60%以上です。
資金は、総人件費の1年半分以上の内部留保が必要額です。
これを長期の数字目標に掲げることです。
具体的には、中期事業計画で立案します。
中期事業5ヶ年計画が経営計画の核です。
事業とは商品のことであり、会社の未来は商品の販売によって決まるからです。
作成手順は、最初に経常利益と固定費のうちの人件費を決めます。
経常利益は毎年増加させます。
税引後利益を増やさなければ内部留保は増えないし、自己資本比率も高まりません。
資金も貯まりません。
中小企業だから、給料が低いのは当たり前?
日経トップリーダー令和3年11月号で坂本光司先生は「人件費を払うことを経営の目的にせよ」というタイトルで、
「『中小企業だから、給料が低いのは当たり前』という認識を捨てて下さい。
大企業に比べて知名度やブランド力が劣りがちな中小企業ほど高賃金を出さなければいい人材は得られない、給与を上げられるところまで上げた先に、社風・やりがいといった要素が付加価値として乗っかります。
きちんとした賃金を払っていると言っていい目安は、社員の年齢の15倍程度からだと考えています。
30歳で450万円、40歳で600万円の計算になります。
20倍払っていると高い賃金を支払っていると感じます。
中小企業でも40歳の社員に800万円前後の賃金を払っている会社はいくつもあります。」
さらに「一般的に高賃金といわれる県庁職員と同等以上の賃金が実現すれば、社員は誇りを持って働けるし、採用なども効果的です。」と言っています。
県庁職員の平均月額給与一覧を示されています。
福岡県41万6,620円賞与164万6,000円平均42,4歳。
兵庫県42万3,459円賞与188万2,000円平均43,9歳。
宮城県42万458円賞与177万9,000円平均42,2歳。
等です。
地方公務員は自分の年齢と同じくらいの給与をもらい夏・冬とも月給の2ヶ月分の賞与が出ていることになります。
中小企業と比べると、月給で20%高く、賞与は中小企業では平均0.8ヶ月なので、2.5倍になります。
私は、地方公務員がこんなに高い給与、賞与だとは思ってもいませんでした。
しかし、この金額の目標は明確であり挑戦しがいがあります。
高収益型の事業構造を作る社長の戦略
これを実現するためには高収益型の事業構造を作らなければなりません。
高収益は、社員教育とか環境整備や賃金規程によって実現するのではありません。
一倉定先生が50年前から言っている社長の戦略です。
戦略とは差別化することであり、商品、サービス、ビジネスモデルで差別化することです。
毎年々経常利益を増やし、賃金を増やし続けるためには、毎年々付加価値(粗利益)を増やし続けなければなりません。
付加価値を粗利益率で割って目標とする売上高が計算されます。
これを1表にまとめたのが、中期事業計画なのです。
売上を創造できるのは中小企業では社長なのです
事業とは商品のことなので、会社の未来を決めるのは、販売です。
売上です。
この売上を創造できるのは中小企業では社長なのです。
そして儲けた利益をどのように分配するかを決めるのも社長です。
社長の哲学とは社長が社員にどのくらいの給与を払い、今後払いたいかの考え方です。
社長は役員、幹部、社員から十分な給料・賞与をもらっていますと感謝されるくらい払っていれば
高賃金ですと自信を持ってもよいと思います。
そのためにも、世の中の給料、賞与がどうなっているのかを十分にわかりやすく説明し、
今は少なくても5年先には、この金額を目指すという経営目標を決め、それを何としても達成するのだという強い意志が必要です。
今年もよろしくお願いします。
古田圡 満