『儲かった利益はどこに消えたのか』 (貸借対照表の読み方と資金別貸借対照表)
貸借対照表(B/S)が読めない理由
10月号で損益計算書の読めない理由を書きましたが、今月は貸借対照表(B/S)が読めない理由を書きます。
B/Sについては以前に何度も資金の調達と運用で読むとか、目的は自己資本比率を高め、資金を十分に持つ財務体質が大切であることも書きました。
また、ほとんどの経理や会計事務所は当月分のB/Sしか社長に提出していないので、期首からのお金の動きが理解していないために、財務体質の変化や資金の問題がわからず対策が打てていないこと等を書きました。
そしてB/Sが読めない最大の理由は、B/Sの出し方にあり、B/Sは当月分のみ出すのではなく、期首からの累計のB/Sを出し、期首から当月末までのお金の変化(勘定科目の増減)を見ることがコツです。と書きました。
しかし累計のB/S科目の増減は金額も大きく科目ごとに計算できないから、これを分かりやすく分類、整理したものが累計のキャッシュフロー計算書(C/F)です。
B/SとC/Fを一緒に読むことによって、経営者、幹部はB/S、C/Fが読めるようになります。
毎月数字の訓練をするから数字に強くなります。
数字は慣れです。
C/Fは当月及び期首からの累計の「儲かった利益がどこに消えたか」を社長、幹部に教えてくれます。
「どこに使われたのか」の答え
しかし、経営で大事なのは、一期、一期の儲かった利益ではありません。
会社を設立してから現在までにいくら儲かったのか、儲かった利益がどこに消えたのか、すなわち、どこに使われたのかなのです。
その答えがB/Sにあるのですが、これを説明できる経営者、会計事務所はほとんどいないと思っています。
B/Sでは、純資産の部の利益剰余金が儲かった利益の目安になりますが、その儲かった利益がどこに消えたのかはわかりません。
B/Sだけでは答えを出せません。
その答えを出してくれたのが資金別B/Sなのです。
資金別B/Sでは、損益資金が儲かった利益です。
固定資金、売上仕入資金、流動資金にどのように使われて資金があるのか、要因別に教えてくれます。
ただ儲かった利益がどこに使われたのかを教えてくれるのではなく、資金の調達と運用のバランスと対策も教えてくれます。
経営者が知るべきこと
例えば、損益資金の少ない会社が大きな設備投資をしたとします。
設備投資ができたのは銀行が融資してくれたからだとします。
借入金は返済します。
返済原資は損益資金です。
損益資金が少ないということは儲かるような事業をしてこなかったからです。
当然に返済できなくなりやがて倒産するかもしれません。
経営者は、財務として、損益資金と他の資金のバランスを知り、また、固定資金のバランス、売上仕入資金のバランス、流動資金のバランスも知らなければなりません。
資金別B/Sにより資金のバランスを知り、改善策を練るのが財務体質の改善です。
未来のB/Sは資金別B/Sからイメージします。
5ヶ年分の資金運用表やB/Sを作っている会社もありますが、そもそもB/Sを読めない人に資金運用表が読めるはずがありません。
一般的に難しすぎるのです。
中小企業の経営に絶対必要な数字の見方、読み方
資金別B/Sは、簡単です。
資金別B/S(当期末)に5年後の短期借入金と長期借入金と預金の額を鉛筆で記入するのです。
借入金の減額する数字、預金増加の額が出ます。その差額が未来のB/Sとのギャップです。
長期借入金の返済は、固定資金の運用を減らす対策を考えます。
短期借入金は、売上仕入資金のサイト負けの改善、棚卸資産の減少等により対策を打ち、不足する分を損益資金で賄います。
古田土式月次決算書には、中小企業の経営に絶対必要な数字の見方、読み方がつまっています。
このような数字を出しているのは古田土会計と一部の会計事務所しかありません。
その差は、中小企業によくなってもらいたいという思いの差かもしれません。
古田圡 満